建築施工管理技士の仕事は建築工事に欠かせないものであり、人気の職種の1つと言えます。
一方で「建築施工管理技士として働いてみたものの、イメージと違っていた。他の会社で働きたい」と思うケースも珍しくありません。
建築施工管理技士の仕事に不満があるものの、本当に辞めるべきなのか、他の人はどういったことが原因で転職したのか気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は建築施工管理技士の転職事情について詳しく解説していきます。
この記事でわかること
・建築施工管理技士が転職する際に意識すべき4つのポイント
・建築施工管理技士の経験を活かせるおすすめの職種
建設業界の離職率
厚生労働省が発表した「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、建設業界の入職者・離職者状況は以下の通りです。
建設業界 | 入職者数(千人) | 離職者数(千人) |
令和3年 | 273.3 | 260.5 |
令和2年 | 277.1 | 261.9 |
参照元:厚生労働省|令和3年雇用動向調査結果の概況|表4 産業別入職者・離職者状況
この結果は他の産業のバランスと比べても、突出して多くも少なくもなく、一般的であると言えるでしょう。
建設業界の産業別入職超過率は+0.4ポイントで、実際の求人よりも入職を希望する人の方が若干多い結果となっています。
建築施工管理技士の転職理由11選
施工管理の仕事は、建築業界の仕事の中でも特に重要な役割と言えます。
建築施行管理技士は、工事における予算の算出や各工程の管理、安全面のチェックなど全体を監理しなければなりません。
建築施行管理技士は仕事が安定しており、自分の仕事が形として残るという魅力がある一方で、さまざまな理由で転職を考える方も少なくありません。
ここでは、建築施工管理技士を辞めて転職しようと思った理由について解説していきます。
給料が安いから
国税庁が公表した建設業全体の平均給料は345,833円、平均賞与は590,000円です。
参照元:国税庁|II 1年を通じて勤務した給与所得者
次に建築施工管理技士の平均給料は、保持資格ごとで以下の通りです。
どちらも建築業界全体の収入と比べて、決して低い数字ではありません。
しかし、建築施工管理技士の仕事量は膨大であり拘束時間も長いため、給料が見合っていないと感じる方が多くいます。
特に建築施工管理技士になりたての場合は、給料も少なく建築業界全体の収入を下回ることも十分考えられます。
「これだけ働いているのにこの給料じゃやっていけない」と感じて転職を検討してしまう方も少なくないでしょう。
拘束時間が長いから
建築施工管理技士は建築工事全体を監理するために現場で作業の指揮をとり、その後には報告書類の作成などでPC作業も行います。
全ての作業を就業時間内に終わらせられないことは珍しくなく、天候不良による工事の延期が発生した場合には、その後の予定を組み直さなければなりません。
また、現場だけではなくオフィスに戻っての仕事もあるので、移動にも時間がかかります。
長時間の拘束が毎日のように続いてしまうと、転職を検討する方も少なからずいるでしょう。
労働条件が悪いから
建築業界は近年、深刻な人手不足となっており、職人の高齢化も問題となっています。
その一方で建築業界の需要は高いまま推移しているため、1人1人にかかる業務負担も増えているのが現状です。
特に建築施工管理技士は工事全体を監理する役割なので、全ての工程で起きたイレギュラーに対応して工事を円滑に進めなければなりません。
ただでさえ業務量が多く残業が多い中で、建築業界全体が人手不足のままでは予定通りに工事が進まず、連日残業続きというケースもありえます。
所属している会社の労働条件はもちろん、建築業界全体の現状に嫌気がさして転職を検討するケースも少なくありません。
正当な評価をしてもらえないから
仕事に対する会社からの評価は、モチベーションを保つ上で欠かせないものの1つです。
建築施工管理技士として毎日のように残業をしてきている場合は尚更でしょう。
また、上司に一定の評価は得てはいるものの、給料が上がらないケースもあります。
