大型免許の取得は、多くのドライバーにとって、自身のキャリアアップを図るための、重要な要素となるでしょう。
しかし、大型免許を取得する際の費用や期間、具体的な取得方法についてはあまり知られていません。
そこで本記事では、大型免許の取得にかかる費用や取得方法、取得条件などについて詳しく解説していきます。
大型免許の費用は取得方法によって異なる
前提として、大型免許の費用は取得方法によって異なります。しかし、その解説をする前に、まずは大型免許そのものについて詳しく解説します。
そもそも大型免許とは
大型免許とは、日本の運転免許の一つであり、大型の自動車を運転するために必要な資格を指します。
具体的には、乗車定員が30人を超える自動車や、最大積載量が11トン以上の貨物自動車を運転する際にこの免許が必要となります。
大型自動車はそのサイズや重量から、運転技術や知識が求められるため、大型自動車免許の取得は他の一般的な免許と比べて難易度が高いとされています。
大型免許で運転可能な車種
2017年の法改正によって免許制度が刷新されたことで、運転できる車両の規格は大きく変化しました。
大型免許を含む、各免許で運転可能な車両の規格は以下の通りです。
免許 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 3.5t未満 | 2t未満 | 10人まで |
準中型免許 | 3.5t以上7.5t未満 | 2t以上4.5t未満 | 10人まで |
中型免許 | 7.5t以上~11t未満 | 4.5t以上~6.5t未満 | 29人まで |
大型免許 | 11t以上 | 6.5t以上 | 30人以上 |
具体的な車種で言えば、冷凍冷蔵車や引っ越し用のバンボディ、土砂等を運搬するダンプカー、ミキサー車などが、大型免許で運転が可能です。
また、大型免許の取得時には、けん引免許と大型特殊免許も同時取得が可能となっています。
けん引免許とは、トレーラーやセミトレーラーなどを牽引するための大型車両を運転する際に必要となる資格です。具体的には、大型のトラックが大きな荷物や特殊な貨物を運ぶ際に、後部に付けるトレーラーを牽引することが許可される免許となります。
大型特殊免許とは、特定の大型車両を運転するための資格です。この免許は、クレーン車や高所作業車、コンクリートポンプ車、ブルドーザー、ショベルカーなどの特殊な機能を持つ大型車両を運転する際に必要となるもので、一般の大型免許だけでは運転できない車両を取り扱います。
この2つの免許に関しては取得は必須ではありませんが、ドライバーとしてのキャリアアップを考えるのであれば、取得しておいて損はないでしょう。
大型免許の費用は取得方法によって異なる
大型免許の取得方法は複数存在し、その方法によって取得費用は変動します。
例えば、教習所をフルコースで利用する方法は、総合的に指導を受けることができる反面、費用が高くなることが一般的です。一方、免許合宿では初期費用は抑えられますが、不合格となった場合の再試験費用や、追加の学習費用が必要になることも考えられます。
また、2017年の法改正で免許制度が刷新されたことにより、人によって現在保有している免許は異なります。
これらの要素によって、大型免許の取得費用は個人個人で大きく異なるのです。
なお、取得方法や費用の詳細に関しては、次章以降で解説します。
大型免許の取得方法
続いては、大型免許の取得方法を3つ紹介します。
教習所に通う
大型免許の取得方法の1つ目は、教習所に通うことです。教習所に通うと、実技や学科の教習を、プロの指導者から時間をかけてしっかり学ぶことができます。
教習所では、大型車専用の練習エリアや模擬試験を受験することができるため、実際の試験に臨む前にしっかりと準備することが可能です。
また、安全な運転技術や法規制などの知識も体系的に学ぶことができるので、初心者や経験が少ない方にとっては、安心して学べる環境が整っています。
費用は比較的高くなることが多いですが、その分、質の高い指導を受けられるというメリットがあります。
また、大型免許を教習所で取得する場合、教習内容は普通自動車免許と同様に第一段階(教習所の場内で発進や停止、カーブ、右左折時の操作など)と第二段階(路上に出ての進路変更や縦列駐車など)に分かれています。
なお、自動車教習所での教習時間は、保有している運転免許によって異なります。具体的な教習時間は下記の通りです。
保有免許 | 技能教習 | 学科教習 |
普通自動車免許(AT限定) | 34時限 | 1時限 |
普通自動車免許(MT) | 30時限 | 1時限 |
準中型免許5t限定(AT限定) | 30時限 | 1時限 |
準中型免許5t限定(MT) | 26時限 | 1時限 |
準中型免許 | 23時限 | なし |
中型免許(MT) | 14時限 | なし |
8t限定中型免許(AT限定) | 24時限 | なし |
8t限定中型免許(MT) | 20時限 | なし |
※1時限=50分
参考:運転免許を取得するために必要な教習時間一覧 | 合宿免許ネクスト
合宿に参加する
大型免許の取得方法の2つ目は、合宿に参加することです。
合宿での免許取得(以下、合宿免許)は、限られた期間中に集中的に教習を受けることができるため、短時間での免許取得を目指す人におすすめです。
合宿免許は宿泊施設を利用しながら日々の教習を行うため、仕事や学校のことを忘れて免許取得に集中できます。また、効率的な時間割で学ぶため、内容が身につきやすいというメリットもあります。
ただし、合宿期間中は他の予定を入れにくいため、自身のスケジュールとの兼ね合いが必要になることも覚えておくと良いでしょう。
一発試験を受ける
