トラックといえば、やはり「パワー」が重要ですよね。
今回はそのパワーについて、すなわち「馬力」について解説していきます。
トラック:馬力の見方について
トラックの「馬力」と言っても、実は細かく分けるともっと注意してチェックするべきところがあります。
それは「トルク」「回転数」そして「馬力」です。
この章では、その3つについて解説します。
加速する力がわかる「トルク」
トラックは馬力が必要な以前にトルクも重要な要素になります。
トルクとは簡単に表現すると車を加速させる時のパワーになります。
トルク値が低いとトラックが加速する時に加速度が低くなり、トルク値が高いと素早く加速できます。
どれだけタイヤを回せるかが分かる「回転数」
回転数とは基本的には1分間のクランクシャフトの回転数になります。
常に回転数が高ければ良いものではなく、ギアごとの適切な回転数で走行する必要があります。守らないとトラックを早く故障させる原因にもなりかねません。
エンジン性能の高さがわかる「馬力」
馬力とはトラックのエンジンの出力を表します。
馬力の数値が高いほど、車の最大性能が高いということになります。
皆さんがトラックを選ぶ上で気になるのもこの馬力かと思います。
関連記事:トラックメーカーの特徴を徹底比較!いすゞ・日野・UD・三菱ふそうメーカー別人気車種一覧
トラックの馬力:エンジン性能と基礎知識(単位・性能)
先ほどの章では「トルク」「回転数」「馬力」について簡単に解説しましたが、
ここではもっと細かく単位や性能についても解説します。
トルク
トルクの単位はN・m(ニュートンメートル)で表します。
1N・mは0.102kgf・m。ここでkgf・m(キログラムメートル)という単位が出てきましたが、これは1993年ごろまで使用されていたトルクの単位になります。f("force")は単位が重さではなく力であることを表すために付けています。
トルクについて身近なものに例えると、自転車で例えることができます。
自転車が停止している時に加速する時、皆さんはペダルに「力」を込めると思います。
この「力」こそが、トルクであり、力を込めてペダルを踏むと自転車が素早く加速していきます。
見方を変えると、自転車を漕ぐ人が、若い男性かおばあさんによって力の入り方が違いますよね。若い人の方が当然力があるので力が入ります。これはトルクが大きいと言えます。
トラックでも考え方は似ており、停止時からアクセルを踏み込んだ時にトルクのある車は素早く・力強く加速していきます。反対にトルクが弱いトラックですと、なかなか加速が鈍くなります。
回転数
単位は RPM(英語でRevolutions Per MinuteまたはRotations Per Minuteで表します。
1分間あたりのエンジンの回転数になります。
回転数が早いとエンジンの出力が高くなります。トラックについているタコメーターが回転数を表しています。
自転車で例えますと、
加速した後に、ある一定の速度での走行に移るかと思います。
ここでの一定速度で走る時の足の回転数が車での「回転数」になり、漕ぐスピードを上げる(回転数が高い)と自転車も速度が出ます。
トラックでも同じであり、エンジンの回転数が高いと、トラックのスピードも上がります。ただし、踏み込み過ぎて常に高い回転数で走行していると故障の原因になるので注意が必要です。
馬力
「トルク×回転数」で馬力になります。
馬力の単位はPSで ドイツ語で「Pferde starke」と言います。
1馬力で約75Kgの物を毎秒1メートル移動させることができます。
自転車で表現すると、ペダルの漕ぐ力(トルク)とペダルの回転数(回転数)が高いと、結果として自転車のスピードが上がります。自転車を漕ぐ人が力を持っている人だと力強くそして早く漕げるので、結果として馬力があるということになります。
トラックでも、同じことで、トルクと回転数が高いと結果としてトラックのパワーが上がります。馬力が大きいとトラックの最大性能も高いと言えますのでトラック購入を考える上でおろそかにできない数字です。
排気量
排気量=マフラーから出る排出ガス量と考えている人がいますが、そうではありません。
排気量とは、エンジン内部での燃焼に用いられるシリンダー容積の合計です。
排気量は車検証で確認することができ、2,000ccといった感じで記載されています。
出力に大きく影響するため、排気量が大きいほどエンジンの回転数をあげずにパワーを出すことが可能であり、排気量が多い車両では登板や合流の際の急な加速でもスムーズな運転ができるようになります。
関連記事:トラックの排気量は?サイズごとの排出量や税金をわかりやすく解説
国内トラックメーカーの馬力や排気量を比較
国内の大手メーカーのトラックを比較していきます。
日野「プロフィア」
トラッククラスのラリー選手権もあるパリ・ダカール・ラリー。
日本車の大型車メーカーで唯一参戦している日野ですが、その技術を市販トラックにも生かしているためとても性能が良いです。
プロフィアトラックは通常の13Lエンジンと、ダウンサイジングした9Lエンジンがあり、
