電気工事士の資格は、受験に特別な条件がなく、誰でも挑戦できるため、近年注目されている資格の一つです。
そこでこの記事では、電気工事士の仕事内容から、第二種と第一種の違い、資格の取り方、合格率、試験スケジュール、さらに取得するメリットまで幅広く解説しています。
また、2024年度(令和6年度)の試験スケジュールや、その他関連資格についても紹介します。
これから電気工事士の資格を目指す方や、キャリアアップとして第一種取得を考えている方に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
電気工事士とは
電気工事士とは、電気設備の工事や取り扱いの際に必要な国家資格です。資格は、第一種と第二種に分かれており、それぞれ扱える範囲が異なります。
第二種電気工事士
一般的な住宅や店舗など、電圧が600V以下の電気工事をおこなうことができる。ここでいう電気工事とは、配線工事や電気設備工事などのことを指します。
第一種電気工事士
第二種の範囲および最大電力が500KW未満の電気工事(配線工事・電気設備工事)をおこなうことができます。
建物の規模は、ビルや工場、大型店舗などが当てはまります。
関連記事:電気工事士の年収を年代別・資格別・学歴別・経験年数別に解説
電気工事士の仕事内容
電気工事士の業務は非多岐にわたりますが、主に「建設電気工事」と「鉄道電気工事」に分けられます。
近年では、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及や、コロナ禍による通信設備やエアコンの設置需要の増加に伴い、電気工事士の仕事の幅が広がっているのです。詳しくは以下の通りです。
建設電気工事
建設電気工事は、工場、ビル、病院、住宅といったさまざまな建物において、電気設備の設計や施工をおこないます。
具体的には、コンセントや照明器具の設置、エアコンの取り付け、大型機器の制御回路の整備、変電設備の配線などです。
新築の建物では、電気配線の計画から配電盤や電気機器の設置までを一貫して担当し、リフォームや改修工事では既存の設備に新たな配線や電気機器を追加する工事をおこないます。
これにより、電気工事士は建物の電気インフラ全体を支える重要な役割を果たしています。
鉄道電気工事
鉄道電気工事は、鉄道運行に必要な電気設備の施工やメンテナンスを担当します。
鉄道の電気設備は、電車に電力を供給する架線、信号機システム、踏切の制御装置、駅舎の照明や通信設備など幅広く、さらに発電所や変電所での電力供給システムも含まれます。
日本の鉄道が正確かつ安全に運行できるのは、これらの電気設備が常に適切に管理されているからです。鉄道電気工事は、その裏方として鉄道の安全を守る非常に重要な職務です。
関連記事:電気工事施工管理を辞めたい方にオススメの転職先12選
電気工事士の資格の取り方
これから電気工事士の資格を取ろうと考えている方は、まず第二種電気工事士の資格から取得することをおすすめします。
取得方法は、独学で取得する方法と働きながら取得する方法があります。それぞれ紹介していきましょう。
独学で取得する方法
電気工事士になるための受験資格はありません。第一種・第二種ともに必要な条件はないため、誰でも受験することが可能です。
そのため、電気工事と関係ない企業で働きながら家で勉強したり、学生のうちに資格を取得する方もいます。
筆記試験は、本屋などで販売されている参考書で勉強することで十分合格することは可能です。
技能試験は、参考書についているDVDなどを見て、練習する方法があります。ただ技能試験は筆記より難しいとされているため、できれば電気工事士の経験がある人に教えてもらいながらおこなうことをおすすめします。
働きながら取得する方法
実は電気工事士が働く企業には、「無資格・未経験OK」で求人を行なっているところも多くあります。さらに資格取得支援制度もある会社も少なくありません。
実際に電気系統を触ることはできませんが、先輩の補助作業をしながら勉強することができます。
現場で実務作業をしながら資格を取りたいという方にはおすすめの方法です。
また、第一種に関して、資格を取るだけは特に必要な条件はありませんが、免状交付のためには実務経験が必要となります。
なお、実務経験として認められる電気工事は3種類あります。
①第二種電気工事士の免状を取得後の電気工事
②認定電気工事従事者認定証を取得後の簡易電気工事
③左記電気工作物の設置・変更の工事
実務経験の必要な年数は3年もしくは5年で、こちらは条件によって異なります
5年以上:第一種電気工事士試験の合格者
3年以上:第一種電気工事士試験の合格者かつ大学・短大・高等専門学校を卒業したもの
第二種電気工事士と第一種電気工事士の違い
ここでは第二種電気工事士と第一種電気工事士の違いを、工事範囲、取得要件、年収に絞って解説します。
工事範囲
第二種電気工事士
第二種電気工事士は、主に一般住宅や小規模な店舗など、600ボルト以下で受電する設備の電気工事に従事できます。
この範囲は比較的小規模な電気設備が中心で、一般家庭の電気配線や照明器具の設置、エアコンの取り付けなどが含まれます。
第一種電気工事士
第一種電気工事士は、第二種で扱える工事範囲に加えて、最大電力500キロワット未満のビルや工場、大規模な店舗など、大型施設の電気工事にも従事できます。
高圧電気を扱う施設の配線や設備の設置が可能で、工事の規模や範囲が大きく広がります。
取得要件
第二種電気工事士
