トラック運転手の仕事に何かしらの不満があり、辞めたいと考えているドライバーは少なくありません。
また「違う業界に行きたい」とは考えていなくても、「別の運送会社で働きたい」と感じているドライバーも多くいます。
とはいえ、何も考えずに転職してしまうと、今よりもさらに苦しい状況になる恐れもあります。
そのような失敗を防ぐためには、どういう時にすぐに辞めるべきかの判断基準を理解しておく必要があるでしょう。
そこで今回は、トラック運転手を辞める判断基準や円満退職する方法、転職先の見つけ方などについて解説していきます。
トラック運転手への転職を検討している方は参考にしてみてください。
トラック運転手はすぐ辞める?運送業界の実態
トラック運転手は本当にすぐ辞めるのか?
実際の離職率やトラック運転手を辞めたくなる理由など、実態について解説します。
運送業界の離職率
厚生労働省が発表した令和2年度の『新規学卒就職者の離職状況』によると、新規学卒就職者(高卒)の就職後3年以内の離職率が高い産業は、以下の通りです。
・宿泊業、飲食サービス業:61.1%
・生活関連サービス業、娯楽業:56.9%
・教育・学習支援業:50.1%
・小売業:47.8%
・医療、福祉:46.2%
運輸業・郵便業の離職率については36.1%となっており、上位ではないものの、約3人に一人が3年以内に辞めている状態です。
なお、全業界における離職の理由としては「収入が少ない」が最も多く、次いで「労働時間や休日などの条件が自分に合わない」といった内容でした。
トラック運転手が辞めたくなる理由
「トラック運転手を辞めたい」と感じる理由は、大きく4つあります。
辞めたい理由①:労働時間や拘束時間が長い
トラック運転手は、オフィスや工場勤務などとは違い、労働時間の大半をトラックの中で1人で過ごします。
そのため、よくも悪くも休憩のタイミングや作業のリズムは自分で決めなければなりません。
指定された配送時間や渋滞などの状況に合わせて臨機応変に調整する必要があるため、自然と労働時間が長くなりがちです。
また、配達先や集荷先の都合で荷物の積み下ろしの順番待ちとなることも珍しくありません。
早く荷物を積み込んで出発したいのに、待たされて出発できず、無駄に拘束時間が長くなることがあります。
辞めたい理由②:労働環境の整備がされていないことが多い
トラック運転手は、天候や交通状況により配達が遅れてしまうことがあります。
このような不可抗力による遅れだとしても、会社によっては到着時間に間に合わないと罰金が発生することがあるのです。
また、職場によっては上司や先輩から叱責されることもあります。
このような状況下で、我慢して働くことが出来ずに辞めたいと感じる人も少なくないようです。
辞めたい理由③:将来の収入面に対する不安
トラック運転手の給料は、一般的な企業と違い、基本給や昇格によりアップして行くということはありません。
所属する企業にもよりますが、給与の中で大きな割合を占めるのが「手当」です。
そのため、どれだけ月に仕事をこなしたかによって給料が大きく変わる特徴があります。若い頃は周りと比べて稼ぎやすいと言えますが、年齢を取るにつれて同じように働くのが辛くなってきます。
「体力的に同じ仕事を続けられないかも」と不安に感じ転職をするドライバーも少なくありません。
辞めたい理由④:慢性的な体調の悪化
トラック運転手の運転以外の仕事としてあるのが「荷物の積み下ろし」です。
パレットなどを使って機械で積み込む分には負担が少ないのですが、手積みの場合は重い荷物をたくさん積み下ろさなければなりません。
また、積み込み時はパレットだとしても、ばらばらの荷物をパレットに荷造りする場合もあります。
運転中に関しても、同じ姿勢で長時間いることから、腰痛などを発症するケースも多いです。
しかし、腰痛になっても休むわけにはいかず、無理を続けた結果、体を壊して仕事を続けられなくなる人もいます。
他にも、取り扱う荷物が医療廃棄物などで、健康被害に対する心配から転職するといったケースもあるようです。
関連記事:トラック運転手の末路とは?運送業が底辺とは言い切れない理由
トラック運転手をすぐに辞めるべき人
トラック運転手の仕事が辛いからといって、転職しても次の職場で必ず理想の働き方ができるとは限りません。場合によっては前の会社よりも環境が悪化する可能性もあります。
そこでこちらでは、「すぐに辞めた方がいい場合」と「すぐ辞めない方がいい場合」、それぞれの判断基準を紹介します。
関連記事:トラック運転手を辞めたい時はどうする?6つの判断基準とは
すぐ辞めることを検討した方が良い場合
すぐ辞めることを検討した方が良いケース①:残業代が出ない
「定時を過ぎても働いているのに残業代が全くでない」といった場合にはすぐに運送業者を変えるか、違う業界に転職した方がいいと言えます。
特に注意が必要なのは、「歩合制だから残業代は出ないのが普通」という慣習が企業に根付いているケースです。
