機械設計エンジニアを目指すにあたって、どのような資格が必要なのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
機械設計エンジニアに役立つ資格は、「機械設計技術者」・「技術士(機械部門)」・「機械・プラント製図技能士」・「CAD利用技術者」です。
この記事では、機械設計エンジニアに必要なおすすめの資格4選と難易度について解説します。機械設計エンジニアを目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。
機械設計エンジニアに必要なおすすめの資格一覧|4選
機械設計エンジニアのキャリアを形成するにあたって、役に立つ資格がいくつかあります。中でも特に重宝される資格は主に4つです。
- 機械設計技術者1級〜3級
- 技術士(機械部門)
- 機械・プラント製図技能士
- CAD利用技術者
それぞれの資格について解説します。
機械設計技術者1級〜3級
機械設計技術者は、一般社団法人日本機械設計工業会が運営する技術力を公認する資格です。したがって、機械設計技術者は国家資格ではなく民間資格です。
機械設計技術者は1級から3級までの3種類があります。
また、それぞれの資格の難易度や試験の目的は異なります。
機械設計技術者3級は入門資格になる
令和5年に開催された機械設計技術者試験3級の合格率は47.1%です。受験者数は1,838人で、そのうち合格者数は865人でした。
機械設計技術者3級は、1級および2級の資格を持たない初心者向けの資格です。したがって、試験の受験要件は特に設けられていません。
試験科目は機械工学基礎分野のみです。具体的には次のとおりです。
分野 | |
1 | 機構学・機械要素設計 |
2 | 機械力学 |
3 | 制御工学 |
4 | 工業材料 |
5 | 材料力学 |
6 | 流体・熱工学 |
7 | 工作法 |
8 | 機械製図 |
令和5年の試験は2時限に分かれており、時間は12:00~16:20でした。
新入社員や学生の技術レベルを適切に評価し、公認する目的を担っています。
また、3級を取得すれば、実務にスムーズに移行できるようになり、さらなる技術習得につながります。
機械設計技術者2級は3〜7年の実務経験が必要になる
令和5年に開催された機械設計技術者試験2級の合格率は40.8%です。受験者数は574人で、そのうち合格者数は234人でした。2級の受験者数は、3級と比較して1/3以下です。
機械設計技術者2級を受験するには、3年から7年の実務経験が求められます。
具体的に必要な実務経験は次のとおりです。
最終学歴 | 3級取得ありの場合の実務経験 | 3級取得なしの場合の実務経験 |
工学系の大学もしくは大学院・高専専攻科・高度専門士・職業能力開発大学校 | 2年 | 3年 |
工学系の短大・高専・専門学校・職業能力開発短期大学・職業能力開発校 | 3年 | 5年 |
その他 | 4年 | 7年 |
試験科目は3級と異なり、複数の分野があります。具体的な出題科目は次のとおりです。
1 | 機械設計分野 |
2 | 力学分野 |
3 | 熱・流体分野 |
4 | 材料・加工分野 |
5 | メカトロニクス分野 |
6 | 環境・安全分野 |
7 | 応用・総合 |
令和5年の試験は3時限に分かれており、時間は9:30~16:30です。
機械設計技術者2級は、技術者のスキルや地位向上を図ることを目指しています。
機械設計技術者1級は5〜10年の実務経験が必要になる
機械設計技術者のうち、1級は最も難易度の高い資格です。令和5年に開催された機械設計技術者試験1級の合格率は36.4%です。受験者数は143人で、そのうち合格者数は52人でした。
機械設計技術者1級を受験するには、おおむね5年から10年の実務経験が求められます。ただし、2級を取得した場合、次年度から1級を受験できます。
具体的に必要な実務経験は次のとおりです。
最終学歴 | 2級取得なしの場合の実務経験 |
工学系の大学もしくは大学院・高専専攻科・高度専門士・職業能力開発大学校 | 5年 |
工学系の短大・高専・専門学校・職業能力開発短期大学・職業能力開発校 | 7年 |
その他 | 10年 |
