建築施工管理技士は、マンションやビル、駅、商業施設など、さまざまな建築工事を統括する重要な役割を担っています。
現場の指揮をとり、工程や品質、安全管理をおこなう姿に憧れを抱いたことがあるかもしれません。
そこで今回は、建築施工管理技士の資格や仕事内容、試験内容などを紹介します。この資格に興味がある方や、建築業界に携わりたい方は参考にしてください。
建築施工管理技士とは?
建築施工管理技士とは、7種類ある施工管理技士の資格の中で建築現場を専門とする施工管理技士です。
ビルやマンション、公共施設などの建築現場において現場監督のような仕事を行っています。建築施工管理技士には上位資格である1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士の2つの資格があります。
1級建築施工管理技士
1級建築施工管理技士の資格を取得すると自分が管理する建設工事の規模に上限がなくなります。都市部にある超高層マンションや高層ビル、超大型商業施設といった大規模なものから誰もが知るような建造物の建築工事の管理を任せられるようになります。
1級建築施工管理技士となるには、建築一式工事や大工工事、左官工事といったあらゆる工事を管理する立場となるため、高度で幅広い知識を有する必要があります。
関連記事:人気が高い1級建築施工管理技士とはどんな資格?受験資格や試験内容、難易度から勉強方法まで紹介!
関連記事:1級建築施工管理技士の受験資格と試験内容|合格率と難易度について
2級建築施工管理技士
2級建築施工管理技士の資格を取得することで中小規模の建設現場を管理することができます。具体的には請負金額が4,000万円以下の工事となり、1級建築施工管理技士と比較すると比較的小規模な建築現場となります。
もし住宅をメインとして建築している企業であれば2級建築施工管理技士の資格で十分でしょう。
また2級建築施工管理技士は「建築」「躯体」「仕上げ」の3種類に分かれており、それぞれ管理できる工事が異なるため、全ての管理を行いたいのであればこの3種類の資格全てを取得する必要があります。
関連記事:2級建築施工管理技士の受験資格と試験内容|合格率と難易度について
建築施工管理技士の仕事内容
建築施工管理技士とは建築現場を管理するものと紹介しました。それでは具体的にはどんな仕事を行っているのでしょうか?
建築施工管理技士の仕事は4大管理と呼ばれる「工程管理」「品質管理」「安全管理」「原価管理」の4つを主に行っています。これらについてそれぞれ紹介していきましょう。
工程管理
建設工事には必ず工期が存在します。その工期を守ることが建築施工管理技士の仕事です。建築施工管理技士は工事が予定通りに進んでいるのかを管理します。
工事に携わる職人の手配や作業スケジュールの作成、工事に必要な資材の発注、工事に必要な重機の手配など工事に関する「人」や「物」の準備から手配を一挙に引き受けています。
また、工事中にトラブルが発生し、工事が遅れてしまった場合は対応策について検討することも建築施工管理技士の仕事となります。
品質管理
品質管理とは、建築物が設計書や仕様書通りに作られているかを確認する仕事です。建築物の耐震や強度の確認はもちろん、使われている資材の品質チェックも行います。
工事の途中で検査を入れるのですが、その検査は専門の業者に依頼することがあるので、その手配を行うことも建築施工管理技士の仕事です。
安全管理
安全管理とは、工事中に作業員がケガや事故を起こさないように安全な環境づくりを行う仕事です。この安全管理が建築施工管理技士の仕事の中で最も大事と言われています。
具体的な仕事内容としては安全柵や安全綱といった安全設備に問題がないか現場を見回りしたり、消防設備に不備がないか確認したりなどです。
また他にも、作業員の体調チェックをしたり、工事における危険予知とその周知をしたり、使用する重機や器具などの安全確認をしたりと多岐にわたります。
また、工事現場付近に住む近隣住民や近くを通る通行人に危害が及ばないようにすることも安全管理の1つとなります。
原価管理
原価管理とは、建設工事が決められた予算内に収まるか計画、管理する仕事です。
工事に携わる作業員の人件費、使う資材や重機のレンタル代金などの経費をすべて計算して、予算内に収まるように調整しなければいけません。
予算を超えるようであれば会社に利益が回らないため、品質に影響のないようにコストを削減する努力をすることも建築施工管理技士にとって重要な役割となります。
建築士との連携
4大管理とは外れますが、建築士との連携も工事中に行っています。なぜなら建築施工管理技士は作業スケジュールの作成や工事の管理はできても設計図を作ることができないからです。
設計図を作るのは建築士の仕事です。工事中に設計図通りにいかない場合や変更しないといけない場合などは建築士と連携して設計図の見直しを行います。その時は施工主の希望を念頭において設計図を組み立てていくことが重要となります。
関連記事:施工管理の五大管理「QCDSE」とは?優先順位や管理方法
建築施工管理技士のやりがい
建築施工管理技士として働く主なやりがいは以下の通りです。
高収入を得やすい
建築施工管理技士は、責任のある業務を任されることが多く、特に大規模なプロジェクトに携わる場合、成果に見合った高収入が期待できます。
経験を積むことで、管理職や専門性の高いポジションに昇進することもあり、給与がさらに上がる可能性があります。
また、国家資格を持つ技術者としての需要が高く、安定した収入を得やすい職種です。
長く続けやすい
