昨今、様々な業種・業態で「24時間勤務」という言葉を耳にするようになってきました。
しかし、「24時間勤務」のことを「24時間連続で働かされるブラックな仕事」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、24時間勤務の特徴、24時間勤務の仕事の例、24時間勤務のメリットなどについて解説します。
24時間勤務とは16時間労働・8時間休憩の勤務体系
そもそも24時間勤務とはどのような働き方なのでしょうか。まずは、24時間勤務の特徴や、24時間勤務の適法性について紹介します。
24時間勤務とは
24時間勤務とは、その名の通り24時間働くことを表しますが、「24時間ずっと働かされる」というわけではありません。
24時間勤務の仕事は、合計8時間の休憩と、合計16時間の勤務という形態が一般的です。その際、8時間の休憩時間は連続で与えられる場合と分割して与えられる場合があり、休憩時間中に仮眠を取ることも可能です。
職種によっては、休憩時間が8時間以上の場合もあり、「24時間勤務の場合は最低8時間の休憩が取れる」と考えておけば問題ありません。
また、24時間勤務とは少し異なりますが、「宿日直勤務」という働き方もあります。いわゆる、看護師や医者の「当直勤務」で、労働基準監督署(厚生労働省)の認可を得た場合、8時間の法定労働時間を超えて勤務できるというものです。
ただし、この宿日直勤務中には、ほとんど労働をする必要のない勤務(例:電話対応や待機、院内の巡回など)のみが認められています。そのため、医師や看護師の場合だと、手術等の医療行為は行えないことになっています。
出典:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」
二交代制と三交代制
警備員や看護師など24時間勤務の仕事はいくつかありすが、それらの仕事が必ずしも「16時間勤務の8時間休憩」となるわけではありません。
それらの仕事の多くは、「二交代制」もしくは「三交代制」と呼ばれる勤務形態を取っています。
「二交代制」と「三交代制」は「交代制勤務」と呼ばれ、法律で定められた法定労働時間を超えて勤務をしなければならない場合(例:病院、コンビニ、警備など)に導入される働き方です。
そして、この交代制勤務のなかでも、「二交代制」は「日勤」と「夜勤」の2つのシフトに分かれる勤務形態で、「三交代制」は「日勤」「準夜勤」「深夜勤」(企業によって名称は異なります)の3つのシフトに分けられる勤務形態です。
例えば、二交代制の場合は以下のようにシフトが分けられます。
〇夜勤の方が長時間の場合(例)
- 「日勤」:8:00~17:00(8時間勤務)
- 「夜勤」:16:30~9:00(休憩2~3時間含む16時間勤務)
〇日勤と夜勤がそれぞれ同じ時間の場合(例)
- 「日勤」:7:00~19:00(休憩1~2時間含む12時間勤務)
- 「夜勤」:19:00~7:00(休憩1~2時間含む12時間勤務)
そして、三交代制の場合は以下のようになります。
〇各時間帯で同じ時間の場合(例)
- 「日勤」:8:30~17:00(8時間勤務)
- 「準夜勤」:16:30~00:30(8時間勤務)
- 「深夜勤」:0:00~9:00(8時間勤務)
三交代制の場合は、上記のように各時間帯で8時間となる場合が一般的ですが、忙しくなる時間帯だけ他の時間帯よりも長時間になる場合もあります。
〇早朝の時間帯に人員を割きたい場合(例)
- 「日勤」:8:30~17:00(8時間勤務)
- 「準夜勤」:16:30~00:30(8時間勤務)
- 「深夜勤」:0:00~11:00(10時間勤務)
このほかにも、「準夜勤」の時間帯を終電の時間に合わせたり、パートタイマーを雇って交代のスパンを細かくする場合もあります。 交代する回数が多い分、三交代制のほうが二交代制よりもシフト調整がしやすいと言えます。
また、二交代制と三交代制にはそれぞれメリットとデメリットがあり、それをまとめたのが下記の表です。
メリット | デメリット | |
二交代制 |
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三交代制 |