試験科目は2級で求められる内容に加えて、次の3つです。
具体的な出題科目は次のとおりです。
科目 | |
1 | 設計管理課題 |
2 | 機械設計基礎課題 |
3 | 環境経営課題 |
令和5年の試験は3時限に分かれており、時間は9:30~16:30です。
機械設計技術者1級も2級と同じく、技術者のスキルや地位向上を図る狙いがあります。
参考:試験の必要性と目的|機械設計技術者試験|一般社団法人日本機械設計工業会
参考:令和5年度 機械設計技術者試験受験者数と合格率|一般社団法人日本機械設計工業会
参考:試験概要と出題科目|機械設計技術者試験|一般社団法人日本機械設計工業会
技術士(機械部門)
技術士は科学技術に関連する専門知識やスキル、さらには実務経験を公認する国家資格です。技術士は基本的に20部門あります。
20部門のうち機械部門は機械設計エンジニアにおすすめです。
部門一覧は次のとおりです。
部門 | |
1 | 機械部門 |
2 | 船舶・海洋部門 |
3 | 航空・宇宙部門 |
4 | 電気電子部門 |
5 | 化学部門 |
6 | 繊維部門 |
7 | 金属部門 |
8 | 資源工学部門 |
9 | 建設部門 |
10 | 上下水道部門 |
11 | 衛生工学部門 |
12 | 農業部門 |
13 | 森林部門 |
14 | 水産部門 |
15 | 経営工学部門 |
16 | 情報工学部門 |
17 | 応用理学部門 |
18 | 生物工学部門 |
19 | 環境部門 |
20 | 原子力・放射線部門 |
令和5年度第一次試験の技術士(機械部門)の合格率は35.6%です。受験者数は1,692人で、そのうち合格者数は603人でした。
技術士を取得するための受験要件は求められていません。
また、試験科目は4つの分野です。
分野 | |
1 | 材料力学 |
2 | 機械力学・制御 |
3 | 熱工学 |
4 | 流体工学 |
技術士制度は人材育成を目指しています。
参考:技術士第一次試験の科目|公益社団法人日本技術士会
参考:令和5年度技術士第一次試験統計|公益社団法人日本技術士会
機械・プラント製図技能士
機械・プラント製図技能士は機械設計で製図するスキルを認定する国家資格です。令和4年に開催された機械・プラント製図技能士全体の合格率は43.2%です。受験申請者数は4,612人で、そのうち合格者数は1,996人でした。
ただし、機械・プラント製図技能士は特級・1級・2級・3級の4種類に分かれています。特級が一番高く、3級が最も易しい難易度です。
3級は誰でも受験できますが、2級以上は受験要件が定められています。
受験要件の詳細は次のとおりです。
資格 | 受験要件(1) | 受験要件(2) |
特級 | 1級合格後5年以上の実務経験 | ー |
1級 | 7年以上の実務経験 | 2級合格者は2年、3級合格者は4年 |
2級 | 2年以上の実務経験 | 3級合格者 |
試験科目は次のとおりです。
科目 | |
1 | 製図一般 |
2 | 材料 |
3 | 材料力学一般 |
4 | 溶接一般 |
5 | 関連基礎知識 |
6 | 機械製図法・プラント配管製図法 |
7 | 選択科目実技 |
参考:機械・プラント製図(機械製図 CAD 作業)|中央職業能力開発協会
参考:令和4年度「技能検定」実施状況|厚生労働省
CAD利用技術者
CAD利用技術者とは、製図や設計に必要なCADシステムの理解度を評価する資格です。CAD利用技術者の種類は次のとおりです。
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
- 2次元CAD利用技術者試験:1級(建築・機械・トレース)・2級
- 3次元CAD利用技術者試験:1級・準1級・2級
2次元CAD利用技術者は設計に必要な知識や図面読解力、CADによる設計・技術力を測る試験です。一方で、3次元CAD利用技術者の試験では3D空間でCADを使用して、モデリング・設計・製図するにあたっての必要な知識やスキルを測定しています。
2024年4月時点での、直近の受験者数・合格者数・合格率は、次のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2次元CAD利用技術者試験基礎 | 613人 | 437人 | 71.29% |
