機械設計技術者は、機械設計に関する知識や技術を証明できる資格です。
機械設計について学ぶ人を中心に、年々受験者数が増えてきています。
しかしながら、ネット上で資格について検索すると「意味ない・要らない」といった声も見受けられます。
勉強時間を確保しなければならないことから、受験しようか迷っている人もいるのではないでしょうか。
今回は、機械設計技術者資格を取得しても意味ないのか、試験内容も踏まえながら解説していきます。
【この記事のまとめ】 ・機械設計技術者の受験は技術者としての成長に役立つため意味がある ・資格取得できれば転職や昇格にも役立つ ・資格は1~3級に分かれており出題範囲や難易度が異なる ・機械設計技術者以外にも普段の業務に活かせる資格がある |
「機械設計技術者試験は意味ない」は本当か
結論から述べると、機械設計技術者試験は、機械設計者として活躍するうえで大いに役立ちます。
試験では、機械設計に欠かせない知識が幅広く出題されるため、学んだ内容はあらゆる設計職の業務に役立てられます。
ただし、技術者として活躍するには、知識だけでなく設計に関する経験が欠かせません。
資格取得が、設計技術者にとってゴールではないことを理解したうえで、試験に挑戦してみましょう。
関連記事:機械設計に将来性はある?今後の需要や必要とされるスキルとは
「機械設計技術者試験は意味ない」に対する現役の声
ここでは、「機械設計技術者試験は意味ない」という意見に対する現役技術者の声を紹介します。
Kさんの声
たとえば、設計段階で考慮すべき加工法や材料を選ぶときに知識が役立ちます。資格があると技術者としての責任感も出てくるので、現場での対応力が上がったと思います。
Iさんの声
たとえば、図面作成時に必要な精度や加工方法について、より具体的に考えられるようになりました。また、試験を通じて、製品の設計から現場での製造までの一連の流れを意識するようになり、部門間の連携がスムーズになったことを実感しています。
Mさんの声
特に、機械設計の理論だけでなく、実務で応用できる技術が試験内容に含まれており、学んだことがすぐに現場で役立っています。設計段階での強度計算や材料選定がスムーズに行えるようになるなど、作業効率が向上しましたね。
機械設計技術者試験に合格するメリット
機械設計に関する幅広い知識や技術を身に付けられる機械設計技術者資格ですが、取得することで他にも、以下のようなメリットがあります。
・知識やスキルが向上する
・会社側に力量を示せる
・昇進や昇給の対象になりやすい
各メリットの詳細について、解説していきます。
知識やスキルが向上する
機械設計技術者試験では、設計職に従事するうえで欠かせない知識について出題されます。
具体的には「材料力学・熱力学・流体力学・機械力学」の4大力学があり、設計の基礎知識として、携わる業種に関係なく活かせる内容です。
「仕事を通じて学べるのでは?」と考える人もいますが、所属する業種に知識が偏ってしまうため、活躍できる範囲が狭くなります。
これから機械設計者を目指す人はもちろん、既に技術者として働いている人も、将来的なキャリアアップに役立てられます。
会社側に力量を示せる
機械設計技術者を取得すれば、自分のレベルを周りに証明できるようになります。
機械設計者として働くうえで必須となる資格はなく、各技術者のレベルを明確にはできません。
機械設計技術者は、1級・2級・3級に分かれており、それぞれで細かくレベル設定されています。
そのため、資格取得により自分の実力を形として証明できるようになり、就職の際にも評価してもらいやすくなります。
昇進や昇給の対象になりやすい
資格取得すれば、技術者としての実力を証明できるため、社内での評価を得やすくなります。
資格手当を支給している企業も多く、すぐに収入を上げることも可能です。
3級は、基礎知識を有していることの証明になり、採用試験などでも役立ちます。
2級は、機械設計業務を任せられるレベルであり、一人前の技術者であると言えるでしょう。
