建築業界にはさまざまな職種がありますが、建設工事現場に欠かせない存在となるのが「建築施工管理」の仕事です。
建築施工管理は、文字通り建築工事において施工管理をおこなう仕事となります。
建築工事現場で働く人はほとんどが男性ではありますが、女性でも建築施工管理の仕事に就きたいと思う人も中にはいるでしょう。
今回は女性が建築施工管理を目指すことについて、詳しく解説します。
この記事のまとめ
- 建築施工管理の仕事は女性でも従事できる
- 女性が建築施工管理技士を目指すには事前準備が必要
- 女性の建築施工管理技士は全体の5%
建築施工管理の仕事は女性でも可能
建築工事と聞くと男性の仕事をイメージする方がほとんどではないでしょうか。
しかし、建築施工管理の仕事は女性でも従事することができます。
国土交通省が公表した「平成29年建設業活動実態調査の結果」によると、建設業界で働く女性の比率は以下の通りです。
【総合建設業】
男性:108,392人(84.3%)
女性:20,117人(15.7%)
【総合建設業・技術職】
男性:74,463人(95.18%)
女性:3,773人(4.82%)
建築施工管理業務が含まれる総合建設業・技術職では女性が全体の約5%とかなり少ないことが分かります。
建築業界で働く女性が少ないのは、以下のような理由が考えられます。
- 労働環境が過酷
- 男性中心の業界文化で参入しにくい
このような建設業界の現状を解消するため、日本建設業連合会では建設業界で働く女性の総称を「けんせつ小町」として、さまざまな活動を行っています。
まだまだ建設業界における女性の比率は少ないと言えますが、今後改善が進み建築施工管理の仕事も含め、更に女性が働きやすくなっていくと予想されます。
関連記事:施工管理の仕事は未経験の女性でもなれる?メリット・デメリットについて解説
女性建築施工管理者の業務内容
建築工事の現場では重機を操作したり、材料を運んだりしている職人が多く働いています。
そのため建築工事の仕事は力仕事が多いイメージを持たれがちですが、施工管理の仕事に力仕事はありません。
建築施工管理は建築工事現場で現場監督・現場代理人と呼ばれる仕事を担当します。
建築工事が計画通りに進み完了するように、あらゆる視点から工事のチェックを行い管理しなければなりません。
建築施工管理の業務内容は多岐に渡りますが、主に4つの管理を建設工事現場で担当します。
施工管理
建設工事が設計図通りに進められて、決められた予算内に収まるように管理を行います。
建設工事の各工程ごとに作業を依頼する協力業者の選定をした後に、着工前に工事の計画についての説明を行います。
現場の状況により解体や掘削などで発生する資材を抑え、なるべく再利用できるように計画し、廃棄物が出る場合には運搬場所を設定しておくのも建築施工管理の仕事です。
工事の途中で設計図の指示に代わる案が出た場合には、設計者に提案して最善の方法で工事が進むように管理します。
安全管理
建設工事では高所作業、重機の側での作業が当たり前のようにあります。
そのため、危険が伴う建設工事には安全管理が欠かせないものと言えるでしょう。
建築施工管理技士は、あらゆる作業現場をチェックしながら危険予知やその周知を行います。
この他にも工事作業員に対する安全教育や関係書類の作成を行い、建設現場全体の安全管理を行います。
工程管理
建設工事の全工程を管理して、工期通りに終わるようにします。
建設工事ではさまざまな工程があるため、各工程の内容を把握した上で作業を担当する職人のスケジュールを組んでいきます。
スケジュールを組み終わったら、作業に間に合うように資材の発注も行わなければなりません。
建設工事のほとんどは屋外での作業となり、工程によっては雨が降ると作業がストップしてしまいます。
また強風の日には安全面を考慮して高所作業は進められません。
このようなイレギュラーが起きた場合にはスケジュールを組み直し、工期に間に合うよう調整したり、依頼主と話し合いをしたりします。
品質管理
建設作業は全て設計図を元に指示され進められていきます。
この中で建築施工管理技士は予算に合わせた材料を決めて、仕上げの程度や精度の目標を計画します。
設計図だけでは伝わらない箇所もあるため、必要に応じて直接職人に分かりやすく指示を出さなければなりません。
どうしても設計図通りに進められない箇所や工程が出てきた場合には、建築士や依頼主と話し合いを行い、最善の方法を検討していきます。
これらの管理は知識や技術があれば成り立つわけではありません。
多くの協力業者や職人が働く中で適切な指示を出しつつ、良好な人間関係を保つことも建築施工管理の大切な仕事の1つと言えるでしょう。
関連記事:施工管理がきつい・大変と言われる理由|派遣はやめとけ?
