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タクシードライバーの勤務時間は長い?4つの時間区分とは

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タクシードライバーと聞くと、多くの人が長時間労働をイメージするでしょう。

その理由は、公共交通機関がストップする深夜などにタクシーの需要が高まるため、24時間営業している事業所が多いからと言えます。

タクシー業界はシフト制が当たり前で、タクシードライバーならではの勤務形態もあります。

今回はタクシードライバーの勤務時間や勤務形態について、分かりやすく解説していきます。

この記事でわかること

・タクシードライバーの勤務時間の形態と実例
・タクシードライバーの勤務形態に関するルール
・タクシードライバーの勤務形態で起こりがちな法律違反
・タクシードライバの勤務形態に関する行政の取り組みについて

タクシードライバーの勤務時間の形態と実例

タクシー会社は、公共交通機関が動いていない時間帯に売り上げを上げやすいこともあり、多くの会社が24時間営業となっています。

そのため勤務形態はシフト制となるのですが、他の職種とは勤務時間や出勤日数が異なります。

ここではタクシードライバーの勤務形態や具体的な実例、他の産業と比べた年間労働の実態について、詳しく解説していきます。

タクシードライバーの勤務形態

タクシードライバーの勤務形態は主に3種類あります。

・昼日勤
・夜日勤
・隔日勤務

【昼日勤】
昼日勤とは一般的なサラリーマンと同じような時間帯に働く勤務形態で、朝7~8時に出庫して夕方の4〜5時に帰庫する流れです。

休憩はドライバー各自で取るようになっており、時間は1時間ほどです。

休みは週に1〜2日で月に6〜8日となります。

【夜日勤】
夜日勤は夕方の5〜6時に出庫して、翌2〜3時に帰庫する勤務となります。

休憩時間や休みの日数は昼日勤と変わりません。

ここまでは他の職種の日勤や夜勤とそこまで大きな違いはありませんが、タクシードライバーの勤務形態として主流なのが「隔日勤務」です。

【隔日勤務】
隔日勤務は昼日勤と夜日勤が1つになったような働き方です。

隔日勤務の休憩時間は3時間あり、タクシードライバーが各自のタイミングで休みを取ります。

隔日勤務中でもゆっくり体を休められるように、仮眠室を設けているタクシー会社が多くあります。

隔日勤務は1日中タクシーを稼働させられるため、売り上げを上げやすく、多くの会社で主流となる勤務形態です。

この他にも地方のタクシー会社では、依頼の電話がくるまで事務所待機する「車庫待ち」という働き方もあります。

関連記事:タクシーの隔日勤務における労働時間は?2024年問題も解説

関連記事:タクシー運転手の隔日勤務とはどういうシフトなのか?

タクシードライバーの勤務時間の実例

タクシードライバーの各勤務形態について解説しましたが、どの会社でも同じ出勤時間というわけではありません。

営業エリアによって乗客が多い時間帯が異なるため、それに合わせた出勤時間が各自で設定されています。

【昼日勤の場合】
・7:00~16:00
・8:00~17:00

昼日勤のタクシードライバーは、公共交通機関が動いていない時間帯に出勤するサラリーマンなどがメインの乗客となります。

最も稼げるのは早朝であり、この時間帯をいかに効率よく運行できるかによって、売上が大きく変わります。

他の職種と似た勤務形態ということもあり、人気の勤務形態ではありますが、昼日勤のタクシードライバーを雇いすぎると夜日勤の稼働率が下がってしまい売り上げが上がりません。