1級は、機械設計分野における最高位の資格であり、社内での評価を得られるだけでなく、より好待遇な企業への転職も可能となります。
機械設計技術者試験の概要と求められること
ここからは、機械設計技術者試験の詳細について解説していきます。
試験の概要や目的など、詳しく紹介していきますので、自分の実力に合った試験の受験を検討してみましょう。
機械設計技術者試験の概要
機械設計技術者試験とは、機械設計に関する知識や技術を証明するためのもので、一般社団法人「日本機械設計工業会」が管轄しています。
出題レベルによって1級〜3級に分かれており、試験は年に1回、11月下旬ごろに実施されます。
機械設計技術者試験の種類
機械設計技術者試験は、1級〜3級に分かれており、試験内容や受験資格が異なります。
機械設計技術者試験・3級 | 試験の詳細 |
出題レベル | 機械工学の内容を中心に基礎的な知識が問われる。
試験は前半と後半に分かれており、各2時間ずつで試験が実施される。 |
出題範囲 | 機械要素設計/機構学/制御工学/機械力学/流体・熱工学/材料力学/制御学/工作法/機械製図 |
受験条件 | 特になし |
試験合格率(令和5年度試験) | 47.1% |
合格必要な勉強時間 | 150~300時間 |
3級試験は、機械設計の入門資格ということもあり、機械系の学校を卒業していない未経験者でも受験できます。
機械設計技術者試験・2級 | 試験の詳細 |
出題レベル | 基礎設計に基づいて機械や装置の構造や機構などの具体化を図る、計画設計業務をこなせるレベル |
出題範囲 | 力学分野/機械設計分野/材料・加工分野/流体・熱分野/環境・安全分野/メカトロニクス分野/総合・応用 |
受験条件 | ・3級合格者は2~4年(学歴による) ・無資格者は3~7年(学歴による) |
試験合格率(令和5年度試験) | 40.8% |
合格必要な勉強時間 | 300~400時間 |
機械設計技術者試験・1級 | 試験の詳細 |
出題レベル | 機械や装置の基本仕様を決定するために必要な構想図の作成や、計算を問題なく進められるレベル |
出題範囲 | 設計管理関連/機械設計基礎/環境経営関連/実技課題 |
受験条件 | ・2級合格者は次年度から受験可能 ・無資格者は5~10年(学歴による) |
試験合格率(令和5年度試験) | 36.4%% |
合格必要な勉強時間 | 400~600時間 |
勉強時間に関しては、受験者のレベルによるため一概に言えません。
現役の技術者の中には、200時間ほどの勉強で取得できたといった声もありました。
参考:機械設計技術者試験とは|一般社団法人 日本機械設計工業会
機械設計技術者試験の目的
機械設計技術者試験は、技術者のスキルを正確に評価し、社会的な地位や能力の向上を図ることを目的としています。
また、機械産業の発展に貢献する目的もあり、多くの企業で採用や昇格に置いて利用されています。
機械設計技術者試験の対象者
機械設計技術者試験の対象者に明確な範囲はなく、3級試験であれば未経験者でも挑戦できます。
受験者として多いのは、機械設計技術者を目指す学生で、2級・1級に関してはキャリアアップを目指す現役の技術者が多く受験しています。
機械設計技術者試験の合格に必要な知識
機械設計技術者試験は、設計に関する基礎知識を幅広く身に付けていなければ合格できません。
ここでは、資格取得するうえで欠かせない知識について、解説していきます。
静力学
静力学とは機械力学の1つで、動かない物体に働く力の釣り合いに関する内容です。
床においたビー玉は、人が触ったり床が揺れたりしない限り、その場にとどまります。
これは、ビー玉に対する重力の強さと、床からの垂直抗力の大きさが釣り合っているからです。
このような力に関して学ぶのが静力学で、試験における自由曲面図・平衡状態・力のベクトルに関する問題を解くために必要な知識です。
力学
機械力学は、機械の動きにより生まれる力に関する内容で、回転運動や往復運動のある機械の設計に欠かせない知識と言えます。