女性が建築施工管理者をやる2つのメリット
建築施工管理技士は男性向けの仕事とは限らず、女性が従事するメリットもあります。
- 男性よりも適性が高い可能性がある
- 長期で休んでも復帰しやすい
この2つのメリットについて詳しく解説していきます。
男性より適性が高い可能性がある
建築工事における管理はリスクや危険の予知がとても大切です。
この点に関しては女性ならではの目線で、男性には気づきにくい危険な箇所を指摘できることがあります。
スケジュール管理に関しても、細かい気配りにより、男性の建築施工管理技士以上に力を発揮するケースも珍しくありません。
工事を円滑に進めるために欠かせないコミュニケーション力も、話すのが好きな女性であれば十分仕事に活かすことができるでしょう。
長期で休んでも復帰しやすい
建築施工管理の仕事は、数年単位でやり方が変わることはありません。
建築士の作成した設計図を元に建築工事を行い、4大管理を行うため、仮に産休・育休などで数年仕事から離れたとしても復帰しやすい職種と言えるでしょう。
また、建築施工管理の役割は建築工事に欠かせないため需要が非常に高く、今後も下がることはないでしょう。
過去に建築施工管理の経験や資格を保有していれば、別会社への再就職も難しくはないと考えられます。
関連記事:建築施工管理の仕事がきつい・辛い8つの理由とは?解決方法も解説
女性が建築施工管理者をやる2つのデメリット
女性が建築施工管理の仕事に従事する場合、メリットだけではなくデメリットもあります。
- 体力的にきつい可能性がある
- 労働環境が良くない可能性がある
この2つのデメリットについて解説していきます。
体力的にきつい
建築施工管理技士は建築工事現場で作業することはありませんが、現場全体を歩いて作業をチェックしていきます。
建物によっては階数が高く、エレベーターがない状態で各フロアを行き来しなければなりません。
また、工事全体をチェックした後には報告書類等の作成も行うため、残業となることも珍しくありません。
最近では建築業界全体が人手不足と言われており、残業だけではなく休日出勤もしなければいけないようなケースもあります。
毎日歩き回り、長時間の拘束が続くと体力的についていけない方も中にはいるでしょう。
労働環境がよくない
建築工事現場は男性作業員がとても多く、女性に配慮していない現場も珍しくありません。
女性専用の更衣室がなかったり、トイレが用意されていなかったりすることもあります。
このような職場環境を気にする女性にとっては、毎日が辛く感じてしまうでしょう。
「けんせつ小町」の取組みもあり徐々に改善はしてきていますが、まだまだ不十分な現場も存在します。
関連記事:施工管理をする女性の人が辞めたいと思う4つの理由と具体的な対処法を紹介
建築施工管理者に向いている女性の特徴|3選
女性が建築施工管理の仕事をした場合のメリット・デメリットについて解説してきましたが、向いている女性には3つの特徴があります。
- 細かい配慮ができる
- 論理的思考が得意
- 肝が据わっている
この3つの特徴について具体的に解説していきます。
細かい配慮ができる
細かい配慮ができて、建築工事現場でちょっとした違和感に気づける女性は建築管理の仕事に向いていると言えるでしょう。
建築管理の仕事は、リスクや危険を事前に察知できることがとても重要だからです。
特に建築工事現場では小さなミスが大事故に繋がったり、大掛かりなやり直しとなったりする可能性が高いと言えます。
気づいたことはすぐに報告できるのも、建築施工管理に向いている特徴の1つとなります。
論理的思考力がある
論理的な思考ができる人も建築施工管理の仕事に向いています。
建築工事は1つの建物を完成させるまでにさまざまな工程の作業があり、その全てを把握しながら最善の指示を出さなければいけないからです。
同時進行する作業もあり、これらを全て把握して工期に遅れが出ないようにスケジュールを組んでいく論理的な思考が求められます。
肝が据わっている
男性ばかりの職場で、自分から積極的に指示を出さなければいけない建築管理の仕事は、肝が据わっていないと作業がスムーズに進みにくくなります。
遠慮したり、自分の意見を言い返せないでいたりすると、職人たちから下に見られてしまうこともあるからです。
たとえ職人たちが言うことを聞いてくれなくても、聞くまで徹底的に指導できるくらいの肝の据わった女性の方が、全体の指揮も取りやすくなります。
関連記事:建築施工管理に向いている人の3つの特徴とは?現役の声も紹介
女性建築施工管理者のやりがい
建築施工管理の仕事は業務内容が幅広く、体力も必要で、女性にとっては大変なことばかりです。
一方で大きなやりがいのある仕事でもあります。