そのため、昼日勤を採用している会社は稀です。

【夜日勤の場合】
・18:00~翌2:00
・19:00~翌3:00

夜日勤は、仕事が終わり繁華街に向かう人などがメインの乗客となります。

夜10時から翌朝の5時までは深夜割増料金となるため、日勤よりも売り上げが上がりやすい傾向にあります。

ただし、昼日勤と同様にタクシーの稼働率の偏りを防ぐために、夜日勤を採用しているタクシー会社は稀です。

【隔日勤務の場合】
・8:00~翌4:00
・13:00~翌9:00
・16:00~翌12:00

タクシー会社で主流となっている勤務形態であり、どの時間帯であってもタクシーが不足しないようにスケジュールが組まれます。

多くのタクシー会社では、2パターンの隔日勤務を組み合わせたシフトが組まれています。

仕事が終わった日は「明番」と呼ばれ、その日に再度出勤することはありません。

隔日勤務は月に13回までと決められており、週ごとの勤務例は以下のような流れとなります。

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
出勤明番出勤明番休み出勤明番
出勤明番休み休み休み出勤明番
出勤明番休み出勤明番出勤明番
休み休み休み出勤明番出勤明番

長時間労働に慣れるまでは大変ですが、仕事が終わった日は一日ゆっくりできるため、プライベートな時間を作りやすい魅力があります。

ちなみに、タクシードライバーの求人にはパート社員を募集しているものもあります。

パートと聞くと数時間程度の勤務を想像する人が多いかもしれませんが、タクシードライバーの場合は9時間勤務(休憩時間1時間)がほとんどです。

そのため、勤務形態は正社員の日勤とほぼ変わりません。

タクシードライバーの年間労働時間の実態

1回の勤務で17時間ほど働くタクシードライバーは労働時間がかなり長いと思われがちですが、月の労働時間は平均で176時間ほどと、そこまで多いわけではありません。

タクシードライバーを含めた全てのドライバー職で、長時間労働が原因の交通事故が問題視され始めたこともあり、年々労働時間は減少傾向にあります。

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会によると、タクシードライバーの年間労働時間の推移は以下のようになっています。

年度タクシードライバーの年間労働時間全産業の年間労働時間
昭和60年2,700時間2,388時間
平成5年2,508時間2,196時間
平成15年2,412時間2,184時間
平成25年2,352時間2,160時間
令和元年2,340時間2,136時間
令和3年2,112時間2,172時間

参照元:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会|令和3年タクシー運転者の賃金・労働時間の現況 

近年はコロナウイルスの影響もあると推測されますが、全産業と比べた年間労働時間の乖離も年々小さくなってきていることが分かります。

タクシードライバーの勤務時間のルール

タクシードライバーには3種類の働き方があり、主流となっているのが隔日勤務です。

他の職種ではあまり取り入れられていない勤務形態であるため、勤務時間に関するルールが気になる方もいるのではないでしょうか。

ここでは、勤務時間の具体的なルールについて詳しく解説していきます。

4種の時間区分

タクシードライバーの労働時間は4つの区分に分けられます。

・拘束時間
・労働時間
・休憩時間
・休息時間

一日の流れでどの部分がどの区分に該当するかは以下の通りです。

出勤前:~7:00休息時間
出勤後に出庫して営業:8:00~14:00労働時間・拘束時間
休憩:14:00~15:00休憩時間・拘束時間
営業:15:00~19:00労働時間・拘束時間
休憩:19:00~20:00休憩時間・拘束時間
営業:20:00~24:00労働時間・拘束時間
休憩:24:00~1:00休憩時間・拘束時間
営業:1:00~4:00労働時間・拘束時間
退勤:4:00~休息時間

この場合の拘束時間は朝8時〜翌4時までの20時間であり、休憩時間と労働時間の合計となります。

労働時間とは、乗客を乗せている時間や待機している時間です。

休憩時間とは、乗客の待機もしていない、仮眠中などの時間です。

休息時間とは勤務が終わり、次の勤務までの時間を指します。

労働基準法上のルール

労働基準法で定められた勤務時間のルールは以下の通りです。

 隔日勤務昼日勤・夜日勤
拘束時間・1ヶ月に262時間まで(1年のうち6ヶ月までは270時間/月まで延長可能)

 

 

※労使協定がある場合

・1勤務21時間まで

・1ヶ月に299時間まで

 

 

・1日原則13時間まで(最大16時間)