建築施工管理技士の仕事は、年齢を重ねても続けやすい職業です。技術と経験を積み重ねることで、より効率的に仕事を進められるようになり、長期間にわたって働きやすくなるでしょう。
また、技術の進歩により、現場での負担が軽減されるケースも増え、体力的な不安を感じにくくなっています。
建物が残り続ける
施工管理技士が関わった建物は、長く社会に残り続けるため、自分の仕事が形として残る達成感を得られます。
自分が携わったプロジェクトが地域や社会に影響を与えることを感じられることは、この職業ならではの魅力です。
関連記事:【現役の声】建築施工管理のやりがいと達成感|魅力と仕事内容建築施工管理技士に求められるスキル・能力
建築施工管理技士に求められるスキルや能力は以下の通りです。
管理能力
工事現場というのは常に予定通りに進まないものです。悪天候で工事が中断した、重機が故障して動かなくなった、資材が届かないなどといったトラブルが日常茶飯事のように起こります。
こういったときでも工期は守らないといけないため、そのためにトラブルを解決する能力や問題解決能力が必要です。
コミュニケーション能力
建築現場においてはたくさんの作業員と関わって工事を進めているのでコミュニケーション能力が必要とも言えます。
建築現場はどちらかというと体育会系が強いので、明るく声が大きい、ノリがいい、気遣いのできる人というのが建築施工管理技士に向いているといえるでしょう。
職人に限らず関連会社や施工主とのやり取りをおこなうのも建築施工管理技士であるため、コミュニケーション能力があると信頼を勝ち得やすく、将来的に昇給・昇進がしやすいといえます。
関連記事:施工管理に向いてない人の特徴は?向いている人の特徴も
建築施工管理技士の資格取得の流れ
建築施工管理技士となるためには資格試験に合格する必要があります。資格の取得までの流れについて紹介していきましょう。
建築施工管理技士の受験資格
建築施工管理技士の資格試験を受験するためには下記の条件を満たしていなければいけません。
建築施工管理技士の受験資格は令和6年度に大幅に変更がくわえられたので、確実に押さえておきましょう。
1級建築施工管理技士の受験資格
第一次検定:
試験実施年度に満19歳以上となる者 (令和6年度に申請する場合、生年月日が平成18年4月1日以前)
第二次検定:
第二次検定を受けるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります(一次と二次を同時に申し込む場合、第一次検定に不合格になると同年度の第二次検定は受けられません)。
区分1:1級第一次検定合格者 | 実務経験5年以上 特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 監理技術者補佐としての実務経験1年以上 |
区分2:1級第一次検定、および2級第二次検定合格者 | 実務経験5年以上 特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
区分3:1級第一次検定受検予定、および2級第二次検定合格者 | 実務経験5年以上 特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
区分4:一級建築士試験合格者 | 実務経験5年以上 特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上 |
参考:令和6年度1級建築施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金
2級建築施工管理技士の受験資格
第一次検定:
試験実施年度に満17歳以上となる者 (令和6年度に申請する場合、生年月日が平成20年4月1日以前)
第二次検定:
第二次検定を受検するための新受検資格は、以下の3つの条件のいずれかを満たす必要があります。
- 2級建築施工管理技術検定の第一次検定合格後、実務経験3年以上。
- 1級建築施工管理技術検定の第一次検定合格後、実務経験1年以上。
- 一級建築士試験合格後、実務経験1年以上。
参考:令和6年度2級建築施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金
建築施工管理技士の試験情報
【1級建築施工管理技士の試験情報】
1. 試験日程
- 第一次検定
- 申請受付期間:2024年2月22日(木)〜3月8日(金)
- ネット申請(新規受検者のみ):2024年4月5日(金)まで
- 試験日:2024年7月21日(日)
- 合格発表:2024年8月23日(金)
- 第二次検定
- 申請受付期間:第一次検定と同じ
- 試験日:2024年10月20日(日)
- 合格発表:2025年1月10日(金)
2. 申請方法
- 初めて受検する場合(一次・二次同時申請を含む):実務経験審査が必要で、書面申請が求められます。
- 再受検の場合:過去に実務経験証明書を提出した方は、再度の提出が不要です。ネットまたは書面申請が可能です。
3. 受検手数料
- 第一次検定:10,800円(非課税)
- 第二次検定:10,800円(非課税)
- 一次二次同時申請の場合、第二次検定の手数料は第一次検定合格後に支払います(締切:9月6日)。
4. 試験地
札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄
※会場の都合により近郊で実施されることがあります。
