建設業界は男性社会のイメージがありますが、近年は女性建築士も増えています。今回は、女性が建築士として活躍するのに必要な情報をまとめました。
女性建築士の割合
建設業界における女性の割合はここ数年、増加傾向にあります。
- 2018年:20.5%
- 2019年:19.4%
- 2020年:30.5%
2019年に一度低下しているのは、コロナの影響で現場に出たり人と直接、接したりする仕事が減ったためと考えられます。しかし、2020年には30%にまで増加しています。
建築士の仕事の中にはフルリモートでできる業務もあるため、そういった仕事に就く人が増えて2020年には回復したのかもしれません。
女性が建築士として働くことについて、徐々に現場での理解が浸透しつつありますが、まだまだ多くありません。職場によってはトイレや更衣室が男女別になっておらず、男性用しかないということもあるでしょう。
ただ、今後はニーズの高まりに伴い、より一層理解が進んでいくと予想されますので、競合相手の少ない今のうちから経験を積んでおくのも1つの手です。
女性建築士の需要がある3つの理由
女性建築士は、建築士としての需要とは別に、男性とは違う需要もあります。ここでは、女性建築士特有の需要を3つ紹介します。
- 少子高齢化で人手不足になっている
- 女性ならではの視点が活かせる
- 女性顧客が話しやすい
少子高齢化で人手不足になっている
現在の日本は少子高齢化が進んでおり、建築業界でも人手不足が続いています。そのため、男性建築士だけでなく、女性建築士の採用も促進されているようです。
女性ならではの視点が活かせる
女性の社会進出は進んでいますが、それでもやはり仕事や家事・育児に関する価値観は未だに男女で差があります。建設業界は元々男性社会だったこともあり、女性特有の価値観や考えはあまり考慮されてきませんでした。
しかし、戸建て住宅の設計などでは、女性の家事や育児の経験を活かせる場面が多いでしょう。特に、妊娠中の方の気持ちや苦労は妊娠したことのある女性にしかわからないため、そういった経験のある人が職場にいるだけで、より女性にやさしいデザイン設計が期待できます。
また、女性がよく行くお店(美容室、下着店など)のデザインは、男性では十分にできないこともあります。
女性建築士の中には、この点で差別化を図り、独立する人もいるようです。
女性の顧客が話しやすい
女性の社会進出が進むにつれて、建築士も女性顧客と話す機会が増えていると考えられます。男性建築士ばかりだと女性顧客は話しづらく、また女性の特有の心理やニーズをつかみにくいです。女性建築士がいれば女性顧客のニーズにも配慮でき、顧客満足度が高くなるでしょう。
一級建築士の女性の年収
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2019年における一級建築士の収入は以下の表の通りとなっています。企業規模によって5万円ほどの差がありますが、いずれも平均以上の収入です。
今後、世の中の女性建築士に対するニーズが増え、建築会社が女性をより多く採用するようになると、さらに年収が上がる可能性があります。
きまって支給する現金給与額(千円) | ||
企業規模 | 女性 | 男性 |
10人以上 | 391.6 | 473.0 |
1000人以上 | 441.9 | 582.6 |
参考サイト:e-Stat
関連記事:【2024年最新】建築士の平均年収はいくら?一級建築士の年収ランキングも紹介
建築士に向いている女性の性格3選
建築士は事務作業が多い職種であるとはいえ、男性の多い職種であることは間違いありません。そのため、他の事務職とは違った「建築士に向いている人の特徴」というものがあります。
ここでは、建築士に向いている女性の特徴を3つ紹介します。
- 建築関係に興味がある
- 責任感がある
- 人をよろこばせるのが好き
建築関係に興味がある
建築・建設関係に強い興味を持っていなければ、建築士として働き続けるのは難しいでしょう。また、一級建築士などの難関国家資格に合格するための勉強も、興味がなければ続きません。
責任感がある
建築士が作るのは住宅やオフィスビル、学校、工場など、人の生活に密接にかかわる建物です。万が一、設計ミスや不備があると大きな問題になりかねません。トラブルを避けるためにも、責任感を持って丁寧に仕事できる人材が求められています。
人をよろこばせるのが好き
責任感を持っているのと同時に、人を喜ばせるのが好きなことも建築士に求められる要素です。建築や建設は、自己満足で終わらせてはいけない仕事だからです。単に「責任感」だけでやっていると疲弊してしまいます。やはり、人をよろこばせることが好きな人の方が向いていますし、やりがいも感じられるでしょう。
女性建築士として働く3つのメリット
女性が建築士として働くことには、男性建築士とは違うメリットがあります。ここでは、主なメリットとして次の3つを紹介します。
- 一般より高い年収で働ける
- 家事や育児を生かした設計ができる
- 女性ならではの視点を活かした設計ができる
一般より高い年収で働ける
