ドライバーの離職率の高さに頭を抱えている、採用担当者の方も多いのではないでしょうか。ドライバーの離職率は、運送業界全体が直面している共通の課題です。
本記事では、離職率が高くなる原因と実際の現場で、どのような対策をしていけばよいかを紹介します。
運送会社での人材管理に悩む経営者や採用担当者の方には、オススメの内容です。
現在雇用しているドライバーの離職率を下げたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
【運輸業・郵便業】ドライバーの離職率は約12%前後
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況-」の資料によれば、入職者720.06万人に対して、離職者数は717.25万人と離職者が2.81万人も上回っています。
多くの運送会社では、長時間労働や休日が少ないなど、ドライバーとしての仕事の厳しさが離職率の高さに影響しているのでしょう。
また、国土交通省「交通関連産業のイメージと新たな取り組み」の資料からも、就業者側と事業者側の意識のズレがわかります。
上記のような問題を改善するには、企業側の労働環境の向上や福利厚生の改善、社内コミュニケーションの強化などが必要になるでしょう。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況-」
出典:国土交通省「交通関連産業のイメージと新たな取り組み」
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ドライバーの離職率が高いと言われる5つの原因
ここからは、前章でお伝えしたドライバーの離職率が高くなる原因について深掘りしていきます。離職率が高くなる原因は、以下のとおりです。
1.体力・肉体的にしんどい 2.長時間労働への不満 3.休日が少ない 4.教育体制が不十分 5.コミュニケーションが取りづらい |
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況-」の資料を確認してみると、一時的に離職率が改善されていますが、まだまだ厳しい状態がうかがえます。
なぜ、ドライバーの離職率がなかなか改善しないのか詳しく確認してみましょう。
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体力・肉体的にしんどい
ドライバーは長時間の運転や重い荷物の積み下ろしなど「体力・肉体的」にも大きな負担がかかります。
そのため、体調を崩したり、事故を起こすリスクが高まったり、離職にいたる原因を作りだしています。
体への負担が継続的に続くと、体の不調や怪我の原因となり、結果的に離職を検討するドライバーが増える原因になるでしょう。
上記のように現場で働くドライバーの仕事は、想像以上に体への負担となっていることを理解する必要があります。
企業側は数ヶ月に1回でもよいので、定期的にドライバーの相談に乗れる環境を整えてみてください。
長時間労働への不満
ドライバーの離職率増加の背景には、長時間労働への不満が大きく影響しています。運送業界は配送時間の関係上、適切な休憩を取りにくいケースが多く、長時間労働の原因となっています。
厚生労働省「トラックドライバーの勤務条件と疲労・睡眠」の資料でも、大手が約30%近く、中小企業にいたっては約60%以上の方が勤務時間が長いと感じています。
表7.その他の職場状況の比較
勤務時間について | 大手 | 中小 | 合計 |
度数※1 | n=193 | n=222 | n=415 |
パーセント% ※2 | 100 | 100 | 100 |
長すぎる | 14 (7.3%) | 41 (18.5%) | 55(13.3%) |
やや長すぎる | 43 (22.3%) | 99(44.6%) | 142 (34.2%) |
適切 | 128 (66.3%) | 74 (33.3%) | 202 (48.7%) |
無記入 | 8 (4.1%) | 8 (3.6%) | 16 (3.9%) |
※参考:厚生労働省「トラックドライバーの勤務条件と疲労・睡眠」
※1.各項目に該当する回答者の実際の人数
※2.度数を全体の回答者数(n)で割ったものをパーセント化したもの
長時間労働はドライバーが体調を崩したり、事故を起こしたりとさまざまなリスクを伴います。結果的に離職者が増加する結果にもつながりかねません。
企業側は、長時間労働を生み出さない体制作りが必要になるでしょう。
休日が少ない
休日の少なさもドライバーの離職率が高い原因のひとつです。