このような会社で働いている場合には、別の会社への転職を考えるのも当たり前と言えます。
転職したくない場合には部署の異動や転勤を希望する方もいます。
休日があまり取れないから
人手不足であったり、工事でイレギュラーが起きたりした場合、工事全体を指揮する建築施工管理技士はこれらに対応しなければなりません。
やっと休めると思っていたのに、急に休日出勤をしなければならなくなることが続くと体力的にはもちろん、精神的にも疲弊してしまいます。
休みであったとしても忙しすぎて、家で仕事をしたり翌日以降の仕事について考えたりしてしまい、十分に休まらないケースもあります。
中には、労働者としての権利である有給休暇も、最低限の日数しか取れていない人もいます。
人間関係のストレス
建築施工管理技士は工事全体を監理するため、工程ごとに作業をチェックしなければなりません。
建築施工管理技士になりたてでは、現場で働く職人のほとんどが年上であり、意見するのに抵抗を感じてしまうこともあるでしょう。
指示通りに動いてくれない職人や不愛想な職人も中にはいて、会社からの指示と現場からの圧力に押しつぶされそうになる人もいます。
また、自分は一切悪くないとしても、騒音関係で近隣住民から叱責されることもあります。
このような人間関係によるストレスから転職を検討する方もいます。
業務内容のミスマッチ
建築施工管理技士とはいっても、全ての会社や工事現場で同じ業務内容とは限りません。
4大管理の1つを重点的に対応したり、希望した工事内容とは違う工事を担当したりするケースもあり得ます。
労働時間に関しても、初めの頃は覚える内容が多く、予想していたよりも長時間となって休日が取れないこともあるでしょう。
このような仕事内容のミスマッチに辛さを感じてしまい、転職を考えてしまう方もいます。
転勤を避けたいから
大手の建築会社の場合、全国に支店があり中には外国に進出している企業もあります。
支店が複数ある会社では、人員調整などの関係で転勤となってしまうことも珍しくありません。
転勤になると職場や工事現場での人間関係を、一から築いていく必要があります。
家族がいる場合には単身赴任になり、家族とも会えなくなることもあるので、転勤を避けるために転職を検討する方もいます。
資格を取得するため
建築施工管理技士の中には更なるキャリアアップのために、資格を取得したいと考える方もいます。
しかし、労働時間が長くなかなか休みが取れないことも多い中で勉強を進めるのは容易ではありません。
企業の中には、資格取得に関する支援制度を整備しているところもあるため、そういった企業へ転職を検討する方もいます。
家庭の事情
建築施工管理技士の仕事内容には不満がないものの、家庭の事情によって転職せざるを得ないケースもあります。
特に多いのが両親の介護による転職です。
実家から離れて働いており、親が病気になるなどして介護が必要になった場合には帰省しなければなりません。
また、近くに住んでいたとしても早く帰ったり急に休んだりしなければばならなくなるため、転職を検討する方もいます。
会社都合
会社に勤めていると、経営悪化により倒産してしまう可能性が少なからずあります。
特に最近は新型コロナウイルスが流行したことで、建築プロジェクトが白紙となったり資材の供給に遅延が生じたりしました。
これらの影響によって倒産や規模を縮小せざるを得なくなった会社も少なくないでしょう。
このような会社都合により、転職を余儀なくされるケースもあります。
関連記事:施工管理の転職理由7選!仕事を続けるか悩んでいる方、離職率の高い企業は必見です。
関連記事:土木施工管理に多い転職理由10選。オススメの転職先も紹介
建築施工管理から転職先を選ぶ際のポイント
建築施工管理技士として転職する場合、4つのポイントを意識しましょう。
・労働環境を重視するならエージェントを活用
・派遣社員も選択肢に入れる
・離職率の高い会社を避ける
次の会社に求める内容によって、意識すべきポイントが異なります。
ここでは各ポイントについて解説していきます。
収入アップを狙うなら大手へ
建設工事の中でも、比較的大きい案件は大手企業が扱うことがほとんどです。
中小の建設会社よりも売上が安定しやすく、役職に関しても空きが出やすいので、必然的に出世もしやすいと言えるでしょう。