第二種電気工事士の資格は、試験(学科と技能)に合格すれば、誰でも申請して取得することができます。
特別な実務経験は不要で、一度資格を取得すれば有効期限がないため、更新の手間もありません。
第一種電気工事士
第一種電気工事士の資格を取得するには、試験に合格するだけでなく、3年以上の実務経験が必要です。
また、資格自体には有効期限はありませんが、5年ごとに定期講習を受講する義務があります。第一種の資格には返納制度も設けられている点が特徴です。
年収
電気工事士の年収は第一種と第二種ではあまり大きく変わりません。
電気工事士の年収は経験年数によって異なりますが、厚生労働省が令和元年に発表した平均年収は約418万円でした。女性と男性を比較すると、男性の方がやや高い傾向にあります。
企業や現場の規模によって年収は変わっていき、中には600万円を超えるところもあります。
電気工事士は、他の業種と同じように経験年数を積めば積むほど年収が上がっていく傾向があります。経験年数と年収を表にまとめました。
経験年数 | 0年 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜14年 | 15年以上 |
男性 | 256万円 | 330万円 | 378万円 | 435万円 | 490万円 |
女性 | 206万円 | 292万円 | 300万円 | 405万円 | 430万円 |
電気工事士は、「見習い期間」「一般社員」「責任者」とキャリアを重ねることに年収が大きく変化していきます。
一番初めの見習い期間は、250万円〜350万円ほどです。先輩電気工事士の作業の補助をしたりしながら、技術を身につけていきます。
次に一般社員は、300万円から500万円程度です。見習いを卒業し、これまで身につけた知識や技術を活かして現場で活躍しています。
最後に責任者は400万円から600万円ほどです。一般社員から責任者の立場になると年収はグンと上がります。
一般社員や見習いのものを従えて、責任者として現場の舵を取るので、その分年収は上がります。
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電気工事士を取得するメリット
手に職がつく
電気工事士の資格を取得すれば、電気工事という専門分野で働くことができ、手に職をつけることができます。
電気工事は資格がなければおこなえないため、技術を持つプロとして長期的に活躍できるのが大きな魅力です。経験を積むことで技術が磨かれ、定年もなく、長く働くことができるため、一生の仕事として選ぶ人も多いです。
転職で有利
電気工事士のニーズは高く、電気工事会社や建設会社、ビル管理・メンテナンス会社など、さまざまな分野で一定して求人があります。
資格手当がつくことも
電気工事士の資格を取得すると、企業によっては資格手当が支給されることがあります。
これにより、基本給にプラスして収入が増える可能性があり、資格を持っていることが収入面でもメリットとなります。
また、電気工事士の資格を活かして副業やアルバイトをすることも可能であり、将来の安定性を考える上でも取得しておきたい資格の一つです。
電気工事士の試験概要
受験資格、試験方式など、電気工事士の資格試験の概要は以下の通りです。
受験資格
第二種電気工事士と第一種電気工事士の試験は、共に特別な受験資格は必要ありません。ただし、第一種電気工事士の免状を申請する際には、3年以上の実務経験が必要です。
試験実施回数
- 第二種電気工事士の試験は、年に2回実施されます(上期・下期)。上期は4月~5月に学科試験、7月に技能試験が行われ、下期は9月~10月に学科試験、12月に技能試験が実施されます。
- 第一種電気工事士も、令和6年度から年に2回実施されるようになりました。上期は4月~5月に学科試験(CBT方式のみ)、7月に技能試験、下期は9月~10月に学科試験、11月に技能試験が行われます。
試験方式
- 第二種電気工事士では、学科試験は従来の筆記方式(マークシート)に加えて、CBT方式(コンピュータでの試験)も導入されています。技能試験では実際の課題を作成し、実務に即した技能を評価されます。
- 第一種電気工事士も同様に、学科試験は筆記方式とCBT方式の両方で行われ、技能試験では課題作成を通して技術力を評価されます。特に上期の学科試験はCBT方式のみで実施される点が特徴です。
試験会場
両資格とも、全国47都道府県で試験が実施され、受験しやすい環境が整えられています。
電気工事士の資格は、電気工事に従事するために必要不可欠なものであり、取得することでキャリアアップや収入増加のチャンスが広がります。
電気工事士の試験内容
電気工事士の試験内容は、学科試験と技能試験に分かれており、それぞれ異なる形式で実施されます。以下は第二種電気工事士と第一種電気工事士の試験内容の概要です。
第二種電気工事士の試験内容
学科試験
- 試験方式:CBT方式または筆記方式(マークシート)
- 問題形式:四肢択一
- 試験時間:120分
- 問題数・配点:50問(1問2点)
- 合格基準:約60点(満点の60%程度)
技能試験
- 試験方式:受験者が持参した工具を使用し、与えられた配線図に基づいて支給された材料で問題を解決する
- 試験時間:40分
- 問題数:1問
- 合格基準:欠陥を作らず、時間内に完成させること
- 出題範囲:事前に公表される13課題の中から1題が出題される
第一種電気工事士の試験内容
学科試験
- 試験方式:CBT方式または筆記方式(マークシート)
- 問題形式:四肢択一(上期試験はCBT方式のみ)