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このように、それぞれにメリットとデメリットがある二交代制と三交代制ですが、「どちらがいい」というものではなく、「自分が何を重視するか」を基に勤務形態は選択するべきです。休日を減らしてでも1日の労働時間を短縮したい人は三交代制、1日の労働時間を長くしてでも休日にしっかり休みたい人は二交代制がおすすめです。
さらに、言うまでもありませんが、交代制勤務を続ける場合には「規則正しい生活習慣の維持」と「睡眠時間の確保」が絶対に欠かせません。交代制勤務の仕事に就いているのにもかかわらず、普段から不健康な生活を続けている人は、要注意です。
暦日以外に休日を取れることがある
労働基準法第35条では、使用者は労働者に対して最低週一回の休日を与えなければならない、と定められており、その休日は原則、暦日で与えられる必要があります。
出典:e-GOV法令検索
暦日とは、暦法に基づいて定められた暦上(カレンダー)の一日、つまり、午前0時~午後12時(翌日の午前0時)までの24時間を指します。例えば、1月1日午前0時~1月1日午後12時(1月2日午前0時)までを1暦日としてカウントします。
そのため、前日の労働が延長されて午前0時を超えてしまった場合は、休日を与えたことになりません。つまり、休日を与える場合は、午前0時~午後12時の24時間を休ませる必要があるということです。
ただし、以下の条件を満たす場合は、連続24時間の休憩を与えることで、例外的に暦日ではなくても休日として扱うことが認められています。
- 番方編成による交代制であることを就業規則で定め、制度として運用されていること
- 各番方の交代が規則的に定められ、勤務割表等でその都度設定されるものではないこと
番方編成とは24時間を3交替制で回すようなシフト勤務のことです。これはつまり、番方編成による交替制であることが就業規則に明記された状態で運用されており、かつその交代制が固定シフトであれば、暦日以外を休日とみなすことができる、ということを表します。
そして、特定の業種に対してのみ、例外が発動するケースもあります。
まず一つ目は、トラックのドライバーです。
ドライバーの仕事には、「休息期間」と「休憩時間」という概念があり、「休息期間」は拘束時間外に与えられる休憩で、「休息期間」は拘束時間内に与えられる休憩です。
厚生労働省の基準では、1日の拘束時間は原則13時間の16時間が限度(1週間に15時間を超えてもいいのは2回まで)で、「休息期間」は継続8時間以上与えなければならないとされています。また、休日を与える場合は「休息期間」に併せて24時間の連続した時間を与え、かつその合計時間が30時間を下回ってはならないと定められています。
この場合、「休息期間」は8時間と定められているため、実際は32時間以上の連続した時間が休みにならなければ、「休日」扱いされないのです。
例えば、以下のような場合は「休日」として認められます。
ただし、休日を2日以上連続して与える場合は、2日目以降の休日は連続24時間の休みで「休日」としてみなされます。
続いて二つ目が、旅館業です。
旅館業も暦日2日にまたがる休みでも「休日」として扱うことが認められています。なぜなら、旅館業はお客さんを宿泊させるという業態上、従業員の勤務体制が2暦日にまたがることを前提としているからです。
ただし、その場合以下の条件を満たしている必要があります。
- 正午~翌日正午までの24時間を含む継続30時間の休息時間が確保されていること
- 休日が暦日の2日にまたがること、およびその時間帯についてあらかじめ(前月末までに)労働者に伝達していること
- 1年間の法定休日数の内、2分の1は暦日で付与していること
- 1年間に法定休日数を含め60日以上の休日を確保すること
この条件の中では3つ目がポイントで、休みの半分以上は暦日をまたがない標準的な休日を与える必要がある、ということです。
出典:厚生労働省労働基準局「旅館業における休日の取り扱いについて」
関連記事:トラックドライバーの休憩や休日の取り方・ルールを徹底解説
労働基準法違反ではないのか?
