物流業界

庸車とは?メリット・デメリットと失敗しない活用方法

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傭車

「庸車(ようしゃ)」という言葉は、物流業界においてしばしば耳にするかもしれません。しかし、多くの人にとっては馴染みの薄い用語です。

需要の変動や繁忙期の対応、特殊な配送ニーズなど、多様な課題に迅速かつ柔軟に対応することが求められる近年の運送業界では、庸車の利用は多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。

本記事では、庸車の基本的な概念、庸車のメリットやデメリットなどについて解説します。

傭車(庸車)とは?

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傭車(ようしゃ)とは、荷主が繁忙期や人員不足などで荷物を運搬する車両や人員が不足しているときに、他の運搬業者に委託して荷物の配送を行ってもらうことを指します。

ここでは、傭車について詳しく解説します。

傭車と庸車の違い

傭車(ようしゃ)と庸車(ようしゃ)は、漢字が違うだけで、意味は同じです。「傭」という漢字は常用漢字および新聞漢字表に含まれないため、一般的に用いやすいのは「庸車」となります。

傭車(庸車)と下請けの違い

傭車(庸車)と下請けの違いは、物流業界において果たす役割と契約の性質にあります。

傭車は運送業において、自社の運送能力だけでは不足する場合や、短期的な運送需要に対応するために、一時的に他社の車両を借り入れることです。傭車の場合は車両のみが提供され、運転手は自社の従業員や他の個人が務めることが一般的です。

一方で、下請けは、主に元請けと呼ばれる企業から一部の運送業務を委託される他の運送会社や個人を指します。下請けは、元請け企業から直接指示を受けて、運送サービスを提供します。そのため、下請けは自らの車両と運転手を使用して業務を遂行することが一般的です。

重要なのは、下請けは元請けと契約を結び、より長期的かつ継続的な関係にある点です。要するに、傭車は車両の一時的な借り入れに関するものであり、下請けは業務そのものを委託される関係性であるという部分が、傭車と下請けの違いです。

関連記事:傭車と下請けの違いとは?メリットやデメリットも解説

荷主として傭車(庸車)を利用するメリット

続いては、荷主として傭車(庸車)を利用するメリットを3つ紹介します。荷主として傭車(庸車)を利用するメリットは下記の通りです。

  • コスト削減できる
  • 特殊荷物にも対応できる
  • 人員不足をカバーできる

では、一つずつ解説します、

コスト削減できる

荷主として傭車(庸車)を利用するメリットの1つ目は、コスト削減できることです。

傭車を利用することで、自社でトラックやその他の輸送手段を所有し、維持する必要がなくなるため、トラックの購入費や維持管理費、保険料などのコストを削減することが可能です。

例えば、荷物の量が一時的に増加した場合や、特定の季節やイベント時に需要が高まる場合など、必要な時にのみ追加の輸送手段を利用できるため、トラックの維持管理コストを削減できます。

また、専門的な物流業者に業務を委託することにより、荷主は物流に関する専門知識や経験を得て、物流業務の品質向上を図れるようになるため、間接的にコスト面での効率化を実現することも可能です。

特殊荷物にも対応できる

荷主として傭車(庸車)を利用するメリットの2つ目は、特殊荷物にも対応できることです。

輸送時に特別な設備や知識が必要な荷物を輸送する場合、自社で対応するための車両や装備を用意することは大きな負担になることがあります。

しかし、多種多様な車両や専門的なスキルを持ったドライバーを揃えている傭車サービスを利用することで、こうした特殊な要件を持つ荷物の輸送も柔軟に対応可能です。

また、特殊な荷物の輸送には特別な許可や規制が関わることもあり、これに精通している業者に委託することで、法規制の遵守や安全な輸送が保証されます。

このように、傭車を利用することで荷主は特殊な荷物の輸送に関わる多くの課題を解決でき、輸送に関する全体的な効率性と安全性を高めることが可能となるのです。

人員不足をカバーできる

荷主として傭車(庸車)を利用するメリットの3つ目は、人員不足をカバーできることです。

特に、物流業界は季節的な需要の変動や急な注文増加など、予期せぬ状況が発生しやすい業界です。これにより、短期間での人員確保が必要になることもしばしばあります。

自社でドライバーや運送スタッフを雇用している場合、こうした急な需要増に迅速に対応することは困難です。しかし、傭車サービスを利用すれば、必要なときに必要なだけの運送リソースを確保できます。