参考:令和6年度1級建築施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金
【2級建築施工管理技士の試験情報】
1. 試験日程
- 前期
- 申請受付期間:2024年2月9日(金)〜3月8日(金)
- 試験日:2024年6月9日(日)
- 合格発表:2024年7月10日(水)
- 後期
- 申請受付期間:ネット申請:2024年6月26日(水)〜、書面申請:2024年7月10日(水)〜
- 申請締切:2024年7月24日(水)
- 試験日:2024年11月24日(日)
- 合格発表:第一次検定:2025年1月10日(金)、第二次検定:2025年2月7日(金)
※前期日程では、第二次検定の実施はありません。
2. 申請方法
- 初めて第二次検定を受検する場合(一次二次同時申請を含む):書面で申請が必要です。
- 再受検の場合:過去の実務経験証明書が適用され、ネットまたは書面申請が可能です。
3. 受検手数料
- 第一次検定:5,400円(非課税)
- 第二次検定:5,400円(非課税)
- 一次・二次同時申請:10,800円(非課税)
試験地
- 前期:札幌、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、沖縄
- 後期:札幌、青森、仙台、東京、新潟、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、沖縄
※試験会場は変更される可能性があります。
建築施工管理技士の試験内容
建築施工管理技士の試験は第一次検定(学科試験)と第二次検定(実地試験)の2回に分けて行われます。両方ともペーパーテストですが内容が異なります。
第一次検定(学科試験)
第一次検定は1級・2級ともに4肢択一のマークシート方式で行われます。試験内容は、「建築学」「共通」「躯体施工」「仕上げ施工」「施工管理法」「法規」となります。
1級、2級の違いは2級ではそれぞれの概略知識を問う問題が基本となりますが、1級ではより深い知識を問う問題が出題されるため、当然ながら1級の方が難易度が高くなります。
第二次検定(実地試験)
第二次検定は全て記述式での解答となります。試験科目は「施工経験記述」「安全管理」「躯体施工」「仕上げ施工」「施工管理」「法規」で、ここから1問ずつ出題されます。
それぞれ記述で解答しなければいけないため、それぞれに対する深い知識と文章能力が必要となります。
参考:令和6年度2級建築施工管理技術検定のご案内|一般財団法人建設業振興基金
建築施工管理技士の難易度
試験を開催している一般財団法人建設業振興基金が公表する情報やデータをもとに、建築施工管理技士の合格率を1紹介します。
1級建築施工管理技士の合格率
開催年 | 第一次検定 | 第二次検定 |
2016年 | 49.4% | 45.6% |
2017年 | 39.7% | 33.5% |
2018年 | 36.6% | 37.1% |
2019年 | 42.7% | 46.5% |
2020年 | 51.1% | 40.7% |
第一次検定と第二次検定と大きな差はありませんが、第二次検定の方が記述式ということもあって少し難易度が上がり、合格率が低くなっています。
1級建築施工管理技士の場合、2級建築施工管理技士となったから5年以上の経験を得てから試験に臨んでいるため、ある程度の知識を有しています。2級建築施工管理技士よりも難易度はあがりますが、それでも40%以上の合格率があるのはそのためでしょう。
2級建築施工管理技士の合格率
開催年 | 第一次検定 | 第二次検定 |
2016年 | 51.9% | 38.9% |
2017年 | 38.7% | 28.9% |
2018年 | 25.9% | 25.2% |
2019年 | 34.7% | 27.1% |
2020年 | 34.5% | 28.2% |
どの年度も20~30%台と低い合格率となっています。第一次検定に関しては、17歳以上であれば誰でも受験が可能ということもあり、高校在学中に受験する方もいます。
第二次検定は特に施工経験記述でつまづく受験者が多いとされています。記述式ということもあって低い合格率となっています。
関連記事:建築施工管理技士の受験資格とは?試験の難易度や合格のコツも併せて紹介!
建築施工管理技士の平均年収
厚生労働省が調査した令和5年賃金構造基本統計調査によると、建築施工管理技士の平均年収は632.8万円です。
ただし、この金額は経験年数や資格の等級、所属する企業の規模や地域によって異なります。
例えば、大手ゼネコンなどの大規模な企業で働く場合や、プロジェクトの責任者としての経験が長い場合は、年収がさらに上昇する傾向にあります。逆に、中小企業での勤務や経験が浅い場合には、これよりも低い年収になるケースもあるでしょう。
同調査によれば、同じ施工管理職である「土木施工管理技術者」の平均年収は603.9万円であるため、それと比べても年収の水準は高いといえます。
建築施工管理技士についてのまとめ
建築物の完成までには建設工事以外に電気工事や空調工事、ガス管の工事などさまざまな専門工事が関わって進めていきます。それらすべてを束ねるのが建築施工管理技士です。
つまり建築施工管理技士は建築物の全てを知っているといっても過言ではないでしょう。
建築施工管理技士は建築物に対する深い知識が必要となるため、資格取得は簡単ではありませんが、その分やりがいのある仕事です。
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