たとえ歩合制であっても、企業は規定の業務時間を超えた部分に関して残業代を支払う義務があります。
歩合制は成果に対する報酬であり、残業代は時間外労働に対する報酬だからです。
また、「待ち時間は何もしてないから残業したことにならない」と言った解釈をする会社もありますが、そちらも大きな間違いです。
「みなし残業に含まれているから残業代は不要」と言われるケースもありますが、明らかにそれ以上に残業をしている場合、企業は残業代を支払わなければなりません。
すぐ辞めることを検討した方が良いケース②:車両の点検などがなく、トラックの修理代が自己負担
商用のトラックは3ヵ月ごとに50項目の点検が定められており、12ヵ月ごとに99項目の定期点検をしなければならないと定められています。
荷物とドライバーを守るこのような定期点検が行われていない会社では、いずれ大きな事故や不祥事が起きてしまう可能性が高いでしょう。
運行中に車両のトラブルで事故が発生し、大きなケガをしては仕事ができません。今後の人生にも大きな影響が出るので、辞めた方がいいと言えるでしょう。
また、近年は減ってはきているものの、事故の修理費用をドライバー本人に負担させるといったケースもあります。
会社で決められた安全運行に関するルールを守らずに事故を起こしたのであれば、請求される可能性はありますが、そうではない場合は会社が保険を使用して直すのが一般的です。
すぐ辞めることを検討した方が良いケース③:とにかく激務で限界を超えている
日常的に労働時間が長すぎたり、体力的に限界だと感じたりする場合には無理をせず辞めた方がいいでしょう。
辛く感じる仕事量や内容は個人差があるので、明確な判断基準はないですが、体を壊しては元も子もありません。
すぐ辞めることを検討した方が良いケース④:とにかく給料が安すぎる
トラック運転手の平均年収は、全年代を含めると420万円前後となっています。
比較的若い年代でも稼ぎやすいと言われており、20代では350万円前後ほどです。
これらの基準よりも明らかに低い場合は、別の運送業者への転職を検討した方がいいと言えます。
参考:全日本トラック教会
すぐ辞めることに慎重になった方が良いケース
次に、不満などがあってもすぐには辞めない方がいい場合を紹介します。
すぐ辞めることに慎重になった方が良いケース①:学歴に自信がなく、具体的な転職先が決まっていない
トラック運転手の仕事は例外ですが、日本の転職活動ではまだまだ学歴を重視する傾向があります。
そのため、もしも学歴に自信がない場合は、学歴を重視せずに採用をおこなっている企業を事前に調べておく必要があるでしょう。
具体的な転職先の候補がない状態で辞めてしまうのは、経済的なリスクが伴います。衝動的に辞めることは極力避けましょう。
すぐ辞めることに慎重になった方が良いケース②:働き始めたばかり
働き始めたばかりで、まだ仕事に慣れていない場合もすぐに退職を考えるのはよくありません。
どのような職業であっても、始めの頃は仕事に慣れておらず、辛く感じるのが当たり前です。
仕事をはじめて1ヵ月も経っていないのであれば、もう少し辞めるのを後にした方がいいかもしれません。
どうしても耐えられない場合は、職場の先輩などに相談してから考えるようにしましょう。
すぐ辞めることに慎重になった方が良いケース③:今の状況が一時的である
トラック運転手には、配送する商品などによって繁忙期があります。
今は忙しくて辛いかもしれませんが、辞めるかどうかを判断するのは繁忙期が終わってからでも遅くありません。
どうしてもすぐに決断したいという場合には、職場の先輩に繁忙期以外の期間の業務量について確認をしてから判断するといいでしょう。
すぐ辞めることに慎重になった方が良いケース④:明確に辞めたい理由がない
このケースはトラックドライバーに限った事ではないのですが、仕事に慣れてある程度働き続けていると仕事に飽きてくる場合があります。
トラックドライバーの仕事は特に、荷物を積み込んで配達することの繰り返しになるため、仕事を覚えやすい一方で、飽きやすい面もあります。
ですが、作業内容に慣れること自体は、どのような職業でも起き得ることであり、次の職場にいったからといって解消できるかはわかりません。
「なんとなくだけど辞めたい」といった感じで考えている場合には、本当に辞めるべきなのかもう一度冷静に考えた方がいいでしょう。
仕事を辞めるべきか悩んでいる時は、一人では判断できないこともあります。
なるべく経験豊富な先輩や親などに相談して意見を募ってみるといいでしょう。
関連記事:【運送業の実態】ドライバーの離職率は高い?原因と現場での対策
トラック運転手をすぐに辞めるのが難しいとき
すぐに辞めたくても、何らかの事情で辞められない人もいるでしょう。
そこでこちらでは、そのような場合の対処方法を紹介します。
弁償金がある場合