J-STAGE「トラックドライバーの過労に影響する働き方と休み方の横断的検討」によると、1ヶ月あたりの休日数は4〜7日との回答が多く、他の業界に比べて休日が少ない傾向にあります。
また、休日数でも8日以上に対して、週休1日未満である0-3日(OR=3.8, 95%CI 1.5 to 9.4)で週の過労との関連が認められた。
休日が少ないと職場のストレスや疲れを解消しづらく、離職率を高める要因のひとつになります。ドライバーの離職率を低下させるためにも、企業側は休日の確保や労働環境の改善に注力してみてください。
教育体制が不十分
適切な教育体制が確立されていない運送会社では、ドライバーの離職率が高くなる傾向があります。
新人ドライバーが現場に入社する際、適切な教育や研修が行われていないと、仕事のノウハウや運転技術の習得に時間がかかります。
仕事のノウハウがない状態だと、新人ドライバーは上手く仕事を遂行できずに、仕事自体が嫌になる可能性も出てくるでしょう。
新人ドライバーの仕事への意欲を向上させるためにも、教育体制の強化は必要です。
コミュニケーションが取りづらい
職場内でのコミュニケーションの取りづらさも、ドライバーの離職率が高い原因のひとつです。運送業界の仕事環境は、ドライバーが長時間、単独でトラックを運転することが多く、社内の同僚や上司とのコミュニケーションの機会が限られています。
そのため、不満やトラブルがあっても、なかなか社内にいる社員に相談するタイミングがありません。企業側は社内のコミュニケーションを図れるように対策する必要があるでしょう。
出典:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概況-」
出典:厚生労働省「トラックドライバーの勤務条件と疲労・睡眠」
出典:J-STAGE「トラックドライバーの過労に影響する働き方と休み方の横断的検討」
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ドライバーの離職率を軽減するための対策|3選
ドライバーの離職率を軽減するための対策は、以下のとおりです。
1.労働条件・待遇の見直し 2.職場環境の改善 3.教育体制の強化 |
労働条件・待遇の見直し
運送業界でドライバーの離職率を軽減するための対策として、労働条件や待遇の見直しを積極的に行うことが求められます。
前章で解説してきたとおり、ドライバーは過酷な労働時間や給与、休日の少なさなどの理由から退職を考えるケースが多いようです。
運送業界におけるドライバーの定着を図るためには、労働条件や待遇の改善が必要不可欠になります。
給与の見直しや労働時間の調整、福利厚生の拡充など、ドライバーが長く働きやすい環境を整えることで、離職率を下げることが期待できるでしょう。
職場環境の改善
運送業界のドライバーの離職率を下げるためには、職場環境の改善が必要不可欠です。
職場のコミュニケーション不足や社内マニュアルが整っていない場合、ドライバーたちの不満が蓄積していき離職の原因につながります。
また、ドライバーの不満を取り除くには、働きやすい職場を作ることが重要です。
社員間のコミュニケーションの向上や教育の充実など、職場の雰囲気をよくする取り組みを進めることで、ドライバーたちの離職を防げるでしょう。
教育体制の強化
ドライバーの離職率を減少させるには、教育体制の強化を図りましょう。
具体的には以下のような教育内容があります。
・運送業に必要な知識やスキルを習得するための研修 ・安全運転や荷物の取り扱いなどの技術を習得するための研修 ・コミュニケーションスキルやマネジメントスキルを習得するための研修 |
また、ドライバー自身も積極的に教育を受けることで、成長につながり仕事への意欲を向上させられます。
企業側はドライバーの資質向上やスキルアップを図るための教育を充実させることで、離職率の低下を図ってみてください。関連記事:タクシー運転手になってすぐ辞めた人に多い5つの理由
まとめ:離職率が高い要因を知りドライバーの定着につなげよう
ドライバーの離職率は、労働環境や給与、教育体制など複数の要因が絡み合っています。
離職理由の特定と実効性のある対策を理解することで、企業側はドライバーの定着率を向上させられるでしょう。
ドライバーの離職率を下げたい経営者の方や人事担当者は、ぜひ本記事を参考にしてドライバーの労働環境改善に勤めてみてください。
また、ドライバーの離職率を軽減させる方法については、厚生労働省「企業の皆さまへ トラック運転者の改善事例」でも参考事例があるため合わせてみてください。
ドライバーの採用担当者様へ