建築士は他の職業と比べると年収が高くなる傾向にあります。資格取得までの勉強に時間や費用はかかりますが、長期的に見ればほぼ確実にプラスになりますから、思い切って始めて見るのも良いでしょう。
家事や育児を生かした設計ができる
女性の社会進出に伴って男性が家事や育児をする機会が増えていると言われていますが、まだまだ女性が家事や育児をする機会も多いです。家事や育児の経験も、建築設計に活かすことができます。
最近では、男女問わず、家事や育児をする機会が増えていますが、たとえば、子育てする中での発見や、ママ友などの会話で気付いた課題などから設計のヒントになることもあるでしょう。
女性ならではの視点を生かした設計ができる
家事をしやすい動線づくりや、子どもにやさしい環境づくりなど、やさしい色合いや雰囲気など感性を活かしながら業務にあたることができます。
関連記事:建築士とは?仕事内容や資格の種類、主な就職・転職先を解説
女性建築士として働く3つのデメリット
女性が建築士として働くことはメリットばかりではなく、注意しなければならないデメリットもあります。
- ライフステージの変化に伴い、休暇が発生する
- 男性社会でのコミュニケーションが大変
- 子育てや介護の両立が大変
ライフステージの変化に伴い、休暇が発生する
建築士の仕事の多くは在宅でできるものではありません。また、ある程度土地勘や地理感も必要です。そのため、結婚などで引っ越したときや妊娠・子育てなどの際は一時的に休職したり、新たな職場を探したりする必要が出てくる場合もあるでしょう。
男性社会でのコミュニケーションが大変
女性建築士が増えているとはいえ、まだまだ男性が多いのが建築業界です。男性社会において数少ない女性がコミュニケーションを取るのは大変な場合があります。特に、女性特有のライフスタイルや価値観を理解されにくいケースや、場合によっては受け入れられないことも考えられるでしょう。
子育てや介護の両立が大変
建築士の仕事は、ハードなスケジュールで進むことが多いと言われています。子どもを保育所に預けて復職したとしても、子育てが終わるわけではありません。また、年齢によっては親の介護をしなくてはいけなくなる可能性もあります。家庭の事情を考慮しながら仕事を両立することに難しさを感じる方も多いようです。
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女性建築士が勤務する際の服装3パターン
女性建築士の服装は勤務先によって大きく次の3パターンに分けられます。
- 建築会社に勤務する場合
- 大手設計事務所に勤務する場合
- 一般的な設計事務所に勤務する場合
建築会社に勤務する場合
会社で決められている作業服や制服を着ることが多いです。作業着を着ることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、最近では着用しやすいデザインの制服を用意しているところも増えています。
大手設計事務所に勤務する場合
大手の設計事務所の場合は作業着や制服とは別に、スーツの着用が必要になることもあります。特に、クライアントとの打ち合わせに参加する人は、あらかじめ用意しておくと良いでしょう。
一般的な設計事務所に勤務する場合
中小の設計事務所では、比較的自由な服装が認められていることが多いです。ただし、TPOや社会人としての常識などは踏まえるようにしましょう。
関連記事:
・建築士はどんな仕事?建築士の仕事内容と1日のスケジュールを紹介
・建築士に独学で合格するのは無謀?独学で合格するための勉強方法を解説
女性建築士に関してよくある質問
一級建築士の女性で有名な人はいますか?
一級建築士の資格を持っている有名な女性には、田中道子さんや菊川怜さんなどがいます。
建築科の女子の割合はどの程度になりますか?
建築科は理系の学科の中でも特に女性に人気の学科です。近年は人気も高まっており、30%程のようです。
参考:朝日新聞 Thinkキャンパス 女子人気も高まる建築系学部、広がる就職の選択肢
建築士の給料は男女で差がありますか?
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2019年における男女それぞれの一級建築士の給与額は以下の通りです。年齢や勤続年数、企業規模などによって異なりますが、数万~10万円程度の差があるようです。
きまって支給する現金給与額(千円) | ||
企業規模 | 女性 | 男性 |
10人以上 | 391.6 | 473.0 |
1000人以上 | 441.9 | 582.6 |
参考:e-Stat
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・建築士・建築家・設計士の違いは?やりがいと仕事内容を詳しく解説
・建築施工管理は女性でもなれるのか?メリット・デメリットも紹介
女性建築士についてのまとめ
今回は、女性建築士について解説してきました。少しずつ増えているとはいえ、まだまだ男性が多い状況です。女性が建築士として働くことのメリットや大変なことを踏まえて、ぜひ就職先の候補に入れてみてはいかがでしょうか。
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