ボイラータービン主任技術者は、必要な実務経験があれば取得できる国家資格です。
ボイラー設備の管理や保守に従事している方のなかには、ボイラータービン主任技術者の資格取得を考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ボイラータービン主任技術者の資格の取り方や詳しい受験資格について解説します。
また、具体的な仕事内容や年収についてもまとめたので、ボイラータービン主任技術者を効率的に取得したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ボイラータービン主任技術者の資格の取り方
まずは、ボイラータービン主任技術者の資格の取り方について解説します。
資格取得に必要な実務経験を満たす
ボイラータービン主任技術者の資格を得るには、必要な実務経験を有する必要があります。必要な実務経験の年数は学歴や所持資格によって異なり、中学卒業から資格取得が可能です。
必要年数は学歴が上がるにつれ短くなり、すでに特定の実務経験がある場合はさらに年数が短縮されます。
また、ボイラータービン主任技術者の第一種と第二種では求められる実務経験の内容が異なっています。
管轄の産業保安監督部電力安全課へ申請をする
特定の実務経験年数を満たしたあとは、管轄の産業保安監督部電力安全課へ申請します。
産業保安監督部電力安全課は北海道から沖縄まで全国10箇所にあるため、最寄りのエリアで申請しましょう。
申請には以下の書類が必要です。
- 主任技術者免状交付申請書
- 卒業証明書又は省令で定める資格等の写し
- 実務経歴証明書
- 戸籍抄本または住民票(本籍の記載のあるものに限る)
- 修得学科目証明書(学科名だけでは内容が判断できない場合のみ)
疑問点があれば、申請前に管轄の産業保安監督部電力安全課へ問い合わせることをおすすめします。
参考:産業保安監督部窓口|一般社団法人電気技術者試験センター
参考:ボイラー・タービン主任技術者免状の交付申請|関東東北産業保安監督部東北支部
交付手数料を支払う
申請書類が完成できたら交付手数料を支払います。交付手数料は6,600円で、収入印紙で支払う必要があります。郵便局で収入印紙を購入して申請書の所定箇所に貼り付けましょう。
申請書類に不備がなければ資格取得が可能となり、1か月前後で免状が自宅に郵送されます。
ボイラータービン主任技術者の受験資格と実務経験
ボイラータービン主任技術者の受験資格は、経済産業省が定める実務経験を満たすことです。
学歴ごとの必要な実務経験年数を以下にまとめました。
1種は区分(1)~(3)のすべて、2種は(4)と(5)のすべてを満たすことが条件となっています。
学歴 | 必要な実務経験年数 | ||||
1種 | 2種 | ||||
(1) | (2) | (3) | (4) | (5) | |
1)大学(機械工学)卒 | 6 | 6 | 3 | 3 | 3 |
2)大学卒 | 10 | 6 | 3 | 5 | 3 |
3)短大・高専(機械工学)卒 | 8 | 8 | 4 | 4 | 4 |
4)短大・高専卒 | 12 | 8 | 4 | 6 | 4 |
5)高校(機械工学)卒 | 10 | 10 | 5 | 5 | 5 |
6)高校卒 | 14 | 10 | 5 | 7 | 5 |
7)中学卒 | 20 | 15 | 10 | 12 | 10 |
8)一級海技士(機関)・特級ボイラー技士・エネルギー管理士(熱)または技術士(機械部門に限る)の2次試験に合格した者 | 6 | 6 | 3 | 3 | 3 |
表の(1)~(5)は以下の内容を指します。
(1) | 卒業後((8)においては資格等習得後)にボイラーまたは蒸気タービンの工事・維持・運用に携わった年数 |
(2) | (1)のうち発電用の設備(電気工作物に限る)に携わった年数 |
(3) | (2)のうち圧力5,880キロパスカル以上の発電用の設備に携わった年数 |
(4) | 卒業後((8)においては資格等習得後)にボイラー・蒸気タービン・ガスタービンまたは燃料電池設備(最高使用圧力が98キロパスカル以上のもの)の工事・維持・運用に携わった年数 |
(5) | (4)のうち発電用の設備(電気工作物に限る)に携わった年数 |
ボイラータービン主任技術者は中学卒業から取得可能で、高校、高専、大学と上がるにつれて必要経験年数が短くなります。
また、機械工学を卒業した場合は他の学科と比べて年数が短くなっています。
上記の表を参考に、必要な実務経験年数を満たしているかどうか確認してみてください。
第一種と第二種ボイラータービン主任技術者の違い
次に、ボイラータービン主任技術者の難易度について解説します。
経済産業省に申請をすれば取得できる