このように、傭車サービスを利用することで、荷主は人員不足を柔軟に解決し、ビジネスの変動に迅速に対応することが可能になります。これにより、荷主はサービスの質を維持しつつ、運営効率を高めることができるのです。

荷主として傭車(庸車)を利用するデメリット

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続いて、荷主として傭車(庸車)を利用するデメリットを2つ紹介します。荷主として傭車を利用するデメリットは下記の通りです。

  • 自社で責任を取らなければいけない
  • 運行の管理がうまくできない

では、一つずつ解説します。

自社で責任を取らなければいけない

荷主として傭車(庸車)を利用するデメリットの1つ目は、自社で責任を取らなければいけないことです。

傭車では、自社で直接雇用している運転手ではなく、外部の業者に運送を委託することになるため、何か問題が発生した場合に、直接的な管理・監督が難しくなります。例えば、荷物の損傷や納期の遅延などのトラブルが起きた際、自社の従業員ではないため、問題解決への対応が遅れることが考えられます。

加えて、万が一、運送中の事故などが発生した場合、荷主である自社が最終的には責任を問われる可能性もあります。これは、傭車業者との契約内容や事故の状況にも左右されますが、荷主としての責任は避けられない場合が多いです。

つまり、自社で運送を行う場合と比べて、傭車を利用することで発生するトラブルに対して、直接的なコントロールが効かないというリスクを伴うのです。このため、傭車を利用する際は、事前に業者との契約内容をしっかりと確認し、リスク管理に留意することが重要となります。

運行の管理がうまくできない

荷主として傭車(庸車)を利用するデメリットの2つ目は、運行の管理がうまくできないことです。

傭車業者は外部の独立した事業者であるため、荷主側から直接的な運行管理を行うことが困難になります。

例えば、荷物の取り扱いに関する細かな要望や特定の配送ルートの指定など、特別な指示を出したい場合でも、傭車業者が異なる業務方針を持っていると、その通りに対応してもらえないことがあります。

また、繁忙期などにおいては、傭車業者側の運行スケジュールが厳しくなるため、荷主の希望する納期に間に合わせることが難しくなる場合もあります。

そのため、荷主としては傭車を利用する際には、業者選定や契約内容に細心の注意を払い、可能な限りリスクを軽減するための方策を講じる必要があるのです。

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるメリット

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続いて、運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるメリットを3つ解説します。運送会社として傭車の仕事を請けるメリットは下記の通りです。

  • 効率よく車両を動かせる
  • 荷主から信頼獲得ができる
  • 新しい荷物の配送にも挑戦できる

では、一つずつ解説します。

効率よく車両を動かせる

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるメリットの1つ目は、効率よく車両を動かせることです。

通常、運送会社は自社の車両を最大限に活用し、継続的な収入を確保することがビジネスの基本です。しかし、需要の波や契約の変動により、時には車両が稼働しない時間が生じることがあります。しかし、傭車として他の荷主の仕事を受け入れることにより、これらの空車時間を有効活用し、収益の最大化を図ることが可能になるのです。

また、傭車の仕事を通じて多様な荷主との関係を築くことで、荷主としての需要が一定しない状況下でも、将来的には新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

つまり、傭車の仕事を請けることで、運送会社は自社の車両をより効率的に運用し、安定した経営基盤の構築を目指すことができるのです。

荷主から信頼獲得ができる

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるメリットの2つ目は、荷主から信頼獲得ができることです。

傭車の仕事を通じて、運送会社はさまざまな荷主のニーズに応える機会を得ることができます。

運送業界では信頼関係の構築が極めて重要であり、特に時間通りの配送や荷物の扱いにおける安全性、効率的な運行計画などが重視されます。そのため、傭車を通してこれらの要素を確実に実行することで、荷主からの評価が高まり、継続的な仕事依頼へと繋がる可能性が高まるのです。

また、荷主との良好な関係は、口コミや紹介によって新たな荷主との繋がりを生むこともあり、ビジネスの拡大に寄与することになります。

したがって、傭車として荷主の期待に応えることは、運送会社にとって長期的な信頼関係の構築という大きなメリットをもたらすのです。

新しい荷物の配送にも挑戦できる

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるメリットの3つ目は、新しい荷物の配送にも挑戦できることです。

通常、一つの運送会社では限られた種類の荷物を扱うことが多いですが、傭車としてさまざまな荷主の依頼を受けることで、業務の幅を広げることが可能になります。

例えば、普段は一般的なパレット貨物を扱う運送会社でも、傭車として特殊な機器や危険物、生鮮食品など、今まで扱ったことのないタイプの荷物を運ぶこともできます。これにより、従業員は新たな知識や技術を身につけることができ、企業としても多様なニーズに対応できる能力を高めることが可能です。