2次元CAD利用技術者試験1級(建築) | 138人 | 64人 | 46.38% |
2次元CAD利用技術者試験1級(機械) | 206人 | 64人 | 31.07% |
2次元CAD利用技術者試験1級(トレース) | 34人 | 12人 | 35.29% |
2次元CAD利用技術者試験2級 | 3,778人 | 1,978人 | 52.36% |
3次元CAD利用技術者試験1級 | 266人 | 68人 | 25.56% |
3次元CAD利用技術者試験準1級 | 333人 | 121人 | 36.34% |
3次元CAD利用技術者試験2級 | 2,611人 | 1,714人 | 65.64% |
就職する業界によって活かせる種類は異なりますので、業務に応じた資格取得を検討しましょう。
また、試験分野も資格種類によって異なります。たとえば、3次元CAD利用技術者試験1級の試験分野は次のとおりです。
試験分野 | |
1 | CADリテラシー・形状認識能力 |
2 | アセンブリモデリング能力 |
3 | 2次元図面からのパーツモデリング能力 |
参考:2024年度 3次元CAD利用技術者試験 概要|ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会
参考:統計情報 - CAD利用技術者試験|ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会
機械設計エンジニアに役立つ資格を活かせる業界|3選
先ほど紹介した役立つ資格を特に活かせる業界は3つです。
- 自動車業界
- 家電業界
- プラント業界
それぞれの業界について解説します。
自動車業界
自動車業界で、機械設計の業務は自動車を構成するさまざまな部品の設計や研究です。自動車の安全性・快適性・燃費向上などに向けて、機械設計エンジニアが活躍しています。
家電業界
家電業界で、機械設計の主な業務は電化製品の構造設計・機構設計・部品設計です。機械設計エンジニアは使いやすく、省エネで、デザイン性の高い製品開発が求められています。
プラント業界
プラント業界で、機械設計の業務はプラントを構成する設備や装置の設計です。機械設計エンジニアは、さまざまなプラントの設計・建設・メンテナンスに寄与しています。
機械設計エンジニアの資格に関するよくある質問
機械設計エンジニアの資格に関するよくある質問は次のとおりです。
- 機械設計に向いている人は?
- 機械設計技術者試験は国家資格ですか?
- 機械エンジニアになるためにはどんな知識が必要ですか?
それぞれについて解説します。
機械設計に向いている人は?
機械設計エンジニアに向いている人の特徴は、「細かい作業が得意」・「高いコミュニケーション能力がある」などです。
また、自分で調べながら改善ができたり同じ職場の人から積極的に学べたりできる人が機械設計エンジニアに向いているでしょう。
機械設計技術者試験は国家資格ですか?
機械設計技術者は、一般社団法人日本機械設計工業会が運営する技術力を認定する資格です。つまり、機械設計技術者は国家資格ではなく民間資格です。
機械エンジニアになるためにはどんな知識が必要ですか?
機械設計エンジニアになるにあたって、機械力学・材料力学・流体力学・熱力学の4大力学の知識が特に重要です。他にも、CADに関する知識・技術があると、業務に活かせるでしょう。
機械設計エンジニアの資格に関するまとめ
今回は、機械設計エンジニアに必要なおすすめの資格4選と難易度について解説しました。
機械設計エンジニアのキャリアを形成するにあたって、特に役に立つ資格は4つです。
- 機械設計技術者1級〜3級
- 技術士(機械部門)
- 機械・プラント製図技能士
- CAD利用技術者
それぞれの合格率は年度・種類によって異なりますが、20%から50%程度のケースが一般的です。
これから機械設計エンジニアを目指している人は、受験要件で実務経験が求められていない資格から目指してはいかがでしょうか。
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