管工事施工管理者は管工事に欠かせない存在であり、将来性の高い職種の1つと言えます。
一方でネットでは「管工事施工管理技士はきつい」といった声も少なくありません。
これから管工事施工管理技士を目指そうとしていたものの、「途中で挫折してしまうのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。
今回は管工事施工管理技士がきついと言われる理由について、分かりやすく解説していきます。
この記事でわかること
・管工事施工管理技士の仕事内容について
・管工事施工管理技士の魅力
・管工事施工管理技士に向いていない人の特徴
管工事施工管理技士がきついと言われる理由7選
管工事施工管理技士は管工事全体のチェックを行いながら、各工程が計画通りに進むように全体を管理していく責任があります。
具体的には資材などの発注や各工程の品質チェック、イレギュラーが発生した場合の話し合いなど、さまざまな業務をこなします。
このような業務をこなす中で、具体的にどのようなことがきついと言われているのか、7つの理由について解説していきます。
体力が必要だから
管工事施工管理技士は工事全体を管理する役割を担っており、工事の中で行われる全ての工程をチェックしなければなりません。
実際に作業を手伝うことはありませんが、作業チェックのために一日中、工事現場を歩き回ます。
また、工事作業が終わった後には報告書類などの作成も行うため、忙しい時期には長時間労働が毎日のように続きます。
数日ならまだしも、毎日長時間労働が続けば体力的についていけず、仕事がきついと感じる人も中にはいるでしょう。
板挟みになるから
管工事施工管理技士は工事を計画通り進めるために、現場の作業員とのコミュニケーションが欠かせません。
また、イレギュラーなどにより計画を変更せざるを得ない場合、工事依頼者への説明を行い、今後の要望などを聞きながら計画を立て直します。
この他、仕事に対する上司からの指示などがあり、全員の意見を上手くまとめる必要があります。
時には依頼者側と工事現場の意見が食い違うこともあり、工事の責任者である管工事施工管理者が板挟みになるようなケースもあります。
「自分が決定したわけではないのに」と人間関係でストレスを溜め込んでしまい、仕事が辛いと感じてしまう人も少なくありません。
資格の取得が大変だから
管工事と一口に言ってもガス配管・衛生設備・浄化槽工事など、さまざまな種類の工事があります。
あらゆる管工事を適切に管理するためには、作業に関する知識が必須であり、関連資格の取得など、さまざまな勉強を行いながら仕事をこなしていきます。
また、見習いの時期には施工管理技士資格の取得を目指すこととなりますが、難関資格であり長期間の試験勉強が必要です。
仕事が終わった後はもちろん、休みの日まで勉強に費やしている人もいるほどです。
このような、常に仕事に関して学び続けなければならない環境を辛いと感じる人もいます。
残業が多いから
前述した通り、管工事施工管理技士は工事全体を管理するために、さまざまな業務をこなさなければなりません。
仕事中に指示出しや作業のチェックを行うのはもちろん、工事作業が終わった後には関連の書類作成を行います。
また、作業中にイレギュラーがあった場合、翌日からの計画を立て直す必要があり、その日の夜に話し合いが行われます。
工期に余裕がなくなってしまうとより仕事量が増えてしまうため、毎日長時間の残業も珍しくありません。
近年は建設業界全体の人材不足も深刻化しており、工事従事者一人一人の負担が増えてきていることも影響しています。
休日を取りにくいから
厚生労働省が行った「令和2年の就労条件総合調査」によると、建設業界の場合、「週休1日制または週休1日半制」の割合は12.2%となっています。
この数字は調査された31業種の中で5番目に多い数字であり、建設業全体で休みが少ないことが分かっています。
参照元:厚生労働省|e-Stat|就労条件総合調査 / 令和2年_就労条件総合調査 労働時間制度
建設業の従事者に行ったアンケート調査でも「業務に関連したストレスや悩みがある」と回答した人は、技術者(現場監督)で70.4%にも及びました。
ストレスの理由に関しては1位が「職場の人間関係・31.3%」であり、次いで多かったのが「休日・休暇の少なさ・29.9%」でした。
参照元:厚生労働省|平成30年我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況
管工事施工管理技士は、工事作業がない日に工事に関する打合せ等を行うため、特に休日が少ない職種と言えます。
給料が見合わないから
管工事施工管理技士の収入は建設業界の中でも高水準ではあるものの、不満に感じている人も少なくありません。
その理由は「長時間労働と責任の重さ」です。
工事が始まる前には出勤しておく必要があり、仕事が終わる時間は夜遅くとなる日も珍しくなく、時給に換算すると決して高いとは言えません。
また、工事責任者として抱える責任の重さは大きく、精神的な負担も高いため、給料が見合っていないと感じる人もいます。