また、多種多様な荷物の運送経験は会社の市場価値を高め、競合との差別化にも繋がります。

したがって、傭車の仕事を請けることは、運送会社にとって新しいチャレンジを通じて成長するための有効な手段となるのです。

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるデメリット

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続いて、運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるデメリットを2つ紹介します。運送会社として傭車の仕事を請けるデメリットは下記の通りです。

  • 低運賃になりやすい
  • 荷物紛失や事故が起きた場合の対処がめんどくさい

では、一つずつ解説します。

低運賃になりやすい

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるデメリットの1つ目は、低運賃になりやすいことです。

傭車の仕事は通常、荷主と傭車業者との間で直接交渉されるため、運送市場全体の運賃水準に大きく左右されます。

例えば、市場に傭車業者が飽和している場合、荷主はより低い運賃で傭車業者を探します。このような状況下では、傭車業者は荷主の要求に応じるために、本来期待するよりも低い運賃で仕事を請けることになることが少なくありません。

低運賃での仕事は、傭車業者の利益率を圧迫し、長期的には経営の持続可能性に影響を与えかねません。また、低い運賃での運送は、運転手の給与やサービスの質にも悪影響を及ぼす可能性があります。

したがって、傭車業者としては、傭車の仕事を受ける際には運賃の水準を慎重に検討し、企業の経済的健全性を維持できる範囲での契約を心がけることが重要です。

荷物紛失や事故が起きた場合の対処に手間がかかる

運送会社として傭車(庸車)の仕事を請けるデメリットの2つ目は、荷物紛失や事故が起きた場合の対処に手間がかかることです。

傭車の場合、傭車業者は直接荷主と契約を結ぶため、万が一荷物の紛失や事故が発生した際には、荷主との間で直接責任の所在や損害賠償の問題を解決しなければなりません。このような状況は、傭車業者にとって時間と労力を要するだけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。

また、荷主との関係が悪化するリスクも高まり、将来的な業務提携に影響を与える可能性も否定できません。これにより、傭車業者の信頼性やブランドイメージが損なわれることも考えられます。

さらに、紛失や事故による直接的な損害のほか、事故処理やクレーム対応に関わる間接的なコストも負担となり得ます。

このように、傭車の仕事では荷物紛失や事故発生時の対処が特に重要であり、傭車業者はこれらのリスク管理と対処方法を十分に考慮する必要があるのです。

出典:個人請負型就業者に関する裁判例について|厚生労働省

傭車(庸車)を依頼する際は利用運送の認可が必要

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傭車を依頼する際、利用運送の認可が必要になる点は重要な規制です。

利用運送は「貨物自動車利用運送」が正式名称で、貨物自動車運送事業法に基づく運送形態です。

一般的な運送事業者は、貨物利用運送事業法に基づいた「第一種貨物利用運送事業(貨物自動車)」の登録が必要になりますが、利用運送はこの貨物利用運送事業の定義の範疇に含まれています。

そのため、傭車を依頼する可能性がある場合は、事業計画を申請する際に利用運送の申請も併せて行う必要があるのです。

傭車(庸車)の仕事は物流には欠かせない仕事

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傭車(庸車)の仕事は、現代の物流業界において不可欠な役割を果たしています。

傭車は、特定のニーズに応じた輸送サービスを提供することに特化しています。例えば、一時的な輸送需要の増加や特定の貨物に特化した輸送など、柔軟かつ迅速に対応する必要がある状況において、傭車は重要な役割を担います。

また、物流業界は需要の変動が激しく、繁忙期や閑散期に応じて運送力を調整しなければなりません。このような状況において、傭車は運送能力を柔軟に調整する手段として機能し、業界全体の効率性と安定性を支えています。

さらに、特殊な貨物を扱う場合や特定の地域への輸送など、特定の専門性が求められる場面においても、適切な傭車の活用は非常に重要です。

結論として、傭車の仕事は物流業界の多様な需要に応じるために必要不可欠であり、業界の効率化とサービスの質の向上に寄与しているのです。

関連記事:荷姿の種類や特徴、使い分けの方法を紹介!

傭車(庸車)をうまく活用するにはITツールの活用がおすすめ

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また、社員の安全教育や監査対策、採用においても強みを発揮します。

まとめ

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今回は、庸車について解説しました。

庸車事業への参入を検討している方は、本記事を参考にして、庸車事業の仕組みを理解してみましょう。

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