- 試験時間:140分
- 問題数・配点:50問(1問2点)
- 合格基準:約60点(満点の60%程度)
技能試験
- 試験方式:受験者が持参した工具を使用し、与えられた配線図に基づいて支給された材料で問題を解決する
- 試験時間:60分
- 問題数:1問
- 合格基準:欠陥を作らず、時間内に完成させること
- 出題範囲:事前に公表される10課題の中から1題が出題される
両試験とも、技能試験を受験するにはまず学科試験に合格することが条件です。
技能試験では実務に即した作業が求められ、事前に公表される候補問題に基づいて試験対策をおこなうことが可能です。
電気工事士の合格率
過去3年間の第一種、第二種の資格試験の合格率はそれぞれ下記の通りとなっています。
第一種電気工事士 | 筆記試験 | 技能試験 |
令和3年度 | 53.53% | 67.03% |
令和4年度 | 58.22% | 62.73% |
令和5年度 | 61.63% | 60.57% |
第二種電気工事士 | 筆記試験 | 技能試験 |
令和3年度 | 59.17% | 72.83% |
令和4年度 | 55.95% | 72.59% |
令和5年度 | 59.43% | 71.06% |
第一種、第二種ともに筆記試験よりも技能試験の方が合格率が高い傾向にあります。
こちらは試験前に候補問題が提供されることが大きな理由の1つです。事前に試験準備をしっかり行いやすいことから合格率が高くなっています。
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2024年度(令和6年度)の電気工事士の試験スケジュール
第二種電気工事士の試験は年に2回実施され、これまで年1回だった第一種電気工事士の試験も、2024年度からは年2回に増え、全国47都道府県で実施されます。
なお、2024年度の試験は、以下のスケジュールで行われます。技能試験の日程は都道府県によって異なるため、注意が必要です。
第二種電気工事士 試験スケジュール
上期試験
- 受験申込期間:2024年3月18日(月)〜4月8日(月)
- 学科試験日:
- CBT方式:2024年4月22日(月)~5月9日(木)
- 筆記方式:2024年5月26日(日)
- 技能試験日:2024年7月20日(土)または21日(日)
- 合格発表日:
- 学科試験:2024年6月中旬頃
- 技能試験:2024年8月下旬頃
下期試験
- 受験申込期間:2024年8月19日(月)〜9月5日(木)
- 学科試験日:
- CBT方式:2024年9月20日(金)~10月7日(月)
- 筆記方式:2024年10月27日(日)
- 技能試験日:2024年12月14日(土)または15日(日)
- 合格発表日:
- 学科試験:2024年11月中旬頃
- 技能試験:2025年1月下旬頃
第一種電気工事士 試験スケジュール
上期試験
- 受験申込期間:2024年2月9日(金)~2月29日(木)
- 学科試験日:
- CBT方式:2024年4月1日(月)~5月9日(木)
- 技能試験日:2024年7月6日(土)
- 合格発表日:
- 学科試験:2024年5月下旬頃
- 技能試験:試験後1ヶ月以内
下期試験
- 受験申込期間:2024年7月29日(月)~8月15日(木)
- 学科試験日:
- CBT方式:2024年9月2日(月)~9月19日(木)
- 筆記方式:2024年10月6日(日)
- 技能試験日:2024年11月24日(日)
- 合格発表日:
- 学科試験:2024年10月中旬~下旬頃
- 技能試験:2025年1月上旬頃
※コロナウイルス等の影響による変更の可能性があるため、必ず試験団体の公式ホームページを確認してください。
その他の電気工事士に関する資格
電気工事士に関する資格を取ることでキャリアUP、年収UPにつながります。
役に立つ資格を2つ紹介しましょう。
電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士とは、電気工事現場の作業管理や施工したものの品質確認、作業員の安全管理など現場監督業務を行なっています。
1級・2級と2つに分類され、業務内容の範囲が異なってきます。
電気工事士の資格と、この資格を併せ持つことで独立した際、多岐にわたる業務を展開しやすいです。
第三種電気主任技術者
電験三種とも呼ばれる資格のことです。この資格を持つことで、電気に関する知識や技術を兼ねそろえていることを証明しています。
工場などさまざまな現場において、電気が安全に正常に使えるように、保安や監督業務などをおこなう際に必要な資格となります。この資格は、電気業界でもメジャーで資格手当や年収UPにつながるため、取っておいて損のないものです。
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電気工事士についてのまとめ
電気工事士の資格は、電気設備の設置やメンテナンスをおこなうために必須の国家資格です。
第二種電気工事士は住宅や小規模施設の工事を担当し、第一種電気工事士はさらに大規模なビルや工場の電気工事も手がけます。
取得には試験が必要ですが、受験資格がないため誰でも挑戦できる点が魅力です。将来性のあるこの資格に興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。
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