大型免許の取得方法の3つ目は、一発試験を受けることです。
一発試験とは、教習所を利用せずに必要な知識と技能を独学や民間の研修で習得し、公安委員会が定める試験場で技能と知識の試験を受ける方法を指します。
具体的には、適性検査と仮免許試験に合格し、路上練習を10時間以上行った上で本試験に合格しなければなりません。そして、合格後に取得時講習を受けることで、大型免許を取得できます。
一発試験の最大の魅力は、教習所を通常のコースで受講するよりも費用を抑えることができる点です。しかし、一発試験は名前の通り、試験に一度しかチャンスがないため、落ちてしまうと再度受験するまでの期間や手間がかかることが、デメリットとして挙げられます。
そのため、十分な準備と自信がないと挑戦することは難しいと言えるでしょう。
関連記事:大型免許って難しいの?合格率や取得のコツ、費用などを詳しく紹介
関連記事:大型免許の一発試験で取るのは難しい?合格率や運転のコツ教習所に通った場合の比較などを紹介
大型免許の費用
ここからは、大型免許の費用について、前章の取得方法別に解説します。
教習所に通う場合
自動車教習所に通って大型免許を取得する場合、取得費用は現時点で保有している免許の種類によって下記のように異なります。
保有免許 | 費用の目安 |
普通自動車免許(限定なし) | 32万円~40万円 |
中型自動車免許(8トン限定) | 23万円~30万円 |
準中型自動車免許(5トン限定) | 28万円~36万円 |
参考:大型自動車免許を取る方法!必要な費用や期間も解説 | 鷹の台ドライビングスクール
なお、上記費用に加えて、運転免許試験場では試験受験料1,550円と免許証交付料2,050円、合計3,600円の支払いが必要です。
合宿に参加する場合
合宿免許で大型免許を取得する場合も、取得費用は現時点で保有している免許の種類によって下記のように異なります。
保有免許 | 費用の目安 |
普通自動車免許(限定なし) | 30万円~35万円 |
中型自動車免許(8トン限定) | 17万円~23万円 |
準中型自動車免許(5トン限定) | 22万円~30万円 |
参考:大型自動車免許を取得する!取得費用や期間、条件、給付金 | 合宿免許ムーチョ!
参考:大型免許取得の費用相場 | 大型合宿免許で早く安く大型免許取得!合宿免許比較「ドリーム」
なお、合宿免許の場合、期間内で免許を取得できなければ、追加で料金を支払うことになるため、注意が必要です。
一発試験の場合
一発試験で大型免許を取得する場合に必要な費用は以下の通りです。
費用内訳 | 費用の目安 |
構内試験 | 5,950円 |
路上試験 | 8,650円 |
取得時講習 | 22,000円 |
免許交付手数料 | 2,050円 |
合計 | 38,650円 |
参考:大型自動車免許を取る方法!必要な費用や期間も解説 | 鷹の台ドライビングスクール
受験料と試験車使用料は受験するごとに支払う必要があるため、試験に落ちた場合は追加で支払いが発生します。また、本試験合格後には取得時講習の受講が義務付けられており、17,800円の受講料を別途支払う必要があります。
したがって、すべての試験に一発で合格した場合、費用総額は31,950円です。
関連記事:自動車学校で大型免許を取得しよう!取得にかかる費用や条件とは?
関連記事:大型免許の費用はいくら?お得に大型免許を取得する方法も解説!
大型免許の費用が安くなる2つの補助金制度
このように、一発試験の場合を除いて、大型免許の取得にはある程度まとまった金額が必要となります。しかしながら、大型免許の取得を検討している方全員が、その金額を支払えるわけではありません。
そこで、ここでは大型免許の費用が安くなる2つの補助金制度について解説します。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、雇用保険の一環として、就業に必要な能力や技術を習得するための訓練を受ける労働者を支援するための制度です。
この制度を利用することで、資格取得を目指す訓練や職業能力の向上を目的とした訓練を受けた際の受講料の一部や、受講中の生計を支えるための給付金が支給されることとなります。
申請資格や給付の対象となる訓練、支給額などは、時期や状況によって変動するため、利用を希望する場合は、労働局やハローワークなどの公的機関で詳細を確認することが必要です。
なお、教育訓練は「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類に分けられており、大型免許を取得した場合は、「特定一般教育訓練」の対象となります。
支給額は、原則として労働者本人が自動車教習所などに支払った教育訓練経費(受講料金)の40%(上限20万円)に相当する金額です。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、企業が従業員の能力開発やスキルアップのために行う、研修や教育の取り組みを支援するための制度です。
この制度を利用すると、研修の内容や期間、対象者の条件などに応じて、研修費用の一部が国から補助されます。
人材開発支援助成金は、特に中小企業や新たに事業を開始した企業などでの人材育成活動の促進を目指すものであり、資金面での支援を通じて、企業の競争力向上や持続的な成長を後押しすることを目的としています。
利用を希望する企業は、必要な書類の提出や審査を経て、助成金の支給を受けることができます。
ただし、助成対象となる研修や条件は定められているため、詳細なガイドラインや要件を事前に確認することが必要です。
関連記事:大型トラックの助成金|免許を安く取得する方法や金額などご紹介!