運送業者の中には、積載した荷物を壊してしまったり、事故により車両が故障したりした時に、その修理代を社員負担にしている場合があります。
このようなことが原因で会社に借金があり、辞めたいのに辞められないドライバーもいます。
ただし、弁償金に関しては労働基準法で「会社側は社員の借金を理由にして退職を拒否したりすることはできない」と明確に定められています。
借金自体は退職後に返済をすることが可能なので、まずは弁護士に相談して会社側と話し合いを行うことから始めてみましょう。
なお、トラックを壊した際の修理費用は、会社が加入している車両保険から支払われるのが一般的です。そのため、社員に返済を求めることは基本的にできません。
仮に故障や事故の原因が社員にあった場合も、過失の程度によっては無効となる可能性があります。
また、過失が重い場合であっても、すべての損害請求を社員に求めることはできません。
法的な根拠を提示し、会社と話し合いをするのが妥当です。
引き止められている場合
会社を辞めると伝えたにも関わらず、先輩や上司から「今は忙しいからもう少し待ってほしい」「そんな考えは通用しないし認めない」といった感じで引き止められることがあります。
しかし、このような引き止め行為は民法で禁止されています。民法第627条で定められている内容は以下の通りです。
民法第627条:当事者が雇用の期間を定めていない場合は、いずれも解約(退職)の申し入れをすることができる。この場合、雇用は解約の申し入れから2週間後とする。
つまり、民法上では退職の意思を伝えてから最短で2週間後には退職ができます。
ただし、契約社員や派遣社員のように、契約期間が決まっている場合は別なので注意が必要です。
また、民法第628条では「やむを得ない事由」がある場合は即日で退職も可能と定められています。
やむを得ない事由とは、本人や家族の体調不良で看病などが必要であり仕事を続けるのが困難な場合です。
他にもパワハラやいじめなども該当するため、職場でこのような行為を受けている場合には即日退職もできます。
トラック運転手を円満かつすぐに辞める方法
こちらでは、不要な摩擦やトラブルを避け、トラック運転手を円満に辞める方法について解説します。
タイミングに配慮する
民法上の解釈では、最短で2週間前に退職する旨を伝えれば問題ありません。
しかし、担当している業務の引き継ぎや新しい人材の確保にはそれなりの時間が必要です。
社会人のマナーとして、遅くとも3か月前には意思を伝えるのが妥当と言えるでしょう。
退職の意思を伝えた上で、会社側からもう少しだけ伸ばしてほしいと言われた場合には、可能な範囲で応えてあげるのもいいでしょう。
また、会社によっては就業規則で「辞める際は〇ヵ月までに伝える」などの決まりがある場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
理由の伝え方を工夫する
退職したい理由が収入、長時間労働、拘束時間に対する不満であったとしても、本音と建前を使い分け、なるべく前向きな理由を伝えるようにしましょう。
退職する理由として不満をあげてしまうと、険悪な雰囲気の中で退職せざるを得ないためです。
「新しい環境で自分を試してみたい」、「結婚で生活環境が変化したため」などの当たり障りのない理由が妥当です。
なお、退職する旨を伝える際には、メールや電話ではなく直接伝えるようにしましょう。
有給消化と未払金精算をする
辞める際には、きちんと有給消化や未払い金の精算をおこなうようにしましょう。
忙しくて会社や先輩に迷惑をかけるからと、有給が残っているのにそのまま消化せずに辞めようとする人がいますが、気にする必要はありません。なぜなら有休消化は会社員の権利だからです。
また、残業代などの未払いがある場合も、過去2年間までさかのぼって請求できると定められています。
未払いがある場合は、なるべく辞める前に話し合って支払ってもらうようにしましょう。
後になって話を掘り返すのはお互いバツが悪くなる可能性があるので、退職前に自分から話を切り出すことをオススメします。
退職代行サービスを利用する
会社との関係性が良くない場合は、「退職代行サービス」を利用して退職の意志を伝えるのも一つの方法です。
退職代行サービスとは、名前の通り退職に関する作業の全てをあなたの代わりに専門のスタッフが進めてくれます。
そのため、依頼後は家で待機しているだけで交渉が進み、上司などと直接話すことなく、仕事を辞めることが可能です。
仮に上司から連絡がきても応答する必要はないので、精神的な負担を最小限に抑えられることがメリットと言えます。
退職代行業者は無料相談を受け付けていることがあるので、興味がある場合はまず相談してみるといいでしょう。
トラック運転手が転職先を選ぶ際の注意点
最後に今の会社を辞めて、転職先を選ぶ際の注意点について解説していきます。
雇用形態に問題はないか?
