施工管理者は、工事全体を適切に管理しながら、工期通りに終わらせる役割を担っています。
建設業界に欠かせない存在であり、将来性の高い仕事の1つです。
既に建設業界で働いている人はもちろん、これから就職する学生にも、施工管理者を目指している人は多くいます。
施工管理者を目指す中で必ず耳にする言葉が「五大管理・QCDSE」です。
今回は五大管理・QCDSEとは何なのか、施工管理の具体的な仕事内容も踏まえながら、分かりやすく解説していきます。
施工管理の五大管理「QCDSE」とは?
施工管理では、工事を工期通りに終わらせるために、5つの観点から管理を行います。
・品質管理(Quality)
・コスト、原価管理(Cost)
・工程、工期管理(Delivery)
・安全管理(Safety)
・環境管理(Environment)
これらの頭文字を取ったのが「QCDSE(5大管理)」です。
全ての建設工事に5大管理は欠かせないものであり、施工管理者を目指す上で、欠かせない内容となります。
ここでは各管理項目の内容について、施工管理者の業務内容も踏まえながら詳しく解説していきます。
品質(Quality)
施工管理における品質管理では、建設物の安全性や機能性を管理します。
建設工事では、各工程で材料や出来形に基準が設けられており、施工管理者は基準を満たしているかチェックを行います。
品質基準の項目は、細かく分けられており適切な試験を実施した上で、出来形を写真に取って証拠を残すのが主な仕事です。
品質管理で撮影する項目には、以下のようなものがあります。
【工種・セメント、コンクリートの場合】
・スタンプ試験の内容 ・塩化物総量規制 ・空気量の測定 ・コンクリートの圧縮強度試験 ・コアによる強度試験 ・コンクリートの洗い分析試験 ・コンクリートの曲げ強度試験 ・ひび割れ調査 ・テストハンマーによる強度推定調査 |
このように、各工種で撮影項目が定められており、証拠として残しておかなければなりません。
品質を満たしていない場合、当該工程をやり直す必要があり、基準を満たせなかった原因の追及も施工管理者の仕事です。
やり直しになると、工事全体に影響が出てしまうため、普段から現場の巡回を行いながら、品質を満たせるように管理します。
コスト・原価(Cost)
コスト・原価管理では、工事で使用する機材のレンタル料や資材費用、人件費などを管理します。
建設工事では、事前に予算が決められており、その中で全ての出費を調整します。
工事中には悪天候により作業がストップしたり、ミスにより作業がやり直しになったりすることも珍しくありません。
このような事態が発生した際には、作業日の短縮や作業員の増減などのやり繰りを行い、コストを削減します。
資材や人件費を削減しすぎると、現場全体の士気が下がるだけでなく、品質基準を満たせない可能性が高くなります。
そのため、バランス調整が難しく、豊富な工事管理経験と知識が必要となる業務です。
また、工事予算には自社の取り分も含まれているため、利益を意識した調整が必要です。
工程・工期(Delivery)
工程・工期管理では、建設工事が工期通り終るように各工程のスケジュールを管理します。
建設工事にはさまざまな工程があり、携わる会社が異なるため、各会社の責任者と連携しながら、工事を進めていきます。
建設工事は天候の影響を受けやすく、工程に問題があり作業がストップすることも珍しくありません。
このような時には、都度担当者と話し合いを行った上で、工期に間に合うように工程を調整します。
あらゆる工程について、熟知している必要があり予算面にも考慮した管理が求められます。
安全(Safety)
工事現場では、ちょっとしたミスや油断が大きな災害に繋がるため、徹底した安全管理が求められます。
現場を巡回しながら、あらゆる危険を事前に見つけ、改善することで事故を防ぎます。
工事現場における安全管理には、以下のような内容があります。
・重機が動く場所の立入制限 ・工事車両の交通整理 ・高所作業における安全帯の着用徹底 ・作業員の適度な休憩の呼びかけや体調管理 ・ヒヤリハット事例の共有や安全教育 |
工事に従事する作業員はもちろん、周辺を通る通行人に対する安全確保も行います。
環境(Environment)
工事現場における環境管理は、3つの管理に分かれます。
・自然環境
・周辺環境
・職場環境
自然環境では、工事現場周辺の地盤や空気、水に対する影響が出ないような配慮がなされているか管理します。