前述した静力学とは別に動力学があり、慣性の法則や運動の法則、作用・反作用の法則などについて熟知しておく必要があります。
材料強度
材料力学とは、機械に使用する材料が外部から受ける力にどのように応答するのかについて学ぶ分野です。
具体的には、物体が変形する際のひずみ・応力・強度・耐久性について学びます。
機械にはプラスチックや金属、複合材といったあらゆる材料が使用されるため、それぞれの強度について熟知しておく必要があります。
流体力学
流体力学では、翼列や噴流、管路といった流体機械に関わる技術や工学知識について学びます。
自動車や飛行機などの設計に例えると、ボディ周りの空気の流れや抵抗を調べるためのもので、空気抵抗を減らし燃費を向上させる技術に活かせます。
気体だけでなく、液体などの流体についても理解しておかなければなりません。
熱伝導
熱力学とは、熱の力学的な働きに関する知識で、どのように熱が機械を動かすエネルギーとなるのか、変換内容などについて学びます。
熱力学を活かせる最も代表的な例が自動車のエンジンで、ガソリンの燃焼によって発生した熱エネルギーを力学的なエネルギーに変換させます。
他にも調理器具やエアコンなど、熱力学が関係しているものは身近にたくさんあり、機械設計に欠かせない力学の1つです。
機械設計技術者試験以外に活かせる資格
機械設計技術者試験について解説してきましたが、機械設計業務に活かせる資格は他にもあります。
・CAD利用技術者試験
・技術士 機械部門
ここでは、2つの資格がどのようなものなのか、解説していきます。
CAD利用技術者試験
CADとは、さまざまな機械の設計や製図をするためのシステムで、2D CADや3D CADがあります。
CAD利用技術者は、CADを用いた設計業務に関する知識やスキルを証明するための資格です。
【CAD利用技術者試験の種類】 ・二次元CAD利用技術者試験基礎 ・二次元CAD利用技術者試験 ・三次元CAD利用技術者試験 |
目指す業種によって活かせる資格が異なりますので、リサーチしたうえで取得に挑戦してみましょう。
技術士機械部門
技術士とは、21の部門から成り立っており、その中の1つに機械部門があります。
機械部門の技術士は、機械設計のスペシャリストとして、設計業務への従事だけでなく、コンサルタントの仕事もこなせます。
五大国家資格の1つに数えられるほど信頼度の高い資格であり、設計士としてキャリアアップしたい人におすすめの資格と言えるでしょう。
関連記事:機械設計エンジニアにおすすめの資格10選|メリットや難易度も
「機械設計技術者試験は意味ない」に関連してよくある質問
最後は、機械設計技術者に関する、よくある質問について答えていきます。
資格の必要性に関する内容ですので、取得するかを決めるうえで参考にしてみてください。
機械設計者として開業するには、機械設計技術者の資格が必要?
機械設計者として独立・開業するうえで、機械設計技術者の資格が必須となるわけではありません。
生計を立てていくためには、資格よりも設計技術者としての経験が重要と言えるでしょう。
ただし、機械設計技術者1級は難易度の高い資格として知られており、取得することでスキルや知識の証明に役立ちます。
顧客からの信頼も得やすくなるため、資格が全く役に立たないというわけではありません。
「機械設計技術者試験は意味ない」についてのまとめ
機械設計技術者の資格は、機械設計に関する基礎を幅広く学べるため、設計技術者として成長するうえで役立ちます。
専門的な知識やスキルを証明できるため、採用試験で評価されやすくなったり、社内での評価を上げたりすることにも役立てられます。
そのため、資格取得に意味がないというのは間違いと言えるでしょう。
1級~3級に分けられているため、自分に合った試験への挑戦を検討してみてください。
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