まず一つ目が、雇用形態のチェックです。
給与額はもちろん、残業代や手当、賞与の有無についてチェックしておきましょう。
特に残業代は待機時間やみなし残業など、企業によってルールが異なるので、面接時などに確実に確認することをオススメします。
勤務時間に関しても、求人情報には正規の労働時間しか掲載していないケースがほとんどですので、月の平均残業時間や繁忙期の有無など、できる限り細かく確認しておきましょう。
福利厚生も大切なチェックポイントです。
家族がいる場合は家族手当や住宅手当の有無、独身の場合は寮の有無などを確認しましょう。
また、今後新たに免許や資格の取得を検討している場合は、資格取得支援制度の有無、働きながら資格が取れるかなど、事前に確認するといいでしょう。
信頼性の高い企業か?
転職先を選ぶ際には、社員の待遇だけでなく、企業の信頼性についてもチェックしましょう。
1つは、仕事の受注先です。運送業者は荷主と直接契約している場合もあれば、下請けやさらにその下請けばかりを請け負っている場合もあります。
下請けが多い会社は利益が出にくく、労働環境が悪化しやすい傾向があるので、注意が必要です。
また、安全対策への取り組み方もチェックしたいポイントの1つです。
ドライブレコーダーの設置や安全管理マニュアルの策定など、ドライバーの安全管理をしっかり行っているか、確認しておくようにしましょう。
さらに、車両の状態も会社の信頼性を測る上で重要な指標です。
洗車が全くされておらず、タイヤの溝が少なかったり、ひび割れていたりするトラックが多いと、普段の点検業務やメンテナンスがおろそかにされている可能性が高いでしょう。
可能であれば、なるべく車両の状態を確認させてもらうことをオススメします。
業務内容は自分の希望通りか?
業務内容が自分の希望に合っているかを確認しておきましょう。
例えば、長距離配送が嫌で別の運送業者に転職する場合、後で長距離配送に異動させられる可能性がないかを確認する必要があります。
他にも勤務時間や残業時間、積み込む貨物が手積みでないかどうか、将来的に乗車する車両を大きくできるかどうかなど、業務内容を細かく確認しましょう。
これらの条件に関しては、なるべく面接時に直接聞くことが大切です。
なぜなら、わざわざ不都合なことを求人情報に載せる企業はいないからです。本当に自分の希望に合っているかどうかを、求人情報だけで判断するのは難しいでしょう。
・雇用形態に問題はないか?
・信頼性の高い企業か?
・業務内容は自分の希望通りか?
転職先を探す際は、以上の3点に注意してみて下さい。
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トラック運転手をすぐに辞めるべき人についてのまとめ
トラック運転手がすぐに辞める理由として、長時間労働や労働環境の整備不足、将来の収入不安、そして体調の悪化が挙げられます。
また、トラック運転手からの転職を考える際は、残業代未払いや車両点検の不備、過度な激務、低給与などが辞める判断基準と言えるでしょう。
しかし、よくない状況が一時的である可能性もあるので、具体的な転職先が未定の場合は慎重になるべきです。
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