周辺環境では、工事現場周辺の住民や通行者に被害が起きないよう、排気ガスや粉塵、騒音、振動などの配慮がなされているか管理します。
職場環境では、工事に従事する全ての作業員が、円滑に作業が進められるような職場作りを行わなければなりません。
ここまで紹介してきた5大管理全てを行い、工事を無事に終わらせるのが施工管理者の仕事です。
関連記事:施工管理の4大管理とは?最新の就職事情も解説
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施工管理者が知っておきたい五大管理「QCDSE」の優先順位
一口に建設工事といっても、土木工事・建築工事・電気工事・管工事など29種類が存在します。
工事によって工程や作業内容が全く異なるため、工事ごとに5大管理には優先順位が付けられています。
最も一般的な優先順位は以下の通りです。
1番:安全管理 2番:環境管理 3番:品質管理 4番:原価管理 5番:工程管理 |
ちょっとしたミスが命に関わる工事現場では、安全面が最優先となります。
工事によって周辺住民に被害が及んでしまうことも避けなければなりません。
ただし、工事によっては工程管理や、品質管理の優先順位が上がることもあります。
関連記事:未経験者が「施工管理はやめとけ」と言われる5つの理由
施工管理の五大管理「QCDSE」に関してよくある質問
最後は施工管理の五大管理・QCDSEに関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・施工管理に6大管理はありますか?
・施工管理で大事なことは何ですか?
・5大管理をすることで生産性は上がりますか?
施工管理を行う上で大事なことや、5大管理の必要性に関する内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
施工管理に6大管理はありますか?
施工管理に6大管理はありません。
少し前までは、品質・原価・工程・安全の4大管理でしたが、環境管理が加わり5大管理・QCDSEとなりました。
施工管理の大事なことは何ですか?
施工管理で大事なことは、工事全体のバランスを取り上手にまとめ上げる、マネジメント力と言えます。
建設工事には、さまざまな職人が携わり、担当する工程を進めていくことで建物が完成します。
どれだけ5大管理ができていたとしても、現場全員が一丸となっていなければ、安心安全な工事はできません。
5大管理を行いながら、全ての作業従事者が気持ちよく働ける、職場づくりとマネジメント力が求められます。
五大管理をすることで生産性は上がりますか?
5大管理によって、建設工事における生産性は大きく上がります。
建設工事には、さまざまな工事業者が携わるため、情報を全体で共有しまとめ上げ得る存在が必要不可欠です。
施工管理者が工事管理を行うことにより、無駄のない施工計画が立てられ、最小限の費用で安全に工事を進められます。
近年は、Iot・DX技術の導入が進んでおり、より生産性が上がってきています。
【Iot・DX技術とは】
Iot技術とは、モノとインターネットを繋げる技術のことです。 具体例として、スマートスピーカーや自動運転車などがあります。 建設業界では、ドローンによる測定作業や、設備機器にセンサーが装着され、リアルタイムで監視できるような仕組み作りが進んでいます。 DX技術とは、Iot技術やAI技術で収集した情報を一元管理する技術の総称で、ビジネスの仕組みそのものを変えられます。 離れた箇所からの勤怠管理や、重機の遠隔操作など新しい仕組みを構築することにより、大きく生産性を上げられます。 |
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施工管理の五大管理「QCDSE」についてのまとめ
5大管理・QCDSEとは「品質・コスト・工程・安全・環境」の5項目で工事を管理することです。
建設工事を、安心安全に進めていく上で欠かせないものであり、施工管理者のメイン業務となります。
工事ごとに項目の優先順位が変わり、適切に工事が管理されます。
多くの人が係わる建設工事では、全体をまとめ上げる必要があり、施工管理者はその役割を担っています。
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