ボイラータービン主任技術者の資格は、経済産業省に申請をすれば取得できます。申請できればほぼ取得できるため、申請後の免状交付においては難易度が低いと考えられます。
しかし、ボイラータービン主任技術者は申請の資格を得るまでが難しい資格です。
定められた経験年数を満たすまでに時間を要する点では、難易度が高い資格と言えるでしょう。
第一種と第二種で申請資格が異なる
ボイラータービン主任技術者は第一種と第二種で申請資格が異なります。
第一種は携われる設備の範囲が広く、その分申請資格の難易度が高くなっています。例えば、機械工学科の大学卒では、第二種だと最短で3年の実務経験年数が必要です。
これに対して、第一種の申請には機械工学科の大学卒でも最短で6年の実務経験が必要になります。
第二種の方が申請資格の難易度が低いため、まずは第二種の交付を受けてから第一種の取得を目指すのも方法の一つです。
携わる設備によっては必要な実務経験が短縮される
ボイラータービン主任技術者の資格取得には、発電用の設備に係わるボイラー・タービンの保安を監督する実務経験が必要です。
そのため、すでに該当業務に携わっている人は必要な実務経験年数が短くなります。
さらに携わる設備が圧力5880キロパスカル以上の場合、第一種の申請資格に必要な経験年数を短縮できるため有利です。
現在ボイラーやタービンの該当業務に携わっている人は、資格取得までの必要年数を一度把握しておくと良いでしょう。
関連記事:ボイラー技士の難易度と資格取得方法に関する対策|仕事内容と勉強方法
第一種と第二種ボイラータービン主任技術者の違い
ボイラータービン主任技術者は、扱える電気設備の範囲によって第一種と第二種に分けられています。ここでは、第一種と第二種の資格の違いについて解説します。
第一種ボイラータービン主任技術者
第一種ボイラータービン主任技術者は、ボイラータービン主任技術者が携わるすべての電気設備を扱えます。
設備の圧力(キロパスカル)の大きさに関わらず、発電用ボイラー、蒸気タービン、ガスタービン及び燃料電池発電所等の工事、維持、運用に係る保安監督が可能です。
設備の範囲に制限がないため、第二種と比べて危険リスクの高い設備に携わる機会が多いとも言えます。
第二種ボイラータービン主任技術者
第二種ボイラータービン主任技術者は、第一種で携われる設備のうち、圧力5880キロパスカル未満の汽力・原子力設備、ガスタービン設備、圧力98kPa未満の燃料電池設備に限り扱えます。
第一種と異なり、限られた設備での工事、維持、運用に係る安全のための監督業務を行える資格です。
第二種はすべての電気設備に携わることはできませんが、ボイラータービン主任技術者は全国的に需要があるため、取得できれば有利な就職につながるでしょう。
第一種の方がハードルが高いため、先に第二種を取得して経験を積んでからステップアップするケースも多く見られます。
ボイラー技士や整備士との違い
ボイラータービン主任技術者と混同しがちな資格に「ボイラー技士」と「ボイラー整備士」があります。
ボイラー技士の仕事は、ボイラーを運転して施設内の空調・温水管理を行うことです。扱えるボイラーの伝熱面積により1級と2級に分かれており、2級は25平方メートル未満、1級は25〜500平方メートル未満のボイラーが運転できます。
空調管理を行うボイラー技士に対して、ボイラータービン主任技術者は発電用のボイラーを全般的に扱う点で異なっています。
ボイラー整備士は、ボイラーの点検や整備を行うメンテナンスのプロです。資格を所有していると一定規格以上のボイラーや第一種圧力容器の整備、点検、清掃を行えるようになります。
ボイラーのメンテナンスを専門とするボイラー整備士に対し、ボイラータービン主任技術者は設置の段階から関わって工事を監督する存在です。
ボイラーを保全する役割はボイラー技士や整備士も同じですが、業務の範囲や仕事内容は大きく異なります。
関連記事:設備管理に活かせる資格一覧|施設管理との違いや仕事内容
ボイラータービン主任技術者を取得後の就職先と可能性
ボイラータービン主任技術者の資格を取得すると、火力発電所や製鉄所、製造工場などの大規模施設に就職するチャンスが得られます。
特に、発電設備の安全運転管理やメンテナンスが求められる企業でボイラータービン主任技術者の需要は高く、安定したエネルギー供給を支える人材として重要な役割を担います。
また、管理職としてのキャリアアップも見込めます。
高額な資格手当も期待できる
ボイラータービン主任技術者は高額な資格手当も期待できる資格です。
一部の企業では、所有する資格によって資格手当を支給しています。例えば、ボイラータービン主任技術者を持っている場合は第一種で80,000円、第二種で50,000円の月額手当が設定されている企業もあります。