労働時間変形労働時間の場合は1ヶ月を平均して週40時間を超えない1日8時間で週40時間
休息時間継続して20時間以上継続して8時間以上

勤務形態によって上のルールを守って働かなければなりません。

特例として車庫待ちの隔日勤務の場合、夜間に4時間以上の仮眠時間を取れば拘束時間を最大24時間まで延長可能です。

ただし、労使協定によって拘束時間が21時間を超える勤務の回数(7回以内)や、当該協定の有効期間を定める必要があります。

関連記事:タクシードライバーの勤務時間は長い?4つの時間区分とは

タクシードライバーの勤務時間を巡って起きがちな法律違反

タクシードライバーの勤務形態や勤務時間のルールについて解説してきましたが、中には勤務時間のルールを守れていない会社もあります。

ここでは、過去に発生した勤務時間に関する主な法律違反の内容について、3つ紹介していきます。

平均週40時間が守られていない

労働時間は昼日勤や夜日勤では1日8勤務で週に40時間まで、隔日勤務の場合は1ヶ月の平均で週の労働時間が40時間以内と決まっています。

これを超える時間の労働があった場合は、別途残業代を支払わなければなりません。

しかし中には、残業代を支払われていないケースもあるため、注意が必要です。

休息時間や拘束時間が守られていない

前述した通り、拘束時間や休息時間は勤務形態により、以下のように定められています。

【昼日勤・夜日勤】
・拘束時間:最大16時間まで
・休息時間:継続8時間以上

【隔日日勤】
・拘束時間:1勤務21時間以内
・休息時間:継続20時間以上

あきらかに上記の時間を超えているようなタクシー会社はありませんが、例えば帰庫寸前で乗客に停められた場合、行き先によっては勤務時間を超える可能性があります。

また、シフトの都合により急に出勤時間が早くなった場合など、休息時間が足りていないのに出勤せざるを得ないようなケースです。

変則的な勤務形態のため細かい違反に気付きにくく、売り上げを上げたいドライバーも多いため、このようなルール違反が発生することがあります。

関連記事:タクシー運転手の休憩の取り方や内容、ルールを解説!

雑務・事務作業が労働時間に含まれていない

営業後の雑務や事務作業が労働時間に含まれていないのもよくあるケースです。

特に先ほど紹介したような、帰庫直前で乗客が見つかった場合などは、退社時間に事務作業などが間に合いません。

帰庫して洗車や売上日報を作成している時間が、規定の退社時間を過ぎている場合、会社側は残業代を支払う必要があります。

また、拘束時間が22時間以上となった場合は、違法となるため注意が必要です。

ちなみに、違法な勤務形態や残業代の未払いなど働き方に関するトラブルを抱えている場合「労働基準監督署」に相談すると良いでしょう。

労働基準監督署は、管轄エリア内の企業が労働基準法を守っているかを監督する機関です。

相談は無料のため、気になることがあった場合にはタクシードライバーに限らず労働基準監督署へ話してみるようにしましょう。

タクシードライバーの勤務時間を巡って割増賃金が認められた判例

拘束時間に関するサービス残業はタクシー業界では珍しくなく、過去にはタクシードライバーが裁判を起こした事例もあります。

【令和2年洛東タクシーとホテルハイヤーの残業代未払いに関する裁判】
洛東タクシーとホテルハイヤーのタクシードライバー27人は、歩合給に残業代を含むとしている会社の制度に対し裁判を起こしました。普段の業務の中で残業代が未払いになっているとして、合計1億900万円の支払いを求めています。結果、雇用契約書の書面上で基準外手当が時間外労働の記載がないと指摘があり、会社側は残業代を別途支払う判決となりました。

 

 

会社側は乗客を探して走る流し営業や休憩場所に向かうための時間は、労働時間に当たらないと主張しましたが、認められていません。

2015年7月〜2017年5月までの未払い残業代に加えて、制裁にあたる付加金も含めた金額の支払が命令されています。

【令和2年国際自動車の就業規則に関する裁判】
国際自動車の就業規則では、ドライバーの売上に対する歩合給の計算では、残業手当などに相当する金額を控除すると定められていました。この就業規則は労働基準法第37条に違反していると、社員のドライバーが訴えを起こしています。結果、時間外労働などによって発生する残業手当の額が、歩合給の減額に繋がり歩合給が0円になる可能性もあるため、割増賃金が支払われていないという判決となりました。