9Lエンジンは馬力と低燃費性を両立しているトラックになります。
トラックは馬力が重要ですが、この9Lエンジンはエンジンをダウンサイジング化できたことにより運転の快適性はそのままに燃費が向上し、ガソリン代を節約できるため、事業者のことを考えられたトラックになります。
9L エンジンのスペックはこちら:
- 排気量9L(8,866cc)
- 最大出力(馬力)279kW(380PS)/1,700rpm
- 最大トルク1,765N・m/1,100~1,400rpm
13Lエンジンのスペックはこちら:
- 排気量:13L (12,91cc)
- 最大出力(馬力):302kW(410PS)/17,00rpm353kW(480PS)/1,800rpm
- 最大トルク:1,961N・m/1,100rpm~2,157N・m/1,500rpm
2つのトラックを比べると、エンジンの排気量を4L分小さくしただけなのに、出力は約8%,トルクは約10%しか落ちてないことがわかります。
これだけの出力低下で燃費代が安くなるのを考えると、物流費が高騰している今を考えると燃料費の節約できるオススメのトラックと言えるかもしれません。
また、13Lエンジントラックでも、少ない回転数で大きなトルクを引き出せるのが特徴であります。
UD「新型クオン」
UDトラックスはこの後説明します「アイアンナイト」を開発したボルボの子会社で、主には日本でトラックやバスの製造、ボルボ製品の輸入をしております。
UDは"Ultimate Dependability"(究極の信頼)を意味しております。
そのUD社のトラック「新型クオン」ですが、
11Lエンジンスペックは下記になります。
- 排気量11L
- 最大出力(馬力)309kW(420PS)1600RPM-339kW(460PS)1800RPM
- 最大トルク1900N・m
8Lエンジンスペックはこちら
- 排気量8L(cc)
- 最大出力(馬力)263kW(357PS)2200RPM
- 最大トルク1428N・m
日野の「プロフィア」と比べると排気量は少ないですが、最高出力と最大トルク共に負けてないので、性能の良いエンジンを搭載していることがわかりますね。
またUDのトラックはATを採用することによって、なめらかな運転も実現してます。
関連記事:UDのトラックの車種や特徴は?気になる内装も解説!
いすゞ「ギガ」
いすゞは1916年創業の会社で過去には乗用車を作っていましたが、現在ではトラックやバス等を主に製造している会社になります。
国内の大型トラックメーカーで初めて、ミリ波レーダーとカメラによる安全装備を備え、トラック業界でも安全装置の先駆け的な会社になります。
ギガのスペックは下記になります。
- 排気量9L(9839cc)
- 最大出力(馬力)279kW/380PS 1800rpm
- 最大トルク1814N・m 1000-1200rpm
排気量が同等の日野のプロフィアと比べると、最大出力も最大トルクもほぼ同等になります。
ウェブサイトをみてみますと、常用使用の中で使用率の高いエンジンの回転域のでの燃費性能向上に力を入れてます。また、電子制御によりエンジンへの燃料噴射を制御しているので、燃費性能の良いトラックと言えそうです。
また、車体の流体にも力を入れており、側面の空気抵抗を減らす車体デザインを採用しています。
トラックは風の抵抗を直に受けやすいので、少しでも燃費向上のために貢献してくれるのは嬉しいですね。
関連記事:いすゞのトラックの特徴と種類を徹底調査!中古の価格相場も解説
三菱ふそう「新型スーパーグレート」
三菱ふそうは現在はドイツの自動車メーカーのダイムラーの子会社となっております。
主にトラックやバスを製造しております。
新型スーパーグレートのスペックはこちら
排気量11Lエンジンスペック
- 排気量10.7L
- 最大出力(馬力)315kW 428PS 1600PRM
- 最大トルク2100N・m /1100RPM
排気量8Lエンジンスペック
- 排気量7.7L
- 最大出力(馬力)260kW 354PS 2200PRM
- 最大トルク1400N・m /1200~1600RPM
2つのエンジンともアイドリングストップ&スタート機能を備えており、燃費向上をはかっております。
また、7.7Lエンジンは低速域で使用する小型ターボと通常走行時に使用する大型ターボの2種類のターボを搭載する、「2ステージターボ」を採用しており、小型エンジンだとは思わせないトルクと高出力を実現させてます。
10.7Lモデルトラックでは「アシンメトリックターボ」を採用しており、高過給と高EGRを両立でき、燃料とアドブルーの消費を抑え燃費向上を実現しています。
また、排気量10.7Lトラックのスペックを他の4車種と比較すると、日野のプロフィアの排気量13Lトラックよりも排気量が少ないにもかかわらず、最大出力(馬力)と最大トルクが大きい事がわかります。
関連記事:三菱ふそうのトラックの特徴や種類は?中古価格も調査!