24時間勤務は法定労働時間を超過して労働させているため、本来であれば労働基準法違反となりますが、「36(さぶろく)協定」を締結し、所管の労働基準監督署長に届け出をしている場合に限り、24時間勤務は合法となります。
36協定とは、労働基準法第36条に基づく労使協定のことで、時間外・休日労働に関して言及している条項になります。
この36協定を結ぶ場合、使用者は「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」等をあらかじめ定めておく必要があります。そして言うまでもなく、36協定を破った場合は違法となります。
また、2018年の労働基準法改正により、36協定で定める時間外労働時間に、罰則付きの上限が設けられました。
具体的には時間外労働の上限は、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはができなくなりました。さらに、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年間6か月までという制限も設けられています。
出典:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
24時間勤務の仕事は公務員からサービス業までさまざま
このように、24時間勤務には様々な形態があります。
では、24時間勤務の仕事としては、どんなものがあるのでしょうか。
代表的なもので言えば、警備員、医者、看護師、消防士、警察官はイメージしやすいと思います。
その他には、駅員、ホテルのフロントスタッフ、トラックドライバー、自衛官、インフラエンジニアなども24時間勤務の仕事と言えます。
24時間勤務:1日の流れ
様々な職種が様々な形態で実施している24時間勤務ですが、実際にはどのようなスケジュールで働いているのでしょうか。
ここでは、24時間勤務(交代なし)の1日の流れの例を紹介します。
〇24時間勤務の1日の流れ(交代なし)
9:00~12:00:出勤、勤務スタート
12:00~13:00:昼食休憩(1時間)
13:00~15:00:勤務
15:00~15:30:小休憩(30分)
15:30~18:00:勤務
18:00~19:00:夕食休憩(1時間)
19:00~21:00:勤務
21:00~21:30:小休憩(30分)
21:30~1:00:勤務
1:00~6:00:仮眠(5時間)
6:00~9:00:勤務(次の担当者への引継ぎ)
9:00:退勤
この場合、勤務時間が16時間で休憩時間が8時間となります。
24時間勤務の特徴は、仮眠時間を確保しなければならないことです。当たり前ですが、人間は睡眠をとらなければ、仕事のパフォーマンスは自ずと低下します。集中力を保って効率良く働くためにも、仮眠時間は不可欠です。
また、24時間勤務をする場合は仮眠をするための施設を用意しておくことも、労働安全衛生規則第616条によって義務付けられています。
事業者は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠
することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。
仮眠室とは言わないまでも、仮眠をするために横になるスペースのある部屋を用意しておかなければ、そもそも24時間勤務を労働者にさせることはできないのです。
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関連記事:タクシー運転手の隔日勤務とはどういうシフトなのか?
24時間勤務:4つのメリット
ここまでは、24時間勤務の特徴や実態について詳しく解説してきましたが、「そもそも24時間勤務にはメリットがあるのか」と気になっている方も多いのではと思います。
長時間の労働で疲れやすいことはもちろんありますが、それ以上に、24時間勤務には大きなメリットがあります。ここでは、24時間勤務のメリットを4つ紹介します。
未経験者でも就職しやすい
24時間勤務のメリット1つ目は、未経験者でも就職しやすいことです。
医師や看護師など特殊な仕事を除けば、24時間勤務の仕事は未経験者でも就職しやすいものが多いです。
24時間勤務の代表的な仕事である警備員を例に挙げると、就職において資格は一切不要で、学歴・経験は不問、年齢制限もないに等しく、50~70代の人でも当たり前のように働くことができます。
さらに、警備業界は慢性的な人手不足と言われているため、よほど人格に問題がない限りは、就職に困ることはありません。