年収アップを目指すのであれば大手企業への就職を意識しましょう。
ただし、大手企業になるほど求められるスキルレベルが高く、業務についていけずに転職となる可能性もあるため注意が必要です。
労働環境を重視するならエージェントを活用
長時間の残業がなく休日が取りやすいホワイト企業への転職を希望する場合、転職エージェントを活用しましょう。
転職エージェントは求人先の企業と連絡を取り合えるため、気になることがあれば直接質問ができるからです。
平均残業時間はどれくらいなのか、転勤になる可能性はあるのかなど、転職サイトには載っていない内容も、転職エージェントを介すことで事前に把握できます。
また、転職エージェントは要望に応じた企業を提示してくれたり、応募書類の添削や面接対策のサポートをしてくれたりもします。
働きながらであまり転職活動に時間を割けない方でも、最小限の負担で進められるでしょう。
派遣社員も選択肢に入れる
残業代をきっちりと貰いたい場合には、派遣社員として働くのもおすすめです。
派遣社員として働く場合、勤務先の企業に所属するわけではないため、労働条件に大きな乖離があった際には派遣会社を通じてのアクションを起こせます。
自分に合った会社があれば、長く働き続ける中で正社員登用となるケースもあります。
離職率の高い会社を避ける
離職率が高い会社は、労働条件で何かしらの問題がある可能性があります。
たとえ求人内容が理想であったとしても、離職率が高い理由をなるべく把握してから応募するようにしましょう。
各企業の離職率を調べる方法は主に4つあります。
・ハローワークで質問する
・企業の採用面接で質問する
・口コミサイトで評判を調べる
転職エージェントやハローワークのスタッフであれば、応募した人のその後や求人の頻度などを把握しているため、離職率に関しても詳しいでしょう。
最近では各企業の働きやすさを評価する口コミサイトも存在するため、人間関係や働きやすさを調べてみることでも、ある程度離職率が予想できます。
どうしても情報がない場合には、採用面接時に直接聞いてみるといいでしょう。
建築施工管理からのオススメの転職先
建築施工管理技士の仕事で得たコミュニケーション能力や工程管理スキル、建築に関する経験や知識は他の職種でも活かせます。
ここでは建築施工管理技士から別の職種へ転職を検討している方におすすめの転職先を紹介していきます。
営業職
建築工事現場ではさまざまな職人と連携を取りながら作業を進めていきます。
また、公的機関の職員とのやり取りも必要で、周辺住民との話し合いを設けることもあります。
上司や後輩だけではなく、気難しい職人相手でも問題なく話せるコミュニケーション力は、営業職においても十分活かせるでしょう。
最も有利なのは建築系の営業ではありますが、全く関係のないジャンルであっても転職は可能です。
公務員
建築工事の全体を管理していた経験は、公務員の技術系の職種でも活かせます。
公募内容によっては年齢や保有資格の制限がありますが、中途採用での就職も可能です。
具体的な職種例には以下のような仕事があります。
・建設管理系
・都市計画系
・建築審査系
・建築設備管理系
公募状況は各自治体の公式HPをチェックするか、直接問い合わせてみるといいでしょう。
CADオペレーター
CADオペレーターは建築工事が始まる前の仕事であり、CADを駆使して図面や設計図を制作していきます。
現場での管理業務とは全く異なりますが、設計図通りに各作業が進んでいるか管理する仕事は、十分CADオペレーターの仕事に活かせるでしょう。
また、他のCADオペレーターが経験していない建築工事全体の知識や経験は、大きな魅力として普段の業務に活かすこともできます。
技術者・研究者
建築施工管理技士として身に付けた知識や技術は、特定分野の専門的な技術へと活かすことが可能です。
また、建築機械関連や環境管理、IT管理など、より専門的な知識を学べます。
将来的に大学や研究所の職員になったり、設計コンサルタントを目指したりしたい方におすすめの職業と言えるでしょう。
ビル管理
ビル管理の仕事では、建物の安全性確保や快適性の提供のために、以下のような管理業務を行います。
・施設の保全