毎月の基本給に高額な資格手当が加われば大幅な収入アップが可能です。気になる求人情報を見つけたら、資格手当があるかどうか確認してみましょう。
関連記事:設備管理の年収は資格の有無で変わるって本当?数十万の差が出る理由とは
ボイラータービン主任技術者の仕事内容
次に、ボイラータービン主任技術者の仕事内容について4つ解説します。
ボイラーとタービンの運転管理・保安監督
ボイラータービン主任技術者の仕事内容の1つ目は、ボイラーとタービンの運転管理・保安監督です。
火力・原子力・燃料電池の発電所や発電設備を所有する工場は、電気事業法により有資格者を配置することが定められています。
そのため、ボイラー・タービン主任技術者の資格を持った人が現場の安全維持を監督する必要があるのです。
運転管理・保安監督業務は、大規模な事故を未然に防ぐために非常に重要な仕事です。
電気設備の保安規定の作成
ボイラータービン主任技術者の仕事内容の2つ目は、電気設備の保安規定の作成です。
電気事業法では、自家用電気設備の設置者が保安規定を作成して経済産業大臣に届け出ることが義務付けられています。ボイラータービン主任技術者の仕事の一つが、この保安規定の作成です。
ボイラータービン主任技術者は、日常点検の方法や維持管理体制、指揮命令系統などを明記して保安規定を作成します。
電気工事の計画や施工までの管理
ボイラータービン主任技術者の仕事内容の3つ目は、電気工事の計画や施工までの管理です。
例えば、環境保全事業を行う企業ではボイラーでばい煙(燃焼などで生じる有害物質)を排出するため、近隣環境に配慮しなければなりません。このようなケースでは、ボイラータービン主任技術者が設備の設置や維持について考える必要があります。
電気工事の計画や施工を管理をして適切に設置することも、ボイラータービン主任技術者の大切な役割の一つです。
第一種と第二種は扱える電気設備の大きさが異なる
ボイラータービン主任技術者の第一種と第二種では、扱える電気設備の大きさが異なります。
第一種は電気設備の圧力の大きさに制限がなく、発電用ボイラーや蒸気タービンといったすべての設備に携われます。
これに対して第二種が扱えるのは、圧力5880キロパスカル未満の汽力設備、原子力設備、ガスタービン設備及び圧力98キロパスカル未満の燃料電池設備です。
企業の規模や事業内容によって求められる内容が異なるため、求人情報の記載を確認してみましょう。
ボイラータービン主任技術者の取り方に関するよくある質問
ここからは、ボイラータービン主任技術者の取り方に関するよくある質問に回答します。
ボイラータービン主任技術者とは?
ボイラータービン主任技術者とは、ボイラーやタービンの工事・維持・運用を監督するための国家資格です。第一種と第二種の資格区分があり、扱える電気設備の大きさによって分けられています。
試験はなく、管轄の産業保安監督部電力安全課に申請することで取得できます。
ただし、申請には実務経験年数が必要のため、取得するまでの難易度は高めと言えるでしょう。
ボイラータービン主任技術者を申請するための必要書類は?
ボイラータービン主任技術者を申請するための必要書類は以下のとおりです。
- 主任技術者免状交付申請書
- 卒業証明書又は省令で定める資格等の写し
- 実務経歴証明書
- 戸籍抄本または住民票(本籍の記載のあるものに限る)
- 修得学科目証明書(学科名だけでは内容が判断できない場合のみ)
様式については、最寄りの産業保安監督部電力安全課のWEBサイトを確認してみてください。
参考:ボイラー・タービン主任技術者免状の交付申請|関東東北産業保安監督部東北支部
ボイラータービンに関する他の国家資格は?
ボイラータービンに関する他の国家資格に、ボイラー技士、ボイラー溶接士、ボイラー整備士が挙げられます。
ボイラー技士はボイラーを用いて空調を管理する資格で、ボイラー溶接士はボイラーの製造や修理に必要な溶接作業を行う資格です。
ボイラー整備士は、一定企画以上のボイラーや第一種圧力容器のメンテナンスを行います。
いずれの資格も、ボイラータービン主任技術者とは業務の範囲が明確に異なっています。
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ボイラータービン主任技術者を取得して年収アップを目指そう
今回はボイラータービン主任技術者の取り方について解説しました。
ボイラータービン主任技術者は、特定の実務経験年数を満たすことで取得できます。
他のボイラーに関わる資格と比べて取得の要件が厳しいですが、その分携われる仕事の範囲が大きい資格です。
転職や昇給に有利なボイラータービン主任技術者を取得して、年収アップを目指しましょう。
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