工事全体を管理するため大きな責任は伴いますが、建設工事が無事に終わり建物が完成した時には、誰よりも大きな達成感を得ることができるでしょう。
完成した建築物はその後、さまざまな人に利用されていきます。
実際に人々に利用されている光景を見た際には、社会の役に立っていることを実感できるでしょう。
専門職である建築施工管理技士のキャリアを積んでいけば、将来的な仕事の幅も広げられます。
関連記事:建築施工管理のやりがいとは?仕事内容やオススメの資格も紹介
女性建築施工管理者の資格取得に必要なもの
建築施工管理の業務を行う上で資格が必要となるわけではありませんが、主任技術技術者として選任されるには建築施工管理技士の資格が必要となります。
ここでは建築施工管理技士の資格を取得するために必要なものについて解説していきます。
専門知識
建設工事のあらゆる工程をチェックして指示を出すには、関連の専門知識が必須となります。
具体的には以下のような内容があります。
- 建築法規
- 建築設計
- 施工管理技術
- コスト管理
- 建築資材や機械の知識
建築法規では建築に関する規制や法規に精通する必要があります。
設計に関しては、設計図の読み方や建築構造の理解など基礎的な知識が必要です。
コスト管理では、原価計算や具体的なコスト削減策の提案が必要とされます。
コストを上手く管理するには、建築資材や工事に使用する機械の知識も必要です。
実務経験
建築工事は事前に立てた計画通りに進むことはほとんどありません。
工事を進めていく中で天候不良や資材不足など、何かしらのイレギュラーが発生します。
予想できないイレギュラーへの対応方法は、実際に体験してみないと身に付きません。
このような時に、現場監督として指示を出し協力会社のスタッフと一緒に作業を進めていく対応力は必須となります。
これは4大管理全てに当てはまり、あらゆる実務経験を積んでおかなければ、起こりうるトラブルに対し上手に対応することはできないでしょう。
文章能力
建築施工管理技士の試験の中には実地試験の中に記述式の試験もあります。
どうやって問題解決をするのか自分で考えられる経験がないと、合格は難しいと言えるでしょう。
また、過去の経験を元にどうしてほしいのかを伝えられる文章能力(コミュニケーション能力)も必要です。
関連記事:施工管理に向いている人・向いてない人の特徴は?転職失敗しないために知っておくべきこと
女性が建築施工管理者を目指すうえの心構え
男性の割合が圧倒的に多い建築工事現場で、女性が建築施工管理の仕事に従事する場合、女性だからこそ感じる大変なこともあります。
これから建築施工管理技士を目指す際に必要な心構えについて解説していきます。
家族や恋人に反対される可能性がある
建築業界と聞くと、男性ばかりのイメージの他にも「3K(危険、きつい、汚い)」といったイメージもあります。
自分自身は覚悟を決めて目指していても、家族やパートナーに反対される可能性もあります。
なぜ反対なのかを聞いた上で、建築施工管理技士を目指している理由や、気持ちの強さを伝えられるように準備しておきましょう。
女性特有の問題が発生する可能性がある
建築工事現場は男性職員が多いため、女性専用のトイレや更衣室が用意されていないこともあります。
最近では女性でも働きやすい職場環境づくりが進められていますが、全ての工事現場で改善されているわけではありません。
このような女性ならではの問題にどうやって向き合っていくのか、事前に考えておくようにしましょう。
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建築業界は人材不足が深刻であり、建築工事に欠かせない建築施工管理技士も不足している状態です。
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働きやすい環境作りに取り組んでいる会社は、女性でも最初から働きやすい環境が整えられている可能性が高いと言えます。
女性の建築施工管理者に関するまとめ
今回は女性が建築施工管理技士を目指すことについて解説してきました。
建築工事現場はほとんどが男性であり、働きにくいこともありますが、女性でも建築施工管理技士としての活躍は十分可能です。
体力面や人間関係に苦しむ時もあるかもしれませんが、女性特有の視線を活かせれば活躍できる可能性もあります。
資格取得をするまでには、現場での経験を通じてさまざまなことを学ばなければいけません。
それでも自分の意思を強く持ち、勉強と経験を積み上げていけば建築施工管理技士として活躍できるようになるでしょう。
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