海外トラックメーカーの馬力や排気量について
世界では最高記録目指したこのようなトラックまで存在します
北欧スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」は小型車からトラックまで様々な車種を製造しているメーカーです。
そのボルボが製造したトラック「アイアンナイト」はトラック界の世界最速トラックです。
排気量は13Lと日野のプロフィアと変わりませんが、なんと、馬力は2400PSと6倍以上です。
そして、0-100km/hの加速は4.6秒ととても早いです。(0-100k/mの加速とは、停止時から、時速100kmの加速の速さを指します。)
どれぐらい早いかというと、一般的に、乗用車の加速は0-100km/hで平均10秒ほどが目安と言われています。スポーツカーである日産 フェアレディZ バージョンSTが5.1秒ですのでトラックがスポーツカーの記録を大きく上回ってます。
また、最高速度も276km/hと街中を走っているトラックと比べても桁違いに速いですね。
トラックの選び方:馬力やトルクについて
今日では、物流コストの削減が求められており、各配送会社ともにしのぎを削っております。しかしながら、燃料費の増加に伴い、各社の経営を圧迫する事態にもなっております。そんななか、上記にスペック比較した様に排気量が少ない、そして燃費性能が良いエコなトラックが人気となっています。
大きい排気量はエンジン性能が高い
トラックの排気量が大きいと燃料も大量に消費します。
しかしながら、基本的なエンジンの性能が排気量の小さいトラックに比べて高いので、少ないエンジン回転数で運行することができます。エンジンの回転数を抑えられると使用する燃料も少なくなるので、エコなトラックの運行につながります。
もちろん、最大性能が高いトラックなので、トルクや馬力も十分確保でき、パワー不足になることもありません。
大型トラックのエコエンジンがトレンドになっている
最近では10Lを切る排気量の少ないトラックがトレンドとなっております。やはり、排気量が大きい=使用する燃料が多いので各社とも小型エンジンを開発・導入しております。
小型エンジンにすることにより、エンジンスペースの小型化やエンジンの軽量化になり、貨物積載のスペースを増やしたトラックやエンジンの軽量化によってトラックの基本重量が下がる事により、より多くの貨物を搭載できたりと、メリットが数多くあります。
また、排気量が少なくなる事により燃料費が下がります。
数多くのトラックを運行する配送会社にとっては、少しの軽量化や少しの燃費向上、使用燃料の削減はとても大きな影響を及ぼしそうです。
エコエンジンは燃費がよく性能が高い
エコエンジンのトラックは燃費が良くて搭載量が増えていい事づくしなのはわかりましたが、エンジン性能どうなのでしょうか。
その点ももちろん問題なく、各トラックメーカー共に様々な開発を行なっております。
例えば、三菱ふそうの新型スーパーグレートでは、エンジンの出力不足を防ぐため、低速域用と高速域用の2つのターボを搭載し、各速度域での出力不足問題を解決しており、ドライバーにとっても運転しやすいトラックになります。
また、日野のプロフィアもダウンサイジング化したにも関わらず、スペックからしても13Lエンジンモデルに引けを取らないスペックになっており、各社とも単にエンジンサイズを小さくするだけではなく、サイズを小さくして、かつしっかりと馬力やトルクを出せ、ドライバーにも安心して運転してもらえる様なトラックを開発してる事がわかります。
トラックの馬力についてのまとめ
トラックの馬力について紹介しましたがいかがでしたでしょうか。トラックの「馬力」はやはり重要項目ですが、馬力だけではなく「トルク」や「回転数」もトラックの性能を考える上では重要項目です。また、最近では排気量の少ないトラックが登場したり、エンジン性能だけでなく、トラックの流体構造まで研究をし、なるべく無駄を省け燃料費を抑えようとしているトラックまで登場しています。
皆さんも、本ページを参考に様々なトラックを比較してみてはいかがでしょうか。
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