・施設セキュリティ管理
・予算管理
・テナントのサポート
建物を維持するためには、電気設備や空調設備の点検やメンテナンスが必須であり、細かい項目ごとにチェックを行っていきます。
専門性が高い機械の点検やテナントの清掃は協力会社に依頼しながらビル全体を管理します。
このようなビル管理業務は建築施工管理の経験を活かせるため、応募した際には重宝されやすい傾向にあります。
また、必要に応じて建物の修理を行う際には、業者の選定でも過去に身に付けた知識を役立てられるでしょう。
デベロッパー
不動産デベロッパーは、不動産の開発計画策定から物件のマーケティングまでの全ての業務を行います。
その中で建築設計や施工管理の仕事も行うため、建築施工管理の経験をそのまま役立てることができるでしょう。
また、不動産開発プロジェクトの資金調達のためには金融機関や投資家との話し合いもあり、建築施工管理技士の仕事で身につけた高いコミュニケーションスキルも役立ちます。
市場調査やマーケティングなど新しく覚えることも多いですが、建築施工管理の経験があれば即戦力としての活躍も可能です。
難易度が高く中途採用の求人数が少ないため、他の職種も同時に検討しながらの転職活動がおすすめです。
関連記事:建設業界(施工管理)の離職率はどれくらい?離職する理由もあわせて紹介
関連記事:施工管理技士は転職しやすい?転職を失敗させない方法と転職しやすい業種を紹介
建築施工管理の転職に関してよくある質問
最後に建築施工管理技士の転職に関する質問について解説していきます。
転職する上で参考になる内容ですので参考にしてみてください。
建築施工管理技士になるには実務経験が何年必要ですか?
建築施工管理技士になるには最低でも1年以上の実務経験が必要です。
建築施工管理技士として工事現場で働くには、実務経験の条件がある建築施工管理技士の資格取得が必須となるからです。
資格には1級・2級があり、それぞれに受験するための実務経験の条件が設定されています。
建築施工管理技士2級の場合
試験には第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は17歳以上であれば誰でも受験できます。
次の第二次検定には以下の受験資格を満たす必要があります。
・大学の建築系学科を卒業した後に1年以上の実務経験
・指定学科以外の場合は卒業後1年6ヵ月以上の実務経験
建築施工管理技士1級の場合
1級の第二次検定の受験資格は以下の通りです。
・大学の建築系学科を卒業した後に3年以上の実務経験
・指定学科以外の場合は卒業後4年6ヵ月以上の実務経験
専門の学校を卒業していないといけないわけではなく、未経験からでも働きながら経験を積み建築施工管理技士を目指すことは可能です。
最近では資格取得支援制度などの福利制度を用意している企業も増えてきています。
建築施工管理技士が退職するタイミングはいつが良いですか?
円満退社を希望する場合には最低でも1~2ヵ月前には退職の意思を上司へ伝えるようにしましょう。理想は3ヵ月前です。
また、担当しているプロジェクトの立場によっては、工事が終わるまで転職を引き延ばした方が良いケースもあるでしょう。
ちなみに最短で辞めたい場合は、退職日の2週間前に退職の意思を伝えれば問題ありません。
また、家族の介護や自身の体調不良などやむを得ない理由がある場合には、即日退職も民法第628条により定められています。
関連記事:施工管理の志望動機をうまく伝えるにはどうしたら良い?求人応募に失敗しないための例文を紹介
関連記事:建築施工管理の転職先としてオススメしたい仕事16選
まとめ
今回は建築施工管理技士の退職事情について解説してきました。
給料や拘束時間などの労働条件や人間関係、キャリアアップを理由とした転職は決して珍しくありません。
転職する場合には、目的によって就職先や就職方法、雇用形態を意識してみるといいでしょう。
また、建築施工管理技士以外の職種への転職も十分可能です。
現状の仕事内容に我慢できなかったり、新しくやりたいことがあったりする場合にはタイミングを考えて転職を検討してみましょう。
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