大型免許の取得条件
続いて、大型免許の取得条件について詳しく解説します。
年齢や運転歴
2022年5月12日まで、大型免許を取得するためには、普通免許、中型免許、大型特殊免許いずれかの免許を取得したうえで、通算3年以上の運転経歴が必要でした。
しかし、昨今のドライバー不足の事情を鑑みて、警察庁は大型免許取得要件を「19歳以上かつ普通免許保有歴1年以上」へと緩和することを決定しました。
そして、2022年5月13日より、特別な教習を修了した「19歳以上かつ普通免許保有歴1年以上」のドライバーであれば、大型免許が取得できるようになったのです。
出典:第二種免許等の受験資格の見直しについて(令和4年5月13日)|警察庁
視力
大型免許の取得には、左右それぞれで0.5以上、両眼で0.8以上の視力が必要になります。
さらに、大型免許の場合は、「三桿法(さんかんほう)」を用いた深視力測定も行われます。
深視力とは、立体的なものを見る能力や、遠くと近くをはっきりと見分ける能力を指します。この能力が低下すると、特に運転時などの距離の見積もりが難しくなることがあるため、大型車両を扱うことになるドライバーは、一定の深視力が備わっている必要があるのです。
一方、三桿法とは、視力検査において深視力を測定するための方法の一つです。
三桿法では、特製の器具を使用して、被験者に3本の桿を視認させます。最初は2本の桿が同じ深度に見えるように調整され、もう1本の桿は前後に動かされます。被験者は、この動く桿が他の2本の桿と同じ深度に見える位置を指示することで、深視力の有無や程度を評価するのです。
そして、大型免許の取得時には、三桿法による深視力の測定を3度行い、平均の誤差が2cm以内であれば合格となります。
加えて、「赤・青・黄色」を識別する色彩識別能力も測定されます。
なお、これらの視力検査は、眼鏡やコンタクトレンズを着用したときの、「矯正視力」での測定が可能です。
聴力
大型免許の取得では、10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる程度の両耳の聴力が求められます。なお、測定には補聴器を使用しても問題ありません。
その他の条件
その他には、学科試験はすべて日本語で行われるため、日本語が問題なく使えることが条件として挙げられます。
関連記事:大型免許の取得条件とは?19歳から取れるって本当?
大型免許に関してよくある質問
ここからは、大型免許の取得に関してよくある質問に回答します。
大型免許の取得にかかる期間はどれくらいですか?
大型免許の取得にかかる期間は、いくつかの要因によって変動します。
まず、受講者が選ぶ教習所や取得方法によって異なります。例えば、通常の教習所での学習を選ぶ場合、日常の生活や仕事を並行して教習を進めることが多く、完了までの期間が1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
一方、合宿形式での教習を選ぶと、集中的に学習を行うため、約2~3週間程度での取得を目指すことが可能です。
また、受講者の運転経験や学習ペースも大きく影響します。初心者の場合、技能や知識を身につけるのにある程度の時間が必要です。
最後に、教習所の混雑状況や受講者の都合、さらには試験の合格回数も期間に影響を及ぼします。実技試験や筆記試験に一発で合格できるかどうかも、取得までのスピードを左右する要因となります。
大型免許の取得は難しいですか?
大型免許の取得が難しいかどうかは、個人の運転経験や学習能力によるところが大きいですが、一般的には「大型免許の取得は難しい」と感じる人は多いです。
大型の車両は操作性や取り回しが普通自動車とは異なるため、初めての方は慣れるまでに時間がかかることが考えられます。また、筆記試験や実技試験には独特のポイントがあり、十分な練習や学習が必要です。
しかし、専門的な教習所の指導を受けながらしっかりと準備をすれば、合格は難しくありません。そのため、大型免許の取得に挑戦する場合は、十分な準備と学習を行いましょう。
関連記事:10トントラックに必要な免許は?取得方法や費用について一挙解説!
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大型免許の費用についてのまとめ
大型免許の取得は費用がかかる一方で、キャリアアップに欠かせない重要な資格です。補助金制度を活用すれば、取得費用を抑えることが可能ですので、ぜひ検討してみてください。
大型免許を取得すると、運転できる車種が増え、活躍の幅が広がります。ドライバーとしてさらなる高収入を目指す方は、補助金制度を利用しながら大型免許の取得を目指しましょう。
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