転勤が多いから
建設工事は全国で行われており、大手企業の場合は各地に事業所があります。
そのため、途中で転勤となることも珍しくありません。
また、転勤ではなかったとしても、担当する工事が自宅周辺とも限りません。
県外の大きな管工事に携わるような場合、半年〜1年の出張になるようなケースもあります。
日建協が行った「2018時短アンケートの概要」によると、施工管理者が含まれる外勤で単身赴任中と答えた人は全体の31.1%に及びます。
参照元:日本建設産業職員労働組合協議会「2018 時短アンケートの概要 生活実態・意識調査
関連記事:未経験者が「施工管理はやめとけ」と言われる5つの理由
管工事施工管理技士はきつい?についての体験談
管工事施工管理技士がきついと言われる理由について解説してきましたが、現役で働いている人はどのように感じているのでしょうか。
ここでは、実際に施工管理技士として働く人の声を紹介します。
見習いの時期は、管工事について学ぶことが多く、試験勉強もあってとても大変でした。
ベテランの職人さんに指示を出す機会もたくさんあり、気を遣う毎日だったのを覚えています。
見習いの時期は3~4年ほどで終わり、今では土木施工管理技士の資格も取得し、現場を任されています。
今でも学ぶことはたくさんあり毎日大変ですが、多くの職人さんと一緒に工事を進めていく毎日に楽しさも感じています。
辛くて辞めたいと感じた時もありましたが、辞めずに続けて良かったと感じています。
きついと言われる管工事施工管理技士とは
「管工事施工管理技士はきつい」という情報は目にしたものの、具体的な仕事内容などについて理解していないという方もいるでしょう。
ここでは管工事施工管理技士とはどのような仕事を行っているのか、分かりやすく解説していきます。
管工事施工管理技士の仕事内容
管工事施工管理技士とは文字通り、管工事の施工管理を行う人のことです。
一口に管工事と言っても多くの種類があり、以下のような工事を担当します。
- 空調設備工事
- ガス配管工事
- 厨房設備工事
- 浄化槽工事
これらの管工事を計画通りに進められるよう、主に4つの管理を中心に行います。
- 工程管理:工事で行われる各工程の計画作成
- 品質管理:各工程が設計図通りに進められているかのチェック
- 原価管理:決められた予算内に工事費用が収めるための管理
- 安全管理:工事で起こり得る事故を未然に防ぐ
この4つの管理は「4大管理」と呼ばれており、管工事施工管理技士はこれらに関連する業務全てを行います。
資格には1級と2級がある
管工事施工管理技士には1級と2級があり、違いは以下の通りです。
【1級管工事施工管理技士】
携われる管工事の規模に制限がなく、一般建設業において「専任技術者・監理技術者・主任技術者」として従事できます。
会社の経営事項審査に関しては、1級の場合5点が追加されます。
【2級管工事施工管理技士】
大規模な管工事には携わることができず、一般建設業において「専任技術者・主任技術者」として従事可能です。
会社の経営事項審査に関しては2級の場合、2点が追加されます。
建築と電気の知識も必要
空調設備や浄化設備の工事では、エアコンやポンプなどの機器を取り扱います。
動かすには当然電気が必要となるため、電気設備工事との連携が発生します。
どのような場所にどんな配線を行うのか理解しておく必要があり、電気や建築に関する知識も必要と言えるでしょう。
需要は上昇傾向
新型コロナウイルスの蔓延により、あらゆる施設で適切な換気を行うことが提唱されました。
これに伴い、管工事の1つである空調設備工事の需要が高まっています。
また、最近では温暖化が進んでおり、夏以外の季節でも猛暑を記録するような日が増えてきています。
熱中症のリスクが高まったことで、これまで空調設備が必要ではなかった施設でも、工事の必要性が出てきているのが現状です。
これに伴い、管工事施工管理技士の需要も高まっています。
きついと言われる管工事施工管理技士の工事の流れ
管工事施工管理技士は、工事の中で行われる全ての工程を管理します。
ここでは管工事の流れについて詳しく解説していきます。
配管工事の場合
配管工事とはガス・気体・液体・燃料といったあらゆる物質を通すための管を敷設する工事のことを言います。
具体的な工事工程は以下の通りです。
- 標準仕様書の決定
- 配管材など資材の搬入
- 管の切断やねじ切りなどさまざまな加工の実施
- 管の接合
- 防錆処理
- 配管支持固定
- 配管試験
- 保温施行
建物の構造に沿って配管を行っていきますが、内容物が漏れてしまうと大事故に繋がる恐れがあるためわずかな隙間も許されません。
配管加工などをミスのないように進めていくのはもちろん、最終的な配管試験も大切な工程となります。
給排水管更新工事の場合
給排水管更新工事とは、古くなった配管を撤去した上で新しく配管を行う工事となります。
給排水管更新工事の流れは以下の通りです。
- 工事箇所の事前調査
- 工事計画の作成
- 資材の搬入
- 作業の準備と養生作業
- 既設管の撤去
- 配管更新