一般的な仕事の場合、中途採用となるとこれまでの経歴や実績が重視されるため、これまであまり満足のいくキャリアが歩めなかった人にとっては、ハードルが高いかもしれません。ですが、24時間勤務の仕事であれば、未経験でも就職できて、そこからのキャリアアップも狙うことができるのです。
プライベートの予定を立てやすい
24時間勤務のメリット2つ目は、プライベートの予定を立てやすいことです。
24時間勤務の場合、勤務終了日と翌日(終了時間によっては、翌日と翌々日)が休みとなることが確定しているため、予定を入れやすいとされています。
一般的な仕事の場合、1日8時間働いて(ときには残業もして)、帰宅しても疲れてすぐ寝て、翌朝起きてまた働く、というルーティンに縛られ、自分の自由な時間は週末の土日ぐらいしか確保されていません。さらに、会社によっては不定期で土日出勤を課している場合もあり、そうなれば休みはないに等しいと言わざるを得ません。
その点、24時間勤務の場合は残業もなく休みも確実に取れるため、あらかじめ予定を入れても、仕事の都合でキャンセルすることなく、プライベートを存分に楽しむことが可能なのです。
体力的な負担が少ない
24時間勤務のメリット3つ目は、体力的な負担が少ないことです。
先述の通り、24時間勤務の場合、労働者に比重の重い業務を課すことは法律で禁じられているため、24時間勤務の仕事内容は、体力的な負担が少ないものがほとんどです。
もちろん、場合によっては深夜も起きて働かなければならないため、眠気や多少の疲労感は感じるかもしれませんが、24時間勤務では仮眠時間も設けられているため、しっかりと休めば問題はありません。
そのため、体力に自信のない人や年配の人でも、24時間勤務の仕事であれば問題なくこなせるのです。
仮眠時間が労働時間に入るケースがある
24時間勤務のメリット4つ目は、仮眠時間が労働時間に入るケースがあることです。
24時間勤務の仮眠時間は労働時間外の「休憩時間」として処理されているため、基本的には給料が出ません。ですが、例えば、仮眠中であっても、業務に関する緊急の対応を求められる可能性がある場合は、仮眠時間でも労働時間に入ることがあります。
なぜなら、もし仮に業務の対応を求められたならば、その時間は出勤している「勤務時間」とみなされるからです。
具体的な職業としては、24時間の監視が必要な施設警備員や、医者や看護師などが挙げられます。
ただし、この仮眠中の扱いに関しては、具体的に法律で明文化されているわけではないため、現実的には各企業の就業規則に従う場合が多いです。そのため、就職する前に、「仮眠時間の給料は発生するのか」を雇用主に確認しておくのが賢明です。
24時間勤務についてよくある質問
ここまで、24時間勤務の特徴やメリットについて解説してきました。ここでは、その他によくある質問に回答していきます。
残業代は出るの?
結論から言えば、出ないケースが多いです。
24時間勤務の場合、多くは変形労働制となっており、変形労働制とは以下の労働基準法第32条で定められている制度です。
使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
引用元:e-GOV法令検索
つまり、仮に一日に8時間以上の勤務をさせたとしても、週の平均労働時間が法定労働時間内(40時間/週)に収まっていれば、時間外労働とはみなされないということです。
もちろん、これは労働者と使用者の間に協定が結ばれていることが前提ですが、基本的には24時間勤務の仕事で残業代は期待できないと考えておくべきです。
ただし、変形労働時間制でも深夜労働に対しては深夜割増賃金、休日労働に対しては休日割増賃金がそれぞれ発生するので、そこは要注意です。
出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法割増賃金ー割増賃金編ー」
勤怠管理はどうやるの?
最近では、24時間勤務の勤怠管理は勤怠管理システムやソフトを使って勤怠時間の打刻をしている企業が多いです。
システムやソフトを使えば管理に漏れがなくなるため、使用者と労働者双方にメリットがあります。
関連記事:ドライバーの労働時間は働き方改革でどう変わった?ルールを解説
関連記事:タクシードライバーの勤務時間は長い?4つの時間区分とは
24時間勤務に関するまとめ
24時間勤務とは16時間労働・8時間休憩の勤務体系があります。また24時間連続勤務は、労働基準法の下で適法に指示できますが、一定のルールを遵守しなければ違法です。
24時間勤務を適切に理解した上で、自分に合う転職先を見つけましょう。
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