 

 

タクシードライバーの勤務時間に関する行政の動き

タクシードライバーの労働時間に関する問題について解説してきましたが、勤務時間改善に向けた取り組みが少しずつ進められています。

ここでは、行政が進める勤務時間改善に関する取り組みについて、解説していきます。

厚生労働省が勤務時間の見直しをはかる

2022年の3月に行われた厚生労働省の有識者検討会では、タクシードライバーの勤務時間を見直すことが決まっています。

具体的には、タクシードライバーの過労対策にはしっかり休息を取ることが大切として「勤務間インターバルを11時間以上与える」という、事務所の努力義務が設定されました。

これは勤務時間が減少するというよりは、仕事が終わってからの休息時間を増やすといった考えです。

勤務間インターバルとは

勤務間インターバルとは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」で、平成30年7月に公布された新しい法律です。

勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設けることにより、労働者の生活時間や休憩時間を確保するのが目的です。

勤務間インターバル制度の導入例には、以下のような働き方があります。

【従来の勤務】
・8:00~22:00まで勤務(5時間残業)→翌8:00出勤(勤務間インターバルは10時間)

【勤務間インターバル制度導入後】
・8:00~22:00まで勤務(5時間残業)→翌9:00出勤(勤務間インターバルは11時間)

このように長時間の残業があったとしても、11時間の休息を設けることで労働者の過労を防ぎやすくなります。

タクシードライバーの勤務時間に関してよくある質問

最後は、タクシードライバーの勤務時間に関するよくある質問について答えていきます。

・隔日勤務はきついですか?
・2024年問題はタクシードライバーの勤務時間に何か影響がありますか?

実際にタクシードライバーとして働く人の声や、今後の労働時間の変化に関する内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

隔日勤務はきついですか?

隔日勤務は拘束時間が長いものの、多くのタクシードライバーが「慣れれば楽」と感じています。

その理由は主に4つあります。

・1ヶ月の出勤日数が少ない
・労働時間内でも比較的自由に動ける
・休息時間が長い
・運転業務なので力仕事がない

隔日勤務は、次の勤務までの休息時間を最低20時間以上設ける必要があるため、仕事終わりはゆっくり休めます。

1日公休でも2連休のような感覚で休めるため、疲れが残ったまま次の日に出勤するようなこともありません。

仕事中も上司から指示されるようなことはなく、1人でマイペースに仕事を進められます。

休憩時間も自由であるため、その時の体調に応じた働き方が可能です。

業務自体も力仕事はほとんどないので、運転に慣れればそこまで辛いと感じなくなります。

2024年問題はタクシードライバーの勤務時間に何か影響がありますか?

2024年の4月より施行される働き方改革関連法では、隔日勤務における勤務間インターバルが継続20時間であったのが継続24時間が基本となり、22時間下限と長くなります。

拘束時間は21時間までと変わらないものの、シフトの組み方で調整が必要になるのは避けられないでしょう。

実際に働き方改革関連法が施行されない限り、具体的な影響は分かりませんが、タクシードライバーの働き方に変化が出るのは間違いないと予測されます。

関連記事:タクシードライバーの隔日勤務とは?昼勤と夜勤との違いを解説

関連記事:タクシーの隔日勤務がきついと言われる理由とは?

関連記事:タクシー業界ってブラックなの?きついと言われる理由や良い会社を見つける方法を紹介

タクシードライバーの勤務時間に関するまとめ

今回はタクシードライバーの勤務時間について解説してきました。

タクシードライバーの勤務形態は主に3種類ありますが、多くのドライバーが隔日勤務で働いています。

1回の勤務で17時間近く働くため、途中の休憩時間は最低3時間取る必要があり、仕事が終われば次の勤務までに20時間以上の休息を取る必要があります。

変則的な勤務で残業との線引きが分かりにくい特徴があるため、残業に関する就業規則はなるべくチェックしておくようにしましょう。

2024年には働き方改革関連法の施行が控えており、休息時間や勤務時間に変化が出ることが予想されます。

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