- リークテスト(水圧・空圧テスト)
- 保温および塗装
給排水管更新工事は既に使用されている施設で行われるため、どのように工事を行うのかの事前調査が行われます。
きついと言われる管工事施工管理技士の魅力
ここまで管工事施工管理技士の仕事内容やきつさについて解説してきましたが、ただ辛いだけの仕事というわけではありません。
管工事施工管理技士ならではの魅力もあります。
ここでは、管工事施工管理技士の魅力について4つ紹介していきます。
資格手当が支給されることがある
管工事施工管理技士は管工事に欠かせない存在であり、多くの会社では福利厚生で資格手当制度が設けられています。
手当額は会社によって異なりますが、2級で5,000円前後、1級では10,000円前後です。
これとは別に「現場手当」や「技能手当」が支給される会社もあります。
希少価値の高い人材になれる
建設工事を行う場合、工事の規模に応じて主任技術者または監理技術者を置くことが義務付けられています。
主任技術者・監理技術者として工事に従事できるのは、施工管理技士の資格を持っている人だけです。
そのため、施工管理者は建設工事に欠かせない存在であり、非常に希少価値の高い人材と言えます。
資格を取得できれば、建設業界の第一線で活躍し続けられるでしょう。
官公庁の公共工事に携われる
さまざまな施設に管工事は必要であり、官公庁の公共工事も少なくありません。
官公庁の公共工事は景気などの影響を受けず、発注量が安定しているメリットがあります。
大規模な工事も多く、管工事施工管理技士としての成長にも繋がります。
社会への貢献を実感しやすい
管工事は人々の生活に必要不可欠な物であり、社会インフラの基盤を作る重要な工事です。
形に残る仕事でもあるため、社会への貢献を実感しやすい仕事と言えるでしょう。
管工事施工管理技士をきついと感じやすい人
管工事施工管理技士は工事の責任者であり、誰でも簡単にできるような仕事ではありません。
魅力が多い一方で辛いことも少なくないため、適性についても理解しておく必要があります。もし当てはまる場合は、意識して直しておくようにしましょう。
積極的に学ぶ意欲がない
建設業界ではDX化が進んでおり、工事方法は常に変わり続けます。
管工事も例外ではなく、配管の溶接方法などは次第に変わってきており、新しい材料なども開発が進んでいます。
法律に関しても同様であり、管工事施工管理技士として第一線で活躍するには、常に学び続けなければなりません。
「常に学び続けるのが苦手で、好奇心旺盛でもない」という人は施工管理の仕事に向いていないと言えます。
コミュニケーションが不得意
工事施工管理技士は、工事を計画通り進めていく上で、さまざまな人とコミュニケーションを取ることが非常に大切です。
工事現場では各工程で協力会社が異なることも珍しくなく、携わる職人には自分より年上でベテランの人もいます。
どのような人であっても積極的に話せるような人でなければ、全体に情報が共有できず、思うように工事が進まなくなります。
1人で黙々と仕事をしたいような人は向いていないと言えるでしょう。
関連記事:施工管理に向いている人・向いてない人の特徴は?転職失敗しないために知っておくべきこと
管工事施工管理技士はきつい?に関してよくある質問
最後は管工事施工管理技士に関する質問について答えていきます。
これから施工管理者を目指す方に役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
管工事施工管理技士の合格率は?
管工事施工管理技士試験は年に2回行われており、過去に実施された試験の合格率は以下の通りです。
【1級管工事施工管理技士の合格率(平成30年~令和4年の平均)】
・第一次検定:37.73%
・第二次検定:59.28%
【2級管工事施工管理技士の合格率(平成30年~令和4年の平均)】
・第一次検定:58.21%
・第二次検定:42.95%
参照元:一般財団法人全国建設研修センター
決して低い数字とは言えませんが、実務経験年数の指定を満たした人が受験していることを考えると、簡単に取得できるわけではないと言えます。
関連記事:30代未経験者でも施工管理には挑戦できる!その理由や求人の際に気を付けるポイントを紹介
管工事施工管理技士はきつい?についてのまとめ
今回は、管工事施工管理技士がきついと言われている理由について、解説してきました。
管工事施工管理技士は工事の責任者であり、作業品質や安全管理などあらゆる視点で工事全体を管理しなければなりません。
業務範囲が非常に広く、工期に余裕がない時には連日長時間の残業が続くこともあります。
そのため、長時間労働や休日の取りにくさや責任の重さに対し、きついと感じている人も少なくありません。
一方で建設業界には欠かせない存在であり、仕事も安定しているため将来性の高い職種でもあります。
楽な仕事ではないものの、辛い思いをしながらでも目指す価値のある